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ピンチ

 突然現れたイノシシっぽい生き物に対し、


 「あ、えっと…… ご機嫌いかがですか?」


 と聞いてみる。ほら、もしかしたら話が通じる生き物かもしれないし!


 返事はグウォーン!という唸り声。そして曲刀のように反り返っている角をこちらに向けての突進。


 ひぇっ! と横に飛んで避ける。ズドーンと背後にあった木に衝突する音。


 そちらを振り向くと、木は斧でも打ち付けられたかのように倒れていき…… あんな勢いの攻撃食らってたら無事じゃすまなかったよ…… イノシシっぽい生き物……っていうのも面倒だからイノシシでいいや。そのイノシシがこちらを向き直す。黒い好戦的な目がこちらをじっと見つめている。角が振りかぶった刀のように見えて恐い。


 足ががくがく震えて、あ、だめだ、生暖かいものが足を伝って……


 パンツがぐちゃぐちゃで気持ち悪いけれど、今はそんなことを考えている場合じゃない! 逃げなきゃ! と背を向けて走り出す。





 追いかけてくる巨体。こちらは左右にフェイント入れつつ逃げているというのに、向こうはそれをものともせず着いてくる。向こうの足取りは先ほどの突進のように勢いあるものでは無く、ゆっくりとした足取り。これは完全に遊ばれている……!


 逃げ初めて20分はたっただろうか。全速力で走り回っているとさすがに疲れてきた。しかし相手はまだ余裕の様子。というか未だ本気を出していない。


 「……ッ!」


 疲れに足が着いていけなかったのか、木の根っこか何かに引っかかってしまいこけてしまった。慌てて振り向くも、相手はゆっくりと近づいてくる。


 立ち上がろうにも腰が言うことを聞いてくれず、少しでも距離を取ろうと後ずさる。と、背中に堅い感触。木にぶつかったらしい。


 これでもう逃げられない、と確信したのか、相手は頭を下げ、角をこちらに向けて突進してくる。先ほどとは打って変わって本気のスピードだ。


 あぁ、ここで人生が終わってしまうのか、棚ぼた的な2度目の人生だったな…… なんて重いながら走馬燈が流れていく。まさかの女の子への変身、初めてのお漏らし、スーちゃんとの出会い、初めての召喚、2度目のお漏らし、そしてこの状況…… ってお漏らしばっかりじゃん!


 もっとマシな人生を送りたかったよ…… 先逝く不幸を許しておくれ…… と肩にしがみついているスーちゃんを撫でつつ最後の時を待つ。





 ドスンとお腹に鈍い衝撃。そして痛み。あぁ、これだけの勢いでぶつかってきたら、さぞかし血で大変なことになっているだろう……。


 血まみれな姿は見たくないし、最後くらいは安らかに逝きたい…… そう思って目を瞑って祈る。


 だんだんと痛みが遠のき、音が聞こえなくなって、意識も遠くなって死んでしまうんだ…… 





 そう思ってそのときを待っていたが、待てど暮らせど意識は遠のかない。それどころかじんじんと痛みが伝わってくる。


 これはどうしたことか、と目を開けてみる。そこに見えたのは、少し離れたところで口をぱっくりと空け、呆然とたたずんでいるイノシシ。


 怪我の具合は!? と刺されたお腹を見ると、そこには貫かれたときに破れたのであろう大穴の空いた真っ白なワンピースと、何事も無かったかのようにつるつるなお腹。あれ、傷はどこ!? 血は!?


 相手も戸惑っているようだったが、ボクが戸惑っているのを見て決心したのか、再度突進してきた。


 ひゃわっ!と声が出て目を反射的に閉じてしまったけれど、気持ちを持ち直し、今度はすぐに目を開けて観察する。


 確かに相手の角がお腹に食い込んでいる。そして、角が刺さった部分からは赤い肉が見える。


 それを見て気が遠くなりそうになるが、さっきは何事も無かったし、これからどうにかなるはずだ! と、がんばって持ちこたえる。


 イノシシはそのまま後ろに引き下がり…… 角をそのまま引き下げるものだから、内側から引き裂かれたように……!


 それを見て気を失いかける。そこにスーちゃんが、気を失っちゃダメ! って感じで頬をぺしぺししてくれる。はっ、そうだ。何があったか確認するんだった! ありがとう、スーちゃんのおかげで気を失うのは一瞬ですんだよ!


 その一瞬のうちに、相手は5mは離れたところまでバックしていた。やはり驚愕の顔。


 お腹を見ると、切り裂かれた部分が逆再生みたいに…… これはこれで気持ち悪いですね…… 傷がふさがり、何事も無かったかのようなつるつるお肌になっていた。


 それを信じられない、といった感じで見つめていたイノシシは、こちらがじっと見つめていることを感じたのだろうか、はっとした感じでぴくっと体を震わせると、くるりと体を反転し、ものすごい勢いで遠ざかっていった。さっき突進したときよりも早いとか、さっきの突進ですら遊びだったのだろうか……





 とにもかくにも脅威は去った。残されたのは、穴の空いたワンピースを着て心臓をばくばくさせている、お漏らししたままの少女とスライムだけ。


 スーちゃんは、いつものこと、といった感じでスカートの中に入り込み、掃除をしてくれる。ほんとにいつもすまないね……


 ばくばくしている心臓が落ち着くまでスーちゃんに世話されつつ、木にもたれ掛かって休むのだった。

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