武闘大会で勝利をもぎとりますわ!
「ローゼリア・アレクシュタイン。君を次月行われる武闘大会の選手として選出したいと思うが、いかがかね」
教室でアイレリアとラスティをいかに邂逅させられるかを考えていると、教師に声をかけられる。
「わ、私がですか」
「そうだ。入学早々で申し訳ないが、一学年の代表として出場してほしい」
ローゼリアは戸惑う。自分が学年の代表などと……
しかしそんなローゼリアとは裏腹に、周囲からは
「きゃー!流石ローゼリア様ですわ」
と、黄色い声が飛ぶ。
「ま、まぁ、皆さまがそうおっしゃるのであれば、出場するのもやぶさかではありませんわ」
ローゼリアは満更でもない様子だった。
「すごいですわローゼリア様。入学したばかりなのに、あの武闘大会に出場されるなんて」
アイレリアも黄色い歓声の女子に混ざり、声を上げる。
「あくまで一学年代表として、ですわ。流石の私でも、上級生相手では歯が立ちませんことよ」
「いえ、ローゼリア様ならきっと勝利をもぎとれます!そして、勝者はご褒美が……!」
「ご褒美?」
「ええ、武闘大会の勝者は、王家の方にお願いを一つ聞いてもらえるんです。ローゼリア様はもう王家のようなものではありますが、それでもときめきますわ……!」
「王家の方に!?お願い事を……!?」
その時、ローゼリアの頭の中には一つの希望が見えた。
ラスティ様にお願いして、アイレリアとの理想の邂逅を演出出来たら……!
「ふふ、ふふふ、ふふふふふ」
ローゼリアは舌なめずりをすると、明日からのレッスンを10倍に増やすことを即座に決定した。
月が登る深夜帯、ローゼリアは輝く切先を描くように優雅に振るっていた。
(どんなシチュエーションがよろしいかしら、やはり王道は王子が落ち込んでいるところにヒロインが声をかけるパターン……)
動きの華麗さと相反する邪悪な表情を見て、呆れ顔のエンデが入口から声をかける。
「お嬢様、こんな夜遅くまで稽古なさっておられるとは、これも理想の悪役令嬢とやらを目指すために必要なことなのですか」
「いいことを聞いてくれましたエンデ。私は次月の武闘大会に出場いたします。そして、ラスティ様に願いを叶えていただくのですよ」
剣を振るう手を止めず、ローゼリアは答える。
「ラスティ様に……?」
「ええ、普段あまりお願いなどは聞いていただけるような雰囲気ではありませんから、これを機に関係を深めていただけたら……っと」
(ヒロインとね……!)
ローゼリアが手を止めると、エンデは神妙な面持ちで見つめる。
「ローゼリア様、武闘大会への出場はお控えください」
「えっ、何故」
「歴代の武闘大会の勝者は男性しかおりません。仮にも第一王子の婚約者様ともあろうお方が武闘大会など、はしたないではありませんか」
「そうかしら、戦う令嬢。麗しくてよろしいかと思いますわ」
「教師には、私が別の方を推薦しておきます。ローゼリア様は早くご就寝ください」
エンデは珍しく感情的にローゼリアから剣を奪い、鋭い眼光を向けた。
「いいえ、私は必ず武闘大会へ出場いたします。たとえ、あなたが反対しても」
固い決意に、エンデは奪った剣の切先をローゼリアに向けた。
「ならば、今、ここで雌雄を決しますか」
エンデの長い前髪から青い瞳が覗くと、ローゼリアは息をのんだ。
ああ、私は昔から……
「わ、わかりましたわ。今日のところはお休みいたしましょう。でも、私は出場は取り消しませんことよ」
両手を上げて降伏すると、エンデは深いため息をつき、剣を下した。
「ローゼリア様は本当に頑固でいらっしゃる。どうせ私が強行しても、その障害さえも壊して進みそうだ」
「あら、よくご存じで。今日のお稽古を打ち切りにしただけありがたいと思って」
「はいはい、ありがとうございます」
エンデはしゃがみ込み、頭を掻く。深いため息は止まなかった。
ローゼリアは共にしゃがみ込むと、エンデの長い前髪を上げる。
「私、あなたのその綺麗な青い瞳に見つめられると弱いの。昔からね」
ローゼリアは可憐な笑みを浮かべると、エンデは恥ずかしそうに目を伏せた。
「……王子という立場がそんなにいいなら、俺だって」
「何ですの?」
「あっ、いえ、何でもございません」
エンデはすぐさま立ち上がり、ローゼリアの手を引き、強引に部屋へ連れて行った。




