引きこもり王子登場!
「……で、これから私たちは何をすればいいんだアンベル」
「アランジール様の思いがわからない以上、あまり下手に動くことはできません。ただ、城内に忍び込むのは容易でしょうね」
「……兵士は何をしているのですか?」
「お嬢様、サイディリア王国の兵がまともだとお思いですか?」
(サイディリア王国って……)
もしかして、エンデのため息をつく癖は、このような国民性に毎日呆れていたかもしれないな、とローゼリアは同情した。
「因みに兵は国王様を閉じ込め、ハンドレット公爵様を捕らえただけで満足して毎日酒宴を行っております」
「酒宴!?」
「ええ、今のところ二十日ほど続いております」
ローゼリアは白目をむいて倒れそうになった。
「じょ、情報が錯綜しているので整理いたしますね。国王様は仮病を使い王妃様に看病してもらう、そのため国王の弟のハンドレット公爵が執政を代理で行う、厳しい執政に普段怠惰な家臣たちが怒り、ハンドレット公爵を捕らえ、国王を部屋に閉じ込めた。そして兵士たちは喜びの祝宴を二十日ほど続けている……で、よろしいですか?」
「ええ、そして、その謀反の後、城を制圧しているのがアランジール様である、と」
(謀反って引き継ぐものなのかしら……)
ローゼリアがため息をつくと、エンデとかぶる。
二人は視線を合わせると、再び深いため息をついた。
「さて、情報が整理できたところで、そろそろ参りますか」
「どこにだ」
「城にですよ。あのアランジール様が城にお一人でいられるとは思えません」
「兵以外の家臣や使用人はどこへ行ったんだ」
「逃げだしました」
「え?」
「ハンドレット公爵の厳しい叱責を受けたと同時にすぐさま城内から去って行きました。そのため、おそらくアランジール様はお一人で城内におられます」
(つまり……城全体に引きこもっている……?)
「そろそろ調理室にある、そのまま食べられるものが尽きる頃合いでしょう。そろそろ戻ってあげなければアランジール様が気の毒です」
「そ、そしたら変装をした方がよろしいですか」
「いいえ、そのままでよろしいです。城できびきびと働いている兵などいたら、すぐさま侵入者だとバレてしまいます。まぁ、そもそも見つけて罰するような兵や家臣もいないわけですが」
(あ、頭が痛すぎてわけがわからなくなってきましたわ……)
エンデはローゼリアの髪を持ち上げると、一本に結い上げる。
「何かあった時に動きづらいでしょうから」
「ありがとう……」
この国に生まれながら、まともに育ったエンデに感謝した。
*****
城は周りに堀で囲まれており、長い橋が渡されていた。
門には門番もなく、静まり返っていた。
「本当に兵は酒宴をされておりますの……?罠ではなくて?」
「入ってみましょう」
アンベルは気負った様子もなく街中を歩くように城へ踏み入れる。
それに皆ついていくが、城内に入ってもどこにも人の気配はなかった。
「本当に人気がなさ過ぎて気味が悪いですわね」
「もし陰から矢が飛んできたとしても、私が守りますのでご安心くださいお嬢様」
「あら、私だって学年主席の腕前でしてよ」
「例え数百の兵が襲ってきたとしても、全て私が皆様をお守りいたしますよ。それが私のお仕事ですから」
アンベルがそう微笑むと、その底知れない力に苦笑いをした。
「このあたりから王族の方々の居室にございますね」
「まずは父上を助け出さなければな!」
「……果たして、助け出されたいと思っていらっしゃいますかねぇ」
アンベルはそう言うと足を止める。
静寂の中、みな周りを見渡す。すると、どこかでお腹が鳴る音がした。
アンベルは青い扉を開けると、スコーンを投げ入れる。するとそのスコーンは中にいる人物の口に見事嵌った。
「お味はいかがですか、アランジール様」
ローゼリアは目を見開く。青い髪、黒い瞳、リーゼルトやエンデとは異なる女性的な顔立ち……
スコーンを食べ終わると、その人物はこちらを指差し、叫んだ。
「遅いぞアンベル!僕が餓死してしまう所だっただろう!」
(この方が……エンデのお兄様の…アランジール様!?)
明日は定休日なのでお休みです




