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王子様がなりふり構わず攻めてきますわー!?

「ローゼリア、おはよう。今日も君は美しいな」

「……あの、ラスティ様、これは何ですの……」


 どうやってラスティをデートに誘うか悩んで数日たったある日、学園へ登校すると、そこには直径1メートルほどにもなるバラの花束を持ったラスティがいた。


「ローゼリアとの思い出の数だけ薔薇を摘んでいたら、これほどまでに大きな花束になってしまった」

「あ、あの……ラスティ様?私との思い出……って?」

「たくさんあるだろう。初めて舞踏会で挨拶された時のこと、宮殿の園庭で僕の妹とお茶会をしていた時のこと。エンディミオンと町で買い物をしていた時のこと、武闘大会で戦っていた時のこと……」


 (全部ラスティ様との思い出ではなく、ただのストーカーですわーーー!!!??)


「あ、あの、ラスティ様、それは思い出ではなく、私の観察の記録では……」

「私が君を見ていた記憶だ。思い出だ」

「……思い出、ですか」


 (どうしましょう、完全にラスティ様の中のサイディリアの血を目覚めさせてしまったかもしれませんわ……)


「ラスティ様、学園でこのような奇怪な行動は慎んでくださいませ」

「……!エンディミオン、何をする」

「しーっ……全く、学園では一応表向き、執事と王子という立場をとるといったではありませんか、ラスティ様」


 エンデはラスティ様が抱える薔薇の花束を受け取ると、そばに控えていた使用人に無表情で手渡す。

 ラスティはローゼリアに話しかけようとするが、エンデはそんなラスティの手を取ると、引きずるようにして教室へ連れて行った。


 (……?あら、私にはラスティ様と仲良くなって欲しいのでは……?)


「……ねぇ聞いた、ラスティ様がローゼリア様に猛アタックしているという話」

「そういえば武闘大会後からやたらと教室に来たりしていましたわね」

「婚約者なのですから当たり前では?」

「いえ、問題はその前です。お二人は逢瀬もなく、冷たい関係と噂されていたのですよ」

「エンデ様がローゼリア様を思っているというのは周知の事実でしたが、エンデさまがサイディリア王国の王子と判明した現在、ローゼリア様とラスティ様の婚約も危ういのでは……?」


 各所でなされる自身の噂話にため息をつきながら、窓の外を眺める。


 (そういえば、エンデとラスティ様は学園を二分するほど女生徒人気が高かったですわね。そんな二人を天秤にかけているのですから、いくら公爵家といえども、恨みは買いそうですわね……)


 しかし、以前のように休憩時間にラスティが会いに来ることはなく、ローゼリアは少し拍子抜けしてしまった。


「……静かすぎますわ」


 机に座り、独り言を呟く。

 

 (せめて、ラスティ様かエンデが来てくださればよろしいのに……)


 そんなことを思う自分に嫌気がさす。

 二人の真剣な思いを天秤にかけ、一方で自分の理想の悪役令嬢を追い求めたいなどと……


 (傲慢が過ぎますわ私!っていうか、お二人ともこんな私のどこがお好きなのかしら!?)


 ラスティは一目ぼれのようなことを言っていた。

 エンデは蔑まれていた自分の容姿を肯定されて好きになったと言っていた。


 (じゃ、私はお二人のどこが好きなのかしら……)


「ローゼリア!」


 ラスティの声がして周りを見渡すが、教室の入り口にラスティはいない。


「ここだ!ローゼリア」


 何だか声が震えている。

 ローゼリアは立ち上がり、窓際に足を運んだ。


「や、やっと気づいてくれた……」


 何故かラスティが窓の外に立っている。ここは二階だ。


「ラララ、ラスティ様!?」

「しーっ、静かに。私がこんなところにいるとバレたら騒ぎになってしまうだろう」

「何でそんなところにいらっしゃるのですか」

「普通に教室の入り口から会いに行ったら騒ぎになるだろう。それにエンディミオンにバレてしまう。だから、三階からロープを伝ってこっそり降りたんだ」


 窓の下を見下ろす。ラスティの足が震えている。


 (そういえば、ラスティ様は運動音痴なんでしたっけ……)


「ラ、ラスティ様、とりあえず教室の中に」


 ローゼリアはラスティの手を取ろうとするが、ラスティは拒否した。


「私と共に来い、ローゼリア」


 ラスティは姿勢を正し、ローゼリアに手を伸ばす。


「え?どこへ?」

「わからない」

「は?」

「どこかわからないが、恋人たちは授業を抜け出しどこかへ遊びに行くと、リシリュー宰相の新作で書いてあった」


 (ラスティ様、その恋愛指南書は間違ってますわー!?)


 戸惑うが、周りがラスティに気付き、噂が広がるまでにどうにかしなければならない。


 (仕方ありませんわ……)


 ローゼリアは窓に足をかけ、窓の外の淵に降りる。

 そしてラスティを抱き上げ、華麗に一階へと降りた。


「ローゼリア!?」

「あそこでは目立ちます。とりあえず目立たない場所までお運びいたしますわ」


 未だ足の震えるラスティを抱え、ローゼリアは軽やかに木陰を移動し、建物から離れる。

  

 (私としてはただの移動なのですが、ラスティ様にとっては、こんなのもときめきイベントになってしまうのでしょうね……)


 体格の割に軽いラスティにため息をつき、中庭まで着くとラスティの体を下した。

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