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散策(2)

 歩き始めて一時間ほど。木の枝に黒く光るキノコが生えているのを見つけた。なんというかキクラゲっぽいキノコ。今まではキノコなんて見かけなかった気がする。


 珍しいなーと採取。スーちゃんに食べる? って聞いてみたところ、ちょこんと体をかしげる仕草。ふむ、スーちゃんは食べないのか。まぁ意気揚々と食べたとしても、人間が食べられるのかわからないけれどね。


 毒キノコは目立つ色が多いって聞くし、たぶん食べられるんじゃ無いかなぁ。念のために人里に着いたときに聞いてみれば良いかな。それに、直感だけれど取っておいた方が良い気がするんだよね、このキノコ。今回は直感を信じたところで損はしないし、とりあえず取っておこう!


 今後のことも考えて、半分ほどにしておく。とはいえ両手には収まりきらない程度の量。


 神域を開けて台所に持ち込む。現代の家をモチーフにしたのなら、冷蔵庫くらいあるはずだ、と。


 狙い通り冷蔵庫があったので、野菜室に突っ込む。神域の時間経過がどうかは知らないけれど、冷蔵庫に入れておけばたぶん大丈夫でしょ。


 冷蔵庫にしまって散策再開。今度はキノコにも注意して探して見るも、先ほどのがよほどレアだったのか、見つけることが出来ない。


 そうこうしながら歩くこと数時間。そろそろ太陽が落ちてきたので休憩にする。結局、あのキノコ以外に変わったものは見つけられなかったよ……


 いつものように机と椅子を出し、晩ご飯の用意。


 どんぶり2つを用意し、持ち帰り麺を分けて、醤油を掛けて、と。


 そうだ。神様にお願いするときに出した条件のおでん、せっかくだから今晩のおかずに出してみよう。


 まずは定番から。


 「サモン、おでんの大根、こんにゃく、すじ肉、卵に豆腐! お皿に載せて!」


 そして現れるそれらのおでん! うーん、おでんの良い香りが食欲をそそる!


 早速とばかりに大根にかじりつく。歯を使わなくてもかみ切れそうなくらいよく煮込まれててたまらない!

 お次はたまご。きっちり茹でられた黄身まで出汁がしみこんでいて、しっとり美味しい!

 こんにゃくはぷりぷりだし、すじ肉も出汁がきいてて最高! 豆腐もたまらない!


 と、ついついおでんを一人で食べきってしまった。最初はスーちゃんと分けるつもりだったのに、気づいたら皿の上には何も無い。


 やっちゃった、とスーちゃんを見ると、表情があるわけでもないのに、なんだかあきれたような感じが伝わってくる。


 あわてて追加で召喚し、今度はスーちゃんと半分分けして食べる。


 昔だったらおでんなんてうどんの前哨戦! といった感じで食べていたのだが、今の体では先ほどのおでんだけでいっぱいいっぱい。うどんが余ってしまった……


 スーちゃんいる? と聞くも、自分の分は食べたスーちゃんはふるふると震える。


 どうするかなぁ。捨てるのはもったいないし…… そうだ!


 名案とばかりに祭壇を取り出し、放置されていたうどんを置く。そして別皿には先ほどのおでん五品を2つずつ載せ、さらにからし味噌の入った小皿を召喚して添えておく。ボクは味噌は付けない派だったけれど、お供えするなら定番のからし味噌も必要だよね。


 うどん召喚してまだ10分も経っていないし、できたてのお持ち帰りならまだまだ美味しいはず! 前世では家に持って帰るまでに10分とか経っていたし、某うどん屋は鮮度重視で30分で廃棄って言っていたから、10分ならまだまだいける! おでんもたくさん載せておいたから、そちらに夢中になっている間に少し伸びたのだ、と思ってくれるはず……! ってそんなこと思ってたら筒抜けだよボクのバカ! 今一瞬悪寒が走ったよ!


 ごまかすように大慌てで、どうぞお納めください! と念じる。よかった、ちゃんとうどんも受け取ってくれた……!


 ふう、と一息。でも今気づいたけど、別に神様に押しつけ…… げふんげふん、捧げなくても、炒めるなり煮込むなりすればよかったなって。時間が経ったうどんを無料持ち帰り用に置いておいてくれる店とかもあるし、そういう店では焼きうどんなどにどうぞって書いてあるし。


 まぁ焼きうどんにするにも、手持ちの食材は神域の冷蔵庫にある謎のキノコくらいだし、納めて正解だったと思うよ、うん! そうに違いない!


 そんなことを考えつつも祭壇をお片付け。


 あとはお風呂に入って寝るくらいだけれど、神域にいられるのは1日8時間だとすると、今の時間はちょっと早すぎるかな。そう考え、木に登って周りを見渡すことにする。


 太い木を選び、するするとてっぺんへ。なんというか、昨日見た景色と変わってないね…… 

 

 とはいえ、暗い森の中を歩くのも危険なので、木の上で星空を眺めつつ休憩。元の世界と違うのかなぁなんて思いつつ眺めるも、元々星に興味が無かったから星座とか覚えてないし、違っているのかどうかすらわからない。


 そうやってぽけーと星空を眺めていると、だんだん眠くなってきた。


 このままでは昨日みたいに寝落ちをしてしまう! と、急いで木から下り、神域を呼び出す。昨日みたいに空中にドアを召喚してお漏らしなんて、もうしないよ!


 まずは台所に飛び込む。1日が24時間なら8時間しかいられないし、その感覚になれておくのが良いだろうとタイマーを8時間にセット。よく考えたら1日何時間なのかは知らないけれど、時間感覚は変わらないってタブレットの説明にはあったし、違ったら違ったときに考えればいいや。


 そして脱衣所に直行し、ぱぱっと服を脱ぎ捨て、お風呂に突入! 温かいお湯にとろけそうになるも、今日は時間制限があるから、ぱぱっと洗って出る。そしてスーちゃんに水気を拭き取ってもらい、パンツを穿き、ブラは良いかとスルー。寝間着代わりに同じワンピースを着込み、寝間着くらいは別の服が欲しいなーと思いつつリビングへ。そこにはキングサイズのベッドが鎮座していた。


 なんでこんなに大きなベッドなんだ? と頭をひねったけれど、しばらくして一つのことに思い当たる。


 (混浴できるような広い風呂を願ったんだっけ。それで気を利かせて大きなベッドなんだろうなぁ。女の子になっちゃったから混浴なんてするつもりは無いけれど!)


 でも大きなベッドは1人でも楽しいもの。ぼふっと布団に飛び込み、ふかふかなお布団を楽しむ。


 (あー、気持ちいいなぁ……)

次は7/5の21時過ぎ予定

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