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ん?え?私のことが???好き?何ですの?

 ラスティに手を引かれ、王宮の中庭へ出る。

 噴水までたどり着くと、ローゼリアは口を開いた。


「ラスティ様!?どこへ連れていくおつもりですか、このままでは城を出てしまいます」

「……!確かに」


 我に戻ると、ラスティはローゼリアの手をぱっと放した。


「すまない。無意識のうちに君を連れ出してしまった……」

「いえ……」


 噴水の水音が沈黙を埋める。

 あの部屋に残された三人は一体どんな話をしているのだろうか。


 (……エンデ、追ってきてくださいませんでしたわね……)


「……君をエンディミオンに取られてしまうと思ったら、つい、君を連れ出してしまった……」


 噴水の淵に腰を掛けると、ローゼリアの手を握ったまま、大きく項垂れる。


「エンディミオンに本音を言わせたところで、どうしようもないというのに……」


 (ラスティ様、混乱しているわ……でも、下手なことを言って刺激しては……)


「君は、エンディミオンのことは好きか」


 ラスティを慰めようとしたところ、突然の爆弾発言に後ろへ仰け反り、水に手をつく。

 

「えええ、え、っと……ラ、ラスティ様?そんなことを聞いてどうなさいますの」

「君がもしエンディミオンのことを好きというならば、私は……私は……」


 ラスティの発言に勢いがなくなっていく。

 ローゼリアは戸惑いながら言葉を待つ。


「えっと……私は……どうするんだ?」


 首を傾げ、ラスティは一人で考え出した。


「ラ、ラスティ様、混乱してらっしゃる……?」

「混乱……?そんなものはしていないぞ。ただ、よくわからないんだ。君を失いたくない。でもエンディミオンのことも大切だ。大事な二人が思いあっているのならば私は……ん?ローゼリア、私はどうすればいいんだ」


 (ラスティ様のサイディリアの血が踊ってますわ……!)


「ええっと……ラスティ様は、私のことを大事に思ってくれているのですね?それは、あくまで婚約者としての役割を果たしてくださっている、ということですか?」


 冷や汗をかきながらローゼリアが問うと、ラスティは突然ローゼリアの手を取り、まっすぐな目を向けてくる。


「もちろん婚約者として、君のことを真摯に愛している」

「え?」

「……と言っても、私もつい最近気付いたばかりで困惑しているんだ」


 いつにも見ない幼い困り顔に、ローゼリアも困惑に包まれる。


「……君が武闘大会に出た後、倒れてしまっただろう。……その時、私は君のお見舞いに行ったんだ。そしたら、君が私のことを好いていないと知って驚いたと同時に、気づいたんだ。私が驕っていたことに……」

「……驕っていた……?え?ラスティ様は私に興味がない、もしくは嫌っていたのでは……?」

「嫌っていた!?そんな事実はわずかたりともありえない!……もし君がそう感じていたのであれば謝る……おそらく、君が私を思ってくれている、と当然のように思っていたから、つい家族のように接してしまったのだろう……」


 深いため息を噴水に落とすと、ラスティはローゼリアの手を握りなおす。


「……君は覚えているか、初めて会った時のこと」

「ええ……あれは王宮で開かれた舞踏会で、ラスティ様の婚約者候補が大勢おりましたわよね。ラスティ様は全員に興味がなさそうでしたけれど」

「ああ、君にはそう見えていたのか。実は、私の婚約者は内々に君に決まっていたんだ。なのに君は私と話すなり、倒れてしまった」


 (あ……そうでした。あまりにも理想の悪役令嬢の婚約者過ぎて卒倒してしまったのでした)


「舞踏会中、私はずっと君を目で追っていた。こんなに可憐な少女が私の婚約者になるんだと思ったら、緊張で上手く言葉が出せず、君に冷徹な印象を抱かせてしまった……」


 (え……?あれってただ緊張していただけなんですの?)


「だから、君から是非婚約者にと打診があった際は喜びでご飯が喉に通らなくなった」

「そういえばそんな噂もありましたわね……私が無理やり婚約をせがんだストレスでご飯が喉を通らなくなったと」

「学園に入ってきた際も、君が他の男に取られないか心配で、目立ってほしくないと思った」

「そういえば、騒ぎを起こすなと言われましたわね、うんざりした感じで」

「うんざりではない、心配だったんだ……!……そして、その心配は当たってしまった……」


 (この方、不器用すぎて可哀そうになってきましたわ……)


「君が私のことを好きではないと知り、私は気付いてしまったんだ。君とエンディミオンの距離が近いことに。だから、どうにか私の方を見て欲しくて精一杯頑張ったつもりだったが……君は、エンディミオンとサイディリア王国へ挨拶に行ってしまった……」


 (ん……?)


「挨、拶……?」

「エンディミオンの婚約者として国王陛下に挨拶に行ったのではないか」

「え……?国の危機と聞いて様子を伺いに行っただけですが」

「何と……!?私宛のリーゼルトの手紙にはそのように……!」


 ローゼリアは口をぽかんと開き、しばらく黙ってしまった。


 (リーーーーゼルトオォォオオオオオオオオオ……!)

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