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さようならサイディリア王国……って本当余計なことをする方ですわね!?

「エンディミオン、行ってしまうのか……」

「行くんじゃなく、帰るんです」

「年に数回は帰ってきなさい、リリアンヌが悲しむからな」

「母上だけなんですね、私が帰って悲しむのは」

「私も悲しいぞエンディミオン!お前が帰って来ないのなら私が会いに行こうではないか!」

「兄上は国にいてください。じゃないと今回のようなことになりますので」


 城の外に馬車が到着すると、皆エンデを囲み、大げさに泣きわめく。

 アランジールだけは部屋の窓から双眼鏡を覗き、こちらを見ていた。


 (これからも年に数回は国に帰るように命令しなければなりませんわね……)


 エンデは半分怒りながらローゼリアの手を引く。

 その拗ねた表情に満足げに微笑むと、エンデは押し込むようにローゼリアを馬車へ乗せると、自身も馬車へ飛び乗り、すぐさま扉を閉めた。


「……何を笑ってらっしゃるんですか」

「いいえ、何でもありませんわ」


 乗り込むと同時に、馬車を出すように指示を出す。

 動き出した馬車の後ろを眺めると、リーゼルトが猛スピードで走り追いかけてきていた。


「エンディミオン!私は!お前の幸せを応援しているからなー!」

「……全く、あの人は何を言っているのやら……」


 呆れつつも、エンデの表情には安堵がにじんでいた。


 (きっかけはどうあれ、エンデが母国に戻るきっかけが出来てよかったですわね)


 ローゼリアはそっぽを向くエンデの手を握る。するとエンデは恥ずかしそうにその手を握り返す。

 窓の外に見える海は夜とはまた別の表情を見せていた。

 朝日に照らされた水面は元の青を隠し、白銀に輝いている。


 (また、いつかこの国に来るときは……)


 馬車の振動と、エンデの手から伝わるぬくもりが微睡へ誘う。

 ローゼリアが意識を失うと、エンデはその肩を貸し、自らもローゼリアに頭を寄せた。


*****


 サイディリア王国から戻り、数日が経ち、二人は学園への通学を再開した。

 学園へ登校すると、すぐさま噂に興味津々なご令嬢たちがリーゼルトやリンデールについて尋ねてくるが、まだ疲れが残っていたローゼリアはそれらの一切無視した。

 しかし、リーゼルトがサイディリア王国の第一王子であることや、エンデがその弟であることはすぐに広まってしまった。


「リーゼルト様素敵でしたわ……婚約者様はいらっしゃるのかしら」

「あら、私はまだエンデ様を諦めていませんわよ。エンデ様はどなたとご婚約されるのかしら」


 (婚約者……そういえば、エンデは私がラスティ様と婚約破棄したらもらい受けるだのなんだの言っておりましたわね……)


 疲れた思考でぼんやり考えると、すぐさまその意味を理解して立ち上がる。


 (って……ことは、私が婚約破棄しなければ、エンデは誰かと婚約してしまうということですの……!?)


 エンデは来年学園を卒業する。それは第一王子のラスティも同じだ。つまりそれまでにラスティとの関係を清算し、エンデとの関係を明確にしなければ、エンデはよそのご令嬢をもらい受け、アレクシュタイン家を継ぐということ……。


 (え、いや、ちょっと待ってくださいませ……エンデはサイディリア王国の方、アレクシュタイン家の血筋は全く引いていない……つまり、私と結婚しなければアレクシュタイン家を継げず、この国を追われてしまうのでは……!?)


 ローゼリアは立ち上がり、教室を慌て出る。

 廊下を走りだすと、上級学年の教室棟へ向かった。


「ラスティ様……!」


 廊下を並んで歩くラスティとエンデを見つけると、一直線に速度を上げる。


「ローゼリア……!」

「お嬢様……!」


 エンデはローゼリアを受け止めるようにラスティの前に立ち塞がり、両手を広げた。

 しかしローゼリアは最後に何歩か飛ぶと、エンデの前で綺麗に止まった。


「ラスティ様、お話がございます」

「ちょうどよかった。私も君に話があったんだ」


 (私に話……?何かしら)


「君に急ぎ登城して欲しいと国王陛下から言われてね。あ、エンデも一緒にとのことだ」

「え……登城、ですの」

「ああそうだ。これを見たまえ」


 そういうとラスティは刻印の入った青い封筒をローゼリアに差し出す。

 その封書を見た瞬間、エンデは顔色を青くした。


「開けてみたらいいんじゃないか?」


 恐る恐る封筒を開けると、そこには一通の手紙が入っていた。


”親愛なるレーゼンベルク国王陛下

国王陛下の第一子、第一王子のラスティ・レーゼンベルク様の婚約者であるローゼリア・アレクシュタイン公爵令嬢が先日我がサイディリア王国に来訪された際、大変お世話になった。

そちらの国、アレクシュタイン家でお世話になっている我が弟、エンディミオン・サイディリアと仲睦まじい様子を拝見したので、是非我が弟との婚約をお許し願いたい


サイディリア王国第一王子、リーゼルト・サイディリア”


 (……え……)


「一体これはどういうことなんだ」


 (こちらが聞きたいですわーーーーー!?)

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