転生者……ってなんですか?
「ですので、リシリュー宰相に脚本を渡された際には、新たな嫌味かと思いましたわ」
「私は悪役令嬢という概念を知りませんでしたが、ローゼリア嬢とこの本の内容を詰めて行けばいくほど、アレクシア嬢にしか見えなくなってしまい……ついフリージア役をお願いしてしまったのです」
嬉しそうに微笑むリシリューの表情に、アレクシアは呆れたように睨みつける。
いや、リシリューの言葉を信じいると、睨んでいるわけではないのかもしれない。
「……と、いうわけなのですが、ローゼリア様は、何故ご自身を悪役令嬢だなどと?」
「え?私こそ、どう見ても悪役令嬢ではありませんか?」
ローゼリアは首を傾げて素っ頓狂な声を上げる。
「あの……失礼ですが、どのあたりが……」
「え?この金髪の巻き髪、吊り上がった目、公爵令嬢という格、そして第一王子の婚約者という立場、どこからどう見ても悪役令嬢ではなくって?」
「私は学園内で礼儀知らずの庶民の方を嗜めることもありましたが……あなたはそう言ったことは……?」
「いえ……私はそう言ったことは……」
「そうですか。私は悪役令嬢としての気品と誇りをもって、庶民に礼儀と作法をお教えしようとした結果、悪評を立てられてしまいました。ローゼリア様もお気を付けくださいませ」
「アレクシア様は、悪役令嬢に誇りを持っていらっしゃるのですか?」
「ええ、最初は悪役令嬢としての役目をまっとうしようと思いました。しかし、今となってはただの足かせでしかありません。背びれ尾ひれをつけられて、私の評価は気高い悪役令嬢ではなく、ただの意地汚い悪役令嬢になってしまいました」
(そうか……アレクシア様も、アレクシア様なりの理想の悪役令嬢像を追い求めて……)
「ローゼリア様は、悪役令嬢としてどのような矜持をお持ちで?」
「えっ!?」
アレクシアに突然聞かれて、ローゼリアは混乱する。
「お嬢様は、ヒロインを虐めない完璧な悪役令嬢を目指しておられます」
エンデが突然割って入る。
「エンデ!勝手に言わないでくださいますか」
「そう考えると、アレクシアはローゼリア嬢の理想の悪役令嬢に近いかもしれませんねぇ。何せ、虐めていると勘違いしているのは周りだけですし、何より別に婚約者の私の周りをうろつく女性を追い払うように冷たく当たったわけでもございませんからねぇ!」
「別にリシリュー宰相に興味がないので、周りに女性がうろついていても気にならなかっただけですわ」
アレクシアが冷たく接すると、リシリューは目を閉じ、その厳しささえもありがたく受け取っていた。
「そういえば、アレクシア様は悪役令嬢という概念をご存じのようですが……もしかして」
「ええ、転生者ですわ。ローゼリア様もですわね」
「はいそうです」
「ずっと、私だけかと思っておりましたわ。私、リシリュー宰相が転生者であることも最近知ったのですよ」
「え!」
「私も、この本の執筆作業中にアレクシアが悪役令嬢の役柄と似ていることに気付き、役者として打診をした際にやんわりと確認してようやく知ったもので……」
「それまで婚約者だというのに私に全く興味などなかったではありませんか」
「いえ興味がなかったわけではありませんよ。ただ、布教……いや、自らの野望を叶えるために邁進していたら学園生活が終わってしまっただけで……」
「やはり興味がないではありませんか」
「そんなことはありませんよ、ささ、アレクシア、お呼びがかかっておりますよ」
笑みがふいにこぼれると、今までの緊張がほぐれ、二人で笑いあう。
(アレクシア様も転生者だったわけですか……まぁ、前世でもキャラのとらえ方は人それぞれ、学級会が行われるようなジャンルもございますし、悪役令嬢のとらえ方も人それぞれ、ということですわね)
「お嬢様?転生者とは何ですか?」
「ん?」
突然エンデが不思議そうに尋ねる。
「転生者、というのは、どういう意味ですか」
(し、しまったですわーーーーーー!!!!)




