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悪役令嬢の婚約者として相応しい相手

「……エンディミオン、あなた本当に自分の正体を隠していたのね」

「仕方ないでしょう、お嬢様に執事だと偽った以上、最後まで執事のままお嬢様をお見守りするつもりだったのですから、叔母上」


 (……い、今叔母上って言いました……!?)


 驚きの目をエンデに向けると、エンデも王妃も不思議そうに首を傾げた。


「ご挨拶が遅れましたわね。私の旧姓はアンリネーゼ・サイディリア。サイディリア王国国王の妹、つまり、エンディミオンからしたら、私は叔母になりますわね」


 そういうとアンリネーゼ王妃は可憐に微笑み、楽しげに手を忙しなく動かした。


「た、確かに……どことなくリーゼルト様に似ているような……」

「リーゼルトは兄上の若い頃にそっくりですからねぇ」

「でも、儚げなところはアランジール様に似ているような……」

「そう、アランジールは私に似ているわ。傾国の美男よね、引きこもりじゃなければ」

「あの、いい加減本題に戻ってください」


 エンデが咳をすると、身を乗り出してきたアンリネーゼ王妃は席へ戻ったが、雑談を続けたそうに、終始、にこやかな笑みを浮かべていた。


「話が逸れてしまったが、つまり、ラスティはそちらのエンディミオン王子の従兄弟にあたる」


 (確かにラスティ様も天然なところがありますわ……!)


「……お嬢様、公にはしておりませんので、このことは内密に」

「はぁ……」


 エンデがローゼリアにきつく釘を刺すと、ローゼリアは気の抜けた声を出す。


「ああもう、アレクシュタイン公爵にエンディミオンと会うことを禁じられていたのよ。でも私はあなたに会いたくて会いたくて……」

「叔母上、その話はあとで伺いますから、今はローゼリア様の婚約のお話を」


 エンデが厳しく接すると、アンリネーゼ王妃は萎れたように体を縮こまらせた。


「……エンディミオンの気が急いているようだから、早速本題に入るとするか。……不躾だが、ローゼリア嬢は、我が息子ラスティのことをどう思っている?」


 国王が真剣なまなざしを向けると、ローゼリアは息をのみ、体を強張らせる。


「ええと……」

「確か婚約は君が強く望んで成ったはずだが」

「それは……ですね……」


 (悪役令嬢の婚約者として相応しかったからだなんて言えませんわー!?)


「この度は大変申し訳ございませんでした」


 狼狽えるローゼリアをよそに、エンデは突然立ち上がり、頭を下げた。


「兄の勝手な行動により、国王陛下及び王妃陛下に多大なご迷惑をおかけいたしました」

「エンディミオン……!そんなことはないわ、リーゼルトの奇怪な行動はいつものことじゃない!」

「そうだ。今回君たちときちんとした話し合いの場を設けたのは……エンディミオン、リーゼルトの手紙に書いてあることは、半ば本当のことなのだろう?」


 国王が心の内を覗くようにエンデを見ると、エンデは顔を背けた。


「……私の一方的な片思いです。ですので、お嬢様には関係ありません」

「関係なくありませんわ!」


 勢い良く立ち上がると、ローゼリアはふと我に返る。


 (あ、思わず立ち上がってしまいましたが、これでは私もエンデのことが好きだと言っているみたいになってしまってますわ……!)


 エンデは呆れた顔をし、ローゼリアの肩に手を置くと、席に座らせるように上から押した。


「お嬢様は昔から、反射的に行動してしまう癖があるのですよ。気になさらないでください」


 口を閉ざしたローゼリアに目配せすると、エンデも椅子に座る。


「ですので、ラスティ様との婚約は継続してください」

「ちょっとエンデ……!」


 そう言いかけた瞬間、エンデはローゼリアに「ラスティ様が婚約者じゃないと、お嬢様の理想の悪役令嬢になれないのでしょう?いいから私の言うことを聞いて黙ってください」と耳打ちする。

 ここでかき乱してもラスティやエンデに迷惑をかける。何より理想の悪役令嬢になるためには理想の婚約者が必要……!


 (……あれ、でもそれって、ラスティ様にもエンデにも失礼じゃなくって?)


「でも、エンディミオンはそれでよろしいの?」

「ええ……まだ正式に結婚したわけではありませんから」

「エンディミオンがそれでよくとも、ラスティがそれを知ったらどう思うだろうね」

 

 国王陛下は首を伸ばしてエンデの蒼い瞳に自分を映す。

 エンデはラスティにそっくりなその姿から逃げずに、じっと考えた。


「……もしラスティ様が不快だとおっしゃって、お嬢様との婚約に影を落とすようならば、私は……」

「エンディミオン!本当のことを言え!でなければ私は学園卒業と共にローゼリアとの式を挙げるぞ!」


 扉が突然開き、ラスティが殴りこんできた。

 ずかずかと部屋の中へ入ってくると、ラスティはローゼリアの手を取る。


「ローゼリア、私と共に来い」

「え!?あ、はい」


 強引に部屋へと連れ出すラスティに逆らう術はなく、手を引かれるままに部屋を出た。


 (え、一体どこに連れていかれてしまいますの……!?)

明日は定休日です

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