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ほーらお兄ちゃんだぞー!

……ゼリア…………ア様……


「ローゼリア様ー!」


 アイレリアの大声に、ローゼリアは驚いて目を見開く。

 辺りを見渡すが、まだ救護室のベッドの上にいた。


「ローゼリア様大変です!」

「……どうしたのアイレリア……」

「エンデ様のお兄様がいらっしゃいました!」


 (……は?)


「エンデの……?お兄様?」

「はい!青髪に黒い瞳の素敵な方です」


 (どういうことだろう……エンデの兄上というと、現在姿を隠されているという、王子様……?)


 ローゼリアは体を起こし、痛む頭を押さえながらアイレリアを落ち着かせる。


「アイレリア、落ち着いて、順を追ってご説明なさい」

「ええっと、ですね……私、エンデ様と教室等に戻っていたんですが、エンデ様の教室から、何故か嬌声が聞こえてきて……中を覗いたら、知らない男性がご令嬢たちを侍らせていたんです!」

「それが、エンデのお兄様なの?」

「そうなんです、青く長い髪を揺らしながら、優雅にこちらへ歩いていらっしゃいました。そして、『やぁエンディミオン、久しぶりだね、お兄ちゃんだよ』と……!」


 (きっとろくでもないお兄様ですわー!)


 ローゼリアは頭を更に痛めながら、ため息をつく。

 うんざりするローゼリアとは裏腹に、アイレリアはうっとりとしている。ご令嬢たちが一瞬で夢中になるほどの容姿と物腰なのだろう。


 (まぁ、ラスティ様が結構そっけない王子様ですからね、お気持ちはわかりますけれども)


 すると激しい足音が向こう側からものすごい勢いで聞こえてきたと思ったら、急に救護室の扉が開いた。


「お嬢様!失礼いたします」

「エンデ!?」


 エンデは救護室に飛び込んでくるとすぐさま扉を閉め、鍵をかける。


「一体どうしたの、あなたがこんなに慌てるなんて」

「お嬢様、大変申し訳ございません……私の不詳の兄が学園に忍び込んでおりまして……」

「不詳の兄とは僕のことかな?可愛い弟よ」


 扉の反対側から声が聞こえ、そちらを向くと、窓がガラッと開く。

 その人物はひょいっと窓の向こうに立っている木から窓に足をかけて救護室に飛び込んできた。


「初めまして、ローゼリア・アレクシュタイン公爵令嬢。私はサイディリア王国第一王子、リーゼルト・サイディリアでございます」


 リーゼルトはローゼリアへ近づいてくると、華麗な身のこなしで挨拶をし、その輝く黒い瞳を向けた。窓から入る風にたなびく青髪を見て、ローゼリアは既視感を覚える。


 (何だか……見覚えがありますわ……)


「逃げるなんてひどいじゃないかエンディミオン。10年ぶりの再会だろう、さぁ、お兄ちゃん会いたかったよ、と言ってくれたまえ」

「誰がお兄ちゃん、ですか……」

「お兄ちゃん!?今お兄ちゃんと言ったな」


 ローゼリアとアイレリアをよそに、二人はやり取りを続ける。

 勢いよく迫られ、たじたじになっているエンデを見ていると、なんだか微笑ましく感じる。


「お嬢様!笑っている場合ではありません」

「あらいいじゃない、お兄様と久しぶりに会えたのですから」

「ほら、ローゼリア嬢もこう言ってくれている、なんなら兄上でも許してあげよう」

「何で許されなきゃいけないんですか!」

「10年前、お前はお兄ちゃんたちに何も言わずにアレクシュタイン家の養子になっただろう。お兄ちゃんたちは悲しんで三日三晩泣いていたんだぞ」

「いや、普通に食事を嗜んでいたと聞きましたが」

「泣いていても食事はとれるだろう!そこじゃない、そこじゃないんだエンディミオン!」


 (何だかめんどくせー男ですわこの方……)


 エンデはローゼリアの側に寄り、助けを求めてくる。

 するとリーゼルトはローゼリアをじっと見つめてきた。


「ふーん、そういうこと……」


 リーゼルトは意味ありげに含み笑いをし、ベッドの周りをぐるぐる回る。

 エンデはローゼリアの手を握るが、助けを求めているように思えた。


「決めた!ローゼリア嬢、僕と一緒にサイディリア王国に来てくれないか」

「え?私が?」

「兄上!お嬢様を巻き込むのはおやめください」


 エンデがそういった瞬間「しまった」と目を閉じた。

 リーゼルトはにやけ顔で妙な踊りを始める。


「やっと兄上と呼んでくれたねエンディミオン!可愛いわが弟よ!」


 ベッドにエンデの顔が沈むと、ローゼリアは同情して頭を撫でる。

 するとエンデは急に顔を上げ、リーゼルトを睨む。


「……今のは、私に兄と呼ばせたくてついた……”嘘”ですよね」

「いいや、本気のつもりだよ。まぁお前がサイディリア王国に戻ってくるなら、考えてあげなくもないが」

「お嬢様はこの国の第一王子、ラスティ様の婚約者です。まだ婚約破棄もしていない中、隣国の王子に連れていかれたとなれば、国際問題に発展しかねません」

「大したことではないよ、何故ならこの私はなんの検閲も引っかからずにこの国にこうやって潜入できたのだから……!」

「あなたがおかしいんですよ」

「でも、お前をそんなに夢中にさせるご令嬢だ、少し興味がある。どうだいローゼリア嬢、僕と一緒にサイディリア王国に来ないか」


 (サイディリア王国って……まともな方がいないんですの~~~???)

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