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あなた厄介オタクの属性盛りすぎですわよ!?

「あ……あなたは……エンディミオン様……」

「私のことはエンデとお呼びください。学内ではそのように呼んでいただいております」

 

 エンデはアンネリーを睨んだまま、視線を外さない。

 しかしアンネリーはあからさまに動揺し、恥じらう様子がうかがえた。


 (あら?……もしかして……これは)


「エ……エンデ様……その」

「エンデ!手を離しなさい!私はアンネリー様とお話がしたいのです。邪魔なさらないでくださいます!?」


 そう言い放つと、腰を抱くエンデの手を剥がす。

 振り返り、エンデを見上げると、涙目のローゼリアにエンデは複雑そうな表情を浮かべた。


「お嬢様、涙が……」

「勘違いなさらないで。これは嬉し涙よ。アンネリー様を威嚇しないで下さる?この方は、私のことを始めて悪役令嬢と呼んで下さった大切なお方なのですから」


 そう拗ねると、エンデは茫然とし、じっとローゼリアを見る。


「初めて……?」


 エンデの静かな圧がアンネリーに襲い掛かる。


 (ま、まずいですわまずいですわ。早くエンデを学園に返さなければ)


「エ、エンデ!?そろそろ午後の授業が始まりましてよ、学園に戻った方がよろしいのでは!?」

「ではお嬢様、一緒に学園へ戻りましょう」

「あっ、いえ、私は……こ、この別館で授業があるのです!」

「この別館は内部が壊れていて取り壊し予定ですが?」

「うっ……」


 ローゼリアの手を握り、離さないエンデに、ローゼリアはたじろぐ。


 (ど、どうしたら帰ってくれるのかしら……今アンネリー様に逃げられたらもう二人きりで話す機会は……)


「エンデ様、ローゼリア様は私とお話ししたいとおっしゃって下さっているのです。どうかお引き取り下さいませ」

 

 アンネリーは毅然とした態度で笑みを浮かべる。

 するとエンデは少し機嫌を害したというように顔面を潰して、不貞腐れたように薔薇のアーチをくぐり、戻って行った。


 (はぁ……行ってくれましたわ……それにしても)


 アンネリーは気が抜けたのか、先ほどまで被っていた仮面を外し、深いため息をつく。


「はー、緊張した……何でエンデ様があなたを追ってこんなところまでくるのよ」

「……それは……私の執事ですから」


 そういうと、アンネリーはしゃがみ込み、頭を抱えて唸りだした。


「ああああもう!何であなたの執事がエンデ様なわけ!?あんな実在性アンドリューみたいなお方が!何であんたみたいな悪役令嬢の執事なの」

「実在性アンドリュー!?」


 アンドリューとは、聖女のため息に出てくる、聖女の幼馴染の執事だ。聖女に想いを寄せながらも、王子と結ばれる聖女を陰ながら見守り、最後は聖女と結ばれる。


 (……エンデが聖女のため息に出てくる執事に似ている……?)


「エ、エ、エ、エンデが……?」

「そうよ、美しい黒髪、涼やかかつお優しそうな眼もと、執事らしい軽やかな身のこなしと優雅な所作、そして実は隣国の王子だったという裏設定……!ずっと似てるな~と密かに思っていただけだったのに、エンデ様が隣国の王子のエンディミオン様と知って、私、もう夜も眠れなかったわ……!」


 (こ、これは思ったより重症ですわ……って、この盛り上がりよう……もしかして)


「あ、あなた……もしかして、エンデのことを好いていらっしゃる……」

「馬鹿違うわよ!あんな素敵なお方に私みたいな庶民上がりの男爵令嬢が似合うわけがないでしょうが」


 (やっぱり……!)


 アンネリーの粗雑な言葉遣い、夢見がちなところ、とてもじゃないが貴族とは思えなかった。

 ローゼリアは腑に落ちて手を叩く。するとアンネリーは威嚇するように歯軋りをする。


「私があんたみたいな生まれながらの公爵令嬢だったら……エンデ様みたいな、物語に出てくる殿方のような方に……仕えていただけたかもしれないのに」


 (アンネリー様……)


 アンネリーは本を大事そうに抱え、しんみりと悲しげな表情を浮かべる。


「つまり、アンネリー様にとって、エンデは”推し”なのですね」

「は?推し?」


 (しまった……!まだこの世界には推しの概念がありませんでしたわ……!)


 ローゼリアは焦ってわざとらしく咳き込み誤魔化す。


「というか、エンデは確かに隣国の王子ですけれども、聖女のため息に出てくる執事はただの執事ですわよね。何故実は王子であることにそこまでときめいていらっしゃるのですか」

「やっぱり新参はダメね。この間発売された設定資料集で、実は執事のアンドリューは隣国の王子であることが判明したのよ。私、その設定を見て、ますますエンデ様にアンドリューを重ねるようになってしまったわ」


 (設定資料集……!?そんなものリシリュー様がエンデを見て後付けで決めた設定に決まっていますわ)


「とにかく、私は別にエンデ様を好きなわけじゃないの。そりゃ……あんなに素敵なお方が私みたいな男爵令嬢を好いてくれたら夢のようだけれど……でもいいの、遠くで見ているのがちょうどいいのよ」

「やはり……アンネリー様はエンデのことを推しとしてお好きなのですね」

「でも、あんたみたいな悪役令嬢がエンデ様の横にいるのは嫌。エンデ様にはもっと素敵なお方がいるはずよ。例えば、庶民出身の……アイレリア様とか!」


 (この方カプ厨属性も追加ですわ~~~)


 ローゼリアは目を閉じて静かに萎びていく。風が薔薇のアーチを揺らすと、「あんた寝てんじゃないわよ、まだ言いたいことあるんだから!」とアンネリーに体を揺らされた。

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