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村長宅にて(2)

 「さて昼の件だが、案を考えてきたぞ。おっ、これも固くて弾力がある麺に、これは醤油ベースの出汁か? 昼のとは違う出汁だが、これもこれでいいな」


 「どんな案なんだい? アタシは昼のほうが出汁が利いてて好きだねぇ」


 召喚したぶっかけうどん(冷)を食べながらの作戦会議。昼のようにレンドさんがテーブルの向かい側で、マーサさんが右隣で、スーちゃんが机の上でうどんを食べている。ふむ、マーサさんは出汁が利いた方が好きなのか。ならば出汁の利いたあのお店のぶっかけうどんなら気に入ってくれるかな。今度試してみよう。


 「嬢ちゃん次第だから、嬢ちゃんは話を聞いておいてくれよ?」


 「う、うん」


 意識が別の方向に向いていたのを見抜かれたらしい。その洞察力はすごいなーって思うけど、初対面が最悪だから尊敬はできない。


 「まったく…… 俺の案はだな、嬢ちゃんとまったく違う人…… そうだな、長身の男性だな。そいつが森で拾った嬢ちゃんにうどんのイロハを教え込み、この村に来たと。そしてうどんを気に入った俺らに対し、弟子の嬢ちゃんを置いて南の森に去って行ったというやつだ。これなら嬢ちゃんがここにいる理由にもなるし、嬢ちゃんが転移者ってのがバレないだろ?」


 長身の男性だと前世の俺に似た感じになるから妹は食いつきそうだな。妹には悪いけれど、幻に食いついてもらうか。そして妹を探す場合はその人を探している人から逆に割り出せば良いし。


 「でも唯一の弟子だと疑われかねないし、村の人たちは誰も実際の男を見ていないけれど大丈夫?」


 「そこで嬢ちゃんに相談なんだが、うどんをこの村の名物にさせてもらえないか?」


 「そりゃかまわないけど、なんで?」


 うーん、いきなりの飛躍に話が見えない。


 「名物にすることで、お嬢ちゃんじゃなくてこの村に目が向く。そして師匠役の人が他の村人へ教えることで、たくさんの弟子がいることになる。まぁ先に師匠役のヤツに嬢ちゃんが教えてあげなきゃいけないけど、あいつなら物覚え良いし大丈夫だろ」


 「たしかに弟子が多ければ紛れ込めますけど、肝心の師匠役の人はどうするんです?」


 「ああ、それなんだがタイミング良く俺の隠密が帰ってきてるんだよ。そいつに師匠役をお願いしようと思っている。村の人の前に姿を見せたことは無いからだませるだろう」


 うん、当てがあるならいいか。でも問題はそれだけじゃない。肝心のうどんが作れるかどうかということだ。


 転移前は、小学校や中学校の遠足でうどん作り体験をしたことがあるし、家で作ったことも何度かはある。でも買ってきた方が楽だし美味しいからと、そこまでやってはいない。


 それに原料の問題もある。元の世界ではうどんに使われる小麦の大半が外国産だったけれど、あれだってさぬきうどん用に改良されたすばらしい小麦だったりするし、店によっては独自ブレンドの小麦を使っているところもある。そもそも麺に使われるのは中力粉な訳で、つまりそこらへんの小麦…… たとえばパン用の強力粉や天ぷらなどの薄力粉ではダメなのだ。……この世界にある小麦がどんなものかはわからないけれど。


 「そもそもなんですけど、うどんの召喚は出来ますけど、手順とかあやふやですし作るのは難しいかなと思うんです。それに原料は小麦粉なんですけど、質が大事になってきますから簡単にはできないかと……」


 それを聞いたレンドさんは、何言ってんだ? といった感じでこちらを見つめてきた。


 「俺の知り合いの転移者も、最初は全くわからなかったけどいざ作り出したら頭の中に情報が流れてきてそれなりのものが作れたって話だったぞ。こっちの世界に来てから作れるようになったんです、なんて言って笑ってたし。それに原料が小麦粉ならこの村にもたくさんあるし、質は改良箱でなんとかなるだろ?」


 なんなんですかその知り合いって。というかその情報は確かなの? そして改良箱って何!?


 新しい情報に少しパニックになっていると、


 「アンタ、ユウがパニックになっているじゃないか」


 「おお、すまない。王都でラーメンを広めたヤツが転移者で俺の知り合いなんだ。ギルド王都本部の受付時代に出会ったんだが、冒険者証発行から店を出すまでいろいろ手伝ってやったんだよ。それでいろいろ教えてもらってな。今でも時々手紙をやりとりしてる仲だ。嘘つく奴じゃ無いからあいつの情報は確かだと思うぞ?」


 レンドさんは一拍置き、話を続ける。


 「そうそう、そいつが最近通り魔に刺されたとかいうから心配して返信したら、食の転移者は刺されてもすぐ直るとかいう文が返ってきたんだ。どうも本気っぽいし気になってたところに嬢ちゃんが来たもんで、そんて嬢ちゃんも食の転移者だと言うからついつい刺しちまったんだ。お昼はすまんかったな」


 とレンドさんは笑いながら謝罪の言葉を口にする。


 笑い事じゃ無いよ! こわかったんだからね! そしてお昼に刺されたのはその文のせいか! 信じているからと言って、そしていくら気になるからって赤の他人を刺すとかやめてください!


 むすーっとしていると、レンドさんはまぁまぁとなだめてきた。いやいや、おまえのせいだから!


 マーサさんが苦笑いしながら、この人こんな人だから許してあげて、というので仕方なく許すことにする。


 「まあそんなわけでいろいろ知っているんだが、改良箱ってのがあってな。引き出しに取れた素材を入れておくと、5分もしないうちに料理に適切な素材に変化するらしいぞ。どうやって改良箱を手に入れるのかまでは教えてもらってないけどな」


 箱、ねぇ。そういえば謎の箱がリュックサックに入ってたっけ。あれのことかなぁ。


 ちょっと待ってて、と最初に来たときに置いたままのリュックサックへと駆け寄り木箱を取り出し、それを持ってテーブルへ戻ってきて、レンドさんに見せる。


 「おお、確かこんなのだったな」


 と木箱のふたを外し中をのぞき込んでいるレンドさん。ボクものぞき込んでみたけれど、中身は空っぽで、ただの木箱にしか見えない。しいていえば、内側の側面に不可思議な模様が入っているかな。


 怪訝な顔をしていたのか、これは魔道具だからこの模様が大事なんだよ、とレンドさんが教えてくれた。


 「知り合いのヤツのは、適当な小麦を一袋と魔石を1個突っ込んでふたして5分くらい放置してたっけな。魔石のエネルギーでどんな小麦でも強力粉? とかいうのに変化するらしい。そのままでも出来るけど、この魔道具に入れた方がより美味しい粉になるんだと。俺は料理人じゃ無いからわからないけどな」


 「やってみるかい? 必要なら魔石も小麦粉も家にあるよ」


 お願いします、と頷くと、マーサさんは立ち上がり部屋を出て、数分後、30kgくらいは入りそうな大きな紙袋……中身は半分くらい入っているように見える……を抱えて戻ってきた。


 「パン用の小麦粉さ。それと、ほれ、これが魔石さ」


 マーサさんは紙袋をどさっとテーブルの上に放り出し、ポケットから楕円形の赤く透明感のある石を取り出しボクの上に置く。


 「ありがとうございます。えっと、これで小麦と魔石を入れれば良いんですか?」


 紙袋を持ち上げようとしたけれど、持ち上がらなかった。前世なら楽勝だったのに、この体ではさすがに無理か。


 ちらっとレンドさんの方を見ると、ほほえましそうに見られていた。恥ずかしい!


 やってあげるよ、というマーサさんの言葉におとなしく頷く。マーサさんもほほえましそうな目で見てくる。むう、どうせこんな大きなものは持てない少女ですよ―だ!


 むすっとしているボクを横目にマーサさんは木箱を引き寄せ、手際よく小麦粉を木箱に入れてくれる。


 「うーん、かによ感じだと3kgってところかね。あとは任すよ」


 すっと木箱が目の前に。魔石を放り込んでふたをした。すると、箱が淡く光り出した。


 「……なにこれ大丈夫なの?」


 「それが魔道具が動いている証だな。光が止まれば終了だ」


 解説してくれたレンドさんに一応お礼を言って、箱を眺める。淡くて幻想的な光。見ていて飽きないな~


 そうやって眺めていると、段々と光が弱くなってきた。そして元の木箱状態に。


 開けてみるとそこには魔石は無く、ただ小麦粉があるだけ。レンドさんの言葉が正しいなら、これでうどん用の小麦粉になっているはずだ。


 さてあとは作るだけ! なんだけど……


 「マーサさん、塩ありますか? あと麺棒とかあれば貸して欲しいんですけど」


 「塩はたくさんあるよ。麺棒ってなんだい?」


 「えっと、丸くて長くて、伸ばすために使う棒なんですけど……」


 「うーん、そんなのはないねぇ。とりあえず塩持ってくるとするさ」


 そう言って部屋を出るマーサさん。


 「お、そうだ。今から作るのなら師匠役を呼んでくるよ」


 レンドさんも部屋を出て、今この部屋にいるのはボクとスーちゃんだけ。まあスーちゃんはずっと肩の上でじっとしてたし、今でもじっと載っているだけだけど。


 そういやタブレットで麺棒購入できたっけ、と他の人がいないうちに購入することにする。レンドさんやマーサさんなら大丈夫だとは思うけれど、見られないに越したことは無いだろうし。


 部屋をぐるりと見渡し、窓のカーテンがきちんと閉まっていることを確認してタブレットを召喚。購入ページを見ると、麺棒が10本買えるくらいにポイントがたまっていた。今後他の人にも教えるときにも使えるよう、4本購入しておく。そして目の前に現れた4本の麺棒のうち、1本はそのまま机の上に、残りの3本は、どこから持ってきたのか怪しまれないようリュックサックに放り込んでおくことにする。


 リュックサックに放り込み、椅子に座り直したちょうどいいタイミングでマーサさんは戻ってきた。

続きは今週中に書ければ良いなぁと。※遅くなりましたが、8月中に再開予定

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