仲間と秘密の密会ですわ
「それで、ど、どなたと密会なさるのですか……」
小さな声で囁くと、アイレリアは輝く瞳をローゼリアに向けた。
「密会と言っても、色っぽいものではなくてよ。ただの仲間ですわ」
そう否定しても、アイレリアは聞く耳を持たないといった様子だった。
「私はわかっております、ローゼリア様。ローゼリア様が歌劇を見てから様子がおかしいことを……」
悟りを開いたような様子のアイレリアに、ローゼリアは引きつり笑いしながら視線を逸らす。
「大丈夫ですローゼリア様。本日は私の寮の部屋にいることにすればよろしいのですよね!絶対にエンデ様にバレないようにいたしますわ!」
自信満々と胸を張るアイレリアに、ローゼリアは気迫負けし、
「え、ええ……頼みますわ……」
と片言になった。
*****
アイレリアと共に寮に入ると周りを見渡す。
(流石に女子寮には忍び込んできませんわね……)
ローゼリアは胸をなでおろすと、アイレリアの部屋に入り、着替えた。
「あー、どなたと逢引されるのか知りたいのは山々ですが、我慢いたします……!頑張れ!ローゼリア様……!」
悔しそうに歯を食いしばるとアイレリアはローゼリアを見送った。
夕日が窓に沈み、寮が施錠されると、ローゼリアは窓から庭に降り、こっそりと寮を出る。
「寮が街に近くてよかったわ……」
門を出るとすぐに街中へ出る。点灯し始める街灯の元を駆け抜け、劇場へ。
(これでは聖女のため息のラストシーンみたいではありません事……!?)
リシリューの麗しい見た目がローゼリアに邪な考えを植え付ける。
(リシリュー様は……もしかして、攻略キャラ……!?だとしたら私が不用意に接触しないほうがいいのかしら……?)
そんなことを考えているうちに劇場の入り口が見え、ローブを纏った背丈の高い男を見つけると目の前に立ち、帽子を少し上げて見せる。
「……ごきげんよう。二人きりでじっくり語り合える店へ行こう」
「ええ、あなたとは本音で語り合いたいですわ」
ローゼリアはリシリューの後ろをついていく。それまでローゼリアの周りをうろついていた怪しげな者たちが次々と離れていくのを感じる。
(やはり、殿方っていいですわよね……)
深いため息をつくと「何か言ったか」とリシリューが振り返る。「何でもありませんわ」と誤魔化すと、咳払いをして見せた。
*****
下町の中でも少し品のいい店に入ると、リシリューはフードを少し外し、店長に合図する。すると奥の部屋へ無言で通された。
部屋は窓がなく、おそらくリシリューが密談をするときに使っている部屋だろうと感じた。
「……まぁ、座りなさい」
リシリューが座ると、ローゼリアもつられて座った。
やがてリシリューには食前酒、ローゼリアにはぶどうジュースが出され、一通りの料理が一気に運ばれると、店員は出て行った。
「人に聞かれたくない話をするときに使っている店だ、心配することはない」
リシリューがわずか二年で宰相の座についたのにはそれなりの理由があるのだろう、とローゼリアは察した。
「……最初に私から聞いてもよいか」
「ええ、何のことでしょうか……」
リシリューは食前酒に口をつけると、緊張しているかのように息をついた。
「君の……聖女のため息の推しキャラは聖女なのか……?」
(えっ……)
真面目な顔をしてローゼリアを見つめるリシリューに、ローゼリアはグラスを持つ手が止まる。
「い、今、推し、って言いました、か……」
「はっ……!?君はもしかして……し、知らないのならば聞かなかったことにしてくれ」
リシリューは一気に食前酒を飲み干す。
「あっ、いえ、わ、私の推しは執事ですわ!」
慌てて発言すると、リシリューは食前酒を詰まらせ、吹き出す。
「……やはり、君は」
「もしかして……あなたは……」
「「前世の記憶を持っている……!!?」」




