あれはどう見ても理想の庶民系ヒロインですわ!
16歳になったローゼリアはレーゼンベルク王立学園へと入学した
(婚約者と同じ学園、おそらく現れるであろうヒロイン、楽しみすぎますわ……!)
ローゼリアは婚約者と仲を深め、ヒロインと切磋琢磨することを楽しみにしていた。
廊下を歩いていると、見知った顔を見つけ、首を傾げる。
「エンデ、何故ここにいるの!?」
入学早々、ローゼリアは甲高い叫び声をあげる。
何故か執事のエンデが学園の制服を着て廊下に立っていた。
「お嬢様、ご入学おめでとうございます」
「ご入学おめでとうございますじゃありませんわ、あなた、学園の生徒なら先に言いなさいませ」
「お嬢様には毎朝制服を着てご挨拶申し上げておりますが」
「あれが制服だと思わなかったのよ!我が家の執事の制服だと思っていたわ」
混乱するローゼリアから視線を逸らすと、エンデはまた深いため息をつく。
「君たちは廊下で何をしているんだ」
「殿下……!」
ラスティが現れると、ローゼリアは頭を下げ、スカートを摘まみ、礼儀を尽くす。
(決まったわ……)
お屋敷でさんざん練習したカーテンシーを美しく決めると、ローゼリアは満足げに顔を上げた。
「はぁ、あまり騒ぎを起こさないでくれよ」
うんざりした様子のラスティにローゼリアは落ち込むどころか
(そう、そのままあなたは私を愛さないでいて頂戴)
満面の笑みを浮かべた。
(あなたの運命の人はこれから現れるのですから)
教室に入ると、ローゼリアは辺りをきょろきょろと見回す。
(ヒロインは誰かしら……)
女子生徒を頭に叩き込むように見ていく。しかし、ヒロインのような見た目をしている生徒は見当たらない。
見た目普通、庶民出身、でも明るくてオーラがあって、努力家で、できれば特殊能力があれば尚良し。
(でも……庶民らしい見た目の生徒がいらっしゃいませんわ~!)
ローゼリアはショックのあまり、床へ倒れこむ。
さめざめと泣きながら椅子に座ると、最初の授業が始まった。
すると、遠くから大地が割れるような激しい音が近づいてきた。その音は教室の前で止まり、同時に扉が壊れそうな勢いで開いた。
「遅刻してすみませんでした!!私はアイレリア・バーンスタインです!」
彼女の勢いにクラスメイトはおびえていたが、ローゼリアだけは好奇心が恐怖に打ち勝ち、瞳を輝かせていた。
(あれは……どこからどう見ても庶民! まさか、彼女は、私の理想の……ヒロイン!?)
思わず両手を組み、額に当ててヒロインに祈りを捧げる。するとアイレリアはローゼリアが祈る姿を見て、瞳を輝かせる。
「……聖女、様」
ゆっくりとこちらへ歩み始めると、教師がこほんと咳をし、アイレリアは恥ずかしそうに自分の席へ着いた。




