第11話 神成
私達ライト正教会の使者は主に招かれて神殿へと辿り着いていた。
「ここが…確かに主の好きそうな場所ですな」
「魔物にもあまり出会わなかった、これも主のご加護でしょう…」
「………」
「どうしたんだい、ティファ?」
「今までとは違う…ファトゥール様じゃない《《何か》》がいる…」
他三人と違って私は獣人だ。自分で言うのも難だけど、感覚だけなら皆を凌駕している…だからこそ、この内に巣食う何かが恐ろしい…
「正直、何か厄災が来る前の嫌な感じがするの」
「…何であっても、試練として乗り越えるまでさ」
暗い神殿を進む…太陽の光が一切無い室内は夜の様な暗闇だ。魔石による僅かな光源だけがうっすらと輪郭を映している。
「…確かに、ティファの言う通りですね」
「封印が解かれている…」
「え?」
「…恐らくここでは禁書や呪物を管理していたんだろうが、根こそぎ消えている」
「…!」
「主を疑う訳ではないけれど、備えておくんだよ」
灯りに導かれて薄暗い神殿を進み続けていると、一つの部屋へ辿り着く。その時…
ガチャリ…
入って来いと、言わんばかりに扉が開いた。
「…!」
驚きつつも、行かない選択肢は無い。全員覚悟して中へ進む。
「……スー……スー…」
その時、薄暗い部屋から聞こえたのは微かな吐息だった。
(…一体何がいるの…!?)
その時、カラン…と何かの音がする。地面に何かが転がっていたのだ。
(…え!?)
音が消えると同時に気付く、一定間隔だった呼吸音が静まる。
「…あぁ、もう来ていたのか」
若い男の声だった。それ即ち我々の主ならぬ何者かであるという事だ。
「ようこそ、ライト正教会の使者達…私の名は明彗煌矢。女神ファトゥールの新たな眷属にして、儀礼の禊を執り行う代理人である」
声の主は魔術で部屋に灯りをつける…
「うぅむ…やはり眩しいな…」
未だ暗い室内にその姿が映る。痩せ細った長身に黒い髪、殆ど閉じられた瞼の底から真っ黒な瞳が覗いている。肩肘を付く気怠げなその姿はまるで田舎の地主の息子だ。
しかし、四人は感じ取った。その肉体の内から滲み出る怨嗟と呪念、そしてそれらを喰らい貪る黒い魔力に。
「…まぁ、立ち話も疲れるだろう。座るといいよ」
「…失礼致します」
彼女達は内心では新たなる神に恐れ慄いていた。一方、煌矢はというと…
内心面倒だと考えていた。
(神様らしく威厳を出せと言われたが、いきなり出てきた無名の奴が偉ぶるってのは俺としてもあまり良く思えないけど…)
老婆を除く三人は明らかに緊張が見て取れる。
(そういや、他の女神さん達もこんな目線向けてきたな…別に強面でもないだろう…俺は。)
「さてと…それじゃ早速、禊を始めるとするかな」
そう言って手を伸ばし、彼らに付いた悪性の魔力、穢れ等を根こそぎ取り祓う。
「…!?」
「その様子からして、禊が済んだのは理解してもらえたかな?」
「左様でございます…無礼を承知でお聞き致します」
「ん?気になる事があるなら、遠慮なく聞いてくれ」
「この地で起きた魔力暴走…それは貴方様の御力ですね?」
「…!」
その時、他三人の顔が青ざめた…
「…面目ない限りだが、その通りだ。言い訳になるだろうが、私は魔術無き文明から産まれ落ちた存在だ。この世界に来て、最初の魔術があれなのだ。」
「…!」
「やはり知れ渡っていたか…人々に恐れを与えてしまった事を詫びさせてくれ」
頭を抱え、頭を下げる煌矢に皆が驚く。
「と、とんでもない…!」
「…ただ、私は人々に敵意は無い。それだけは伝えたかったんだよ…」
「…然と承りました。」
続




