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あなた……居候する気ですの!?

「あなたがこの国でのエンディミオン様の婚約者ですの?ふーん……まぁまぁですわね」

「ま、まぁまぁ……!?」

「リンデール嬢、お嬢様への侮辱はお控えください」

「侮辱?私はただ感想を述べただけよ」


 リンデールは縦ロールを手で舞い上がらせると、高笑いをして見せる。

 

 (な、何だかキャラ濃いめですわねこの方……)


「と、とりあえず、中へお通ししましょう。エンデ、応接室へ案内して」

「はい」

「ちょっとあなた?エンディミオン様に何指図しているの!?無礼ではなくって!」

「え、ええっと……」

「リンデール嬢、ここでは私は執事です。余計な口をはさむようならば、お嬢様のご厚意に反してあなた方を追い出しますが」

「嫌よ!エンディミオン様を連れて帰るまではこの屋敷を出ませんわー!」


 吹き抜けの玄関に響く甲高い声が、シャンデリアを揺らす。

 エンデとローゼリアは両手で耳を塞ぎ、目を閉じた。

 

「ここが応接室ですの?まぁ、なんて質素なのかしら、こちらは子爵家?男爵家?」

「公爵家ですわ!」


 ローゼリアは強く反論し、自分で菓子の入った皿を前に差し出す。


「公爵家?まぁ、そうですわよね、王籍を離脱したとはいえ、王子を迎え入れる家なのですから」


 リンデールは腕組みをし、自慢げに顔を上げる。

 

 (こ、こ、この方……何だか……既視感が……)


 ローゼリアは心を落ち着かせるために、紅茶を一口飲むと、エンデはすぐさまミルクを横に置く。

 顔を上げると、微笑むエンデと目が合った。

 するとリンデールは手を軽くティーカップに当て、紅茶をこぼした。


「あーらごめんなさい。拭いてくださる?ローゼリア公爵令嬢様」

「は、はい?」

「リンデール嬢、それは私の仕事です。すぐに拭く物を準備いたします」

「エンディミオン様?私はローゼリア様にお願いしましてよ」

「そうは言ってもローゼリア様は私の主人でございますのでそのようなことはさせられません」


 エンデは他の使用人から布巾を渡されると、テーブルの上を丁寧に拭く。

 エンデがじっとリンデールを睨むと、リンデールは少し怯んだ。


「……本題に入りますわよ。エンディミオン様、母国の情勢はどこまでご存じで」

「叔父上が、国王である父に謀反を起こし、それに恐れをなした兄たちがお隠れになった、と」

「やはり……情報が遅れておりますわね。実は、エンディミオン様の叔父上、ハンドレット公爵は捕縛されました。しかし、しばらく監禁されていた国王様の体調が思わしくなく、第一王子様、第二王子様共にお姿を隠された後の消息が不明となっております。そこで、エンディミオン様に白羽の矢が立ったのです」


 エンデの目を射抜くようにじっと見つめると、リンデールは満足したように、入れ直された紅茶に口をつける。


「エンディミオン様には即刻母国へお帰りになって、国王様の跡を継いでいただきたいのです。そして跡を継ぐということは婚姻は必須。つ、ま、り……婚約者の私の出番ですわー!」

「私の婚約者はあなたではございません」


 リンデールの高笑いをバッサリと切り捨てると、エンデはローゼリアの口を拭く。


「……さっきからローゼリア様のお世話ばかりしておりますが、私のことも気にかけて下さってもよろしくてよ」

「いえ、私のご主人様はローゼリア様だけなので」

「あなたは執事じゃなくて王子様なのよ!?そしてあなたの婚約者は私!私、リンデール・ミングスティン!」

「……お嬢様は私の婚約者でもありますので」

「は?」

「ローゼリアお嬢様の婿になるために、私はこのアレクシュタイン家に養子に入ったのです」

「はああああ!?」


 リンデールのドスの効いた声がティーカップを揺らす。

 ローゼリアとエンデは慣れたように、表情も変えず耳を塞いだ。


「この方がエンディミオン様の婚約者ですってえええええ!?」

「え、ええ、なんか、そういうことになっているとかなんとか……」

「私はいずれローゼリアお嬢様の伴侶となる予定なのです。どうしても、というのであれば、ローゼリア様を伴って母国へ帰ることになりますが」

「エンデ!?」

「まぁ、どちらにしても、私は王の座を継ぐことはございませんので、どうか兄の居場所を探すことに尽力して下さいませ」


 (エンデ……!?私まだラスティ様と婚約破棄しておりませんことよ……!?)


 エンデがお茶を片付けようとすると、リンデールはその手を止める。


「エンディミオン様、私、諦めませんことよ」

「諦めないと言われましても……その気がないことには」

「いいえ、国のことではございません。私、幼い頃からエンディミオン様に嫁ぐことを夢見ておりましたの。ここで引き下がっては女がすたりますわ」

「そう言われましても」

「ですから、私がこのローゼリア様より魅力的で!優雅で!美しいということをエンディミオン様にお認めいただいて、心を奪ってから、ともに母国へ帰っていただくことにいたしますわ!」

「え……」


 (ってことは……この方それまで我が家に居座りますのー!?)


 ローゼリアは血の気が引き意識を飛ばし、後ろに倒れた。

 その体をエンデが支えると、またもやリンデールの甲高い叫び声が遠のく意識の中、木霊する。

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