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振り回すのはいい加減にしてくださいませ!

「まぁっ、この国では朝食にこのようなものを出すのね!」

「リンデール様、居候の身なのですから文句はお控えください」

「私はただ感想を述べただけです!別に文句じゃなくってよ。それにしても、わが国では考えられませんわ~」


 朝から耳をつんざく声を上げ、リンデールは朝食を口に運ぶ。

 ローゼリアは目の下に隈を作りながら朝食を流し込んでいた。


「お嬢様、ご命令いただければいつでもあの方を追い出しますが」

「いえ……国際交流ですから、この程度のこと、目指すべき悪役令嬢ならば……絶対に、負けないはずですわ……」


 (今にも意識が飛びそうですわ……)


 屋敷に押しかけ居候となったリンデールはアレクシュタイン家の一室を乗っ取り、勝手に家財を運び込み、日夜引っ越し作業が続いたのち、終わった後もリンデールご一行の話声が夜中まで聞こえてきた。ローゼリアは寝不足に陥り、食事もままならなくなってきていた。


「エンデ、今日は学園を休みますわ。先生によろしく言って下さる?」

「ならば私もお休みをいただいてお嬢様のお世話を」

「あーらエンディミオン様、学校に通っていらっしゃるの?私もエンディミオン様が通っていらっしゃる学校を見てみたいですわ」

「リンデール様は一応隣国の客人ですので、外を出歩くのはお控えください」

「私はエンディミオン様の婚約者なのですから、婚約者が通う学び舎を視察するのは婚約者として当然の権利でしょう!」

「……ですから、いつまでその婚約者設定を引きずってるんですか……」


 心なしかエンデも少し疲れたように見える。

 ローゼリアはその様子に少しほっとして、食べられそうなフルーツを少し口にした。


「いってらっしゃいエンデ」

「出来る限り早く帰ってまいりますので、お嬢様も無理なさらないように」


 エンデを見送ると、ローゼリアは青い顔をしながら部屋へ戻った。

 予想外にリンデールは大人しくローゼリアと共にエンデを見送り、そそくさと自室にこもると珍しく静かに過ごしていたようだった。


 (なんかきな臭いですわね……)


 部屋で本を読んでいても全く聞こえない話声。昨日まではあんなに昼夜問わずうるさかったというのに。


「……もしかして……」


 ローゼリアはふらつく足元に力を入れ、こっそりと隣の客室を覗く。すると、そこは人影もなく、もぬけの殻だった。

 窓が開いており、カーテンが音を立てて揺れる。

 中へ入り、窓に近づくと、柱に結びつけられた綱が窓から下の庭まで伸びている。


「やられましたわ……!」


 (こんな典型的なやり方で逃げられるとは……悪役令嬢失格ですわ!)


 ローゼリアは頭を抱えると、すぐさま部屋へ戻り、制服に着替える。

 

 (早く止めなければ……学園が混乱に巻き込まれてしまいますわ……!)


*****


 学園内を壁伝いで歩くと、周りの令嬢たちの視線が突き刺さる。


「ローゼリア様だわ……」

「なぜあのようにやつれていらっしゃるのかしら……」

「男爵令嬢のアンネリー様をお屋敷に連れて行っていじめていらっしゃるという噂は本当なのかしら……?」


 令嬢たちは噂話をするものの、声をかけてくるものはいない。


 (好き勝手おっしゃってるわね……でも今はあなた方に構っている余裕はなくってよ……)


「ローゼリア様!いらっしゃったのですか」

「アイレリア……」


 霞む意識の中、アイレリアは倒れこむローゼリアに駆け寄り、その体を受け止める。

 気のせいか、アイレリアに触れていると体が楽になる。やはりあなたは聖女……


「ローゼリア様!ローゼリア様の席によくわからないご令嬢が座って、学園中のご令嬢たちに意味の分からない要望を突き付けているんです!」

「へ……?」


 ローゼリアは体を勢いよく起こすとアイレリアの顔を見る。


「も、もしかしてその方は金髪縦ロールの……」

「はい!金髪縦ロール、目は吊り上がり、大きなリボンをつけてらっしゃいます!」


 (リンデール様ですわーーーーー!!!)


 アイレリアは気絶しそうに頭を揺らすローゼリアに何度も声がけすると、癒しの魔法をかける。


「ありがとうアイレリア……」

「あの方はローゼリア様のお知り合いなのですか?」

「まぁ……正確には、エンデの知り合いと言いますか、元婚約者と言いますか……」

「元……婚約者ーーーー!!?」


 アイレリアの大きな声が廊下に響くと、周囲のご令嬢の視線が一斉にこちらへ向く。


「あ、そっか、エンデ様って隣国の王子様なんでしたっけ」

「ま、まぁ、今は私の執事ですけれどもね」

「元婚約者かぁ……じゃあ、エンデ様を迎えにいらっしゃったのですか」

「む、迎えに来られましても、今はアレクシュタイン家の養子ですのでお渡しは出来ませんけれどもね」


 言葉を濁しながらアイレリアに答えると、アイレリアは不思議そうに首を傾げた。

 すると廊下の向こう側から、甲高いヒールの音が聞こえてくる。


「あーら下品な叫び声が聞こえてくると思ったら、庶民の方と交流されているとは流石将来の国母様でいらっしゃいますわね、ローゼリア様」


 大きく巻かれた縦ロールを優雅に揺らしながら、リンデールはローゼリアに近づいてきた。

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