別にあなたのことなんて好きじゃありませんわーーーー!!!!!
ローゼリアが部屋に引きこもって数日経つ。
学園は武闘大会の熱狂が収まり、日常を取り戻しつつあった。
「お嬢様、そろそろ学園へ参りましょう」
エンデがそう声をかけても、ローゼリアは返事をしなかった。
部屋の中からも聞こえるほど大きなため息をつくと、エンデは平坦な声で投げかける。
「お嬢様、本日の放課後、ラスティ様がお見舞いにいらっしゃいますので、その時にはお支度をなさっておいてくださいね」
エンデは爆弾を落とすと、すぐさま扉の向こうから気配を消した。
(ラ、ラスティ様が……お見舞いにいらっしゃるですって……!?)
ローゼリアは飛び起き、部屋中を駆け回る。
「ラスティ様が、ラスティ様がいらっしゃるなんて……私、どうやって……」
青白く頬がこけた姿が鏡に映る。
「私、どうやってラスティ様に婚約破棄を申し出ればよろしいのかしらー!」
ベッドの中でさめざめと泣くも、完璧な婚約破棄イベントを演出し、悪役令嬢としての矜持を守らなければと必死に考えていた。
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「お嬢様、エンデです。ラスティ様をお連れいたしまし……」
「やっぱり無理ですわ!完璧な婚約破棄イベントなんて……!」
布を引き裂くような叫び声が開けた扉の隙間から飛び出してくる。
「婚約破棄、イベント……?」
エンデの横に控えるラスティが首を傾げると、エンデは大きく咳ばらいをし、ドアを強めに叩く。
「お、嬢、様!ラスティ様を連れてまいりました!入室してもよろしいでしょうか」
エンデの声にローゼリアは体をびくつかせると、ささっとベッドの中に体を隠した。
「……どうぞ」
小さく呟くと、二人はベッドの横まで足を進める。
「ローゼリア、体の加減はどうだ」
ラスティが冷たく言い放つと、ローゼリアは少し安心しながらも、現実を思い出し、落ち込む。
「……お気遣いいただきまして、ありがとうございます……」
気弱く声を放つと、ラスティは腑に落ちないといった様子で珍しく続けて声をかける。
「武闘大会での疲れ、とのことだが、どこか怪我をしたのではないか」
「いいえ……」
「女性が優勝することを想定しておらず、先人があのような褒賞を冗談で設けたという話だが、父上も母上も、そして周囲の人々も皆、君を王妃に、と望んでいる。もちろん君も異存はな……」
「ありますわ!」
咄嗟にベッドから飛び起き、反論すると、ラスティは目を見開き、言葉を失った。
「あっ、も、もうしわけございません……このようなみすぼらしい格好で……」
「いや、そのように弱った君の姿は初めて見たので驚いただけだ」
ラスティが視線を外すと、ローゼリアは布団を肩までかぶり、顔を埋めた。
「……今すぐに、というわけではないが、できれば早急に王妃教育を受けて欲しい。君の場合は必要がないほど優れていたので今までは控えていたが」
「いえ、出来ればもう少し、もう少し待っていただきたいのです。ラスティ様も私との婚約は本意ではございませんよね」
「……えっ、なんだいきなり……」
「だってこの婚約は私の一存で決まったようなものですもの、ねぇそうですわよね」
「あ、ああ、確かに、そうだが……」
「でしたらいっそ一度この婚約を見直してみてはいかがですか、もしかしたらラスティ様のお眼鏡にかなう素敵なご令嬢が現れるかもしれませんし」
「な、何だそれは」
「そう、運命の出会いがある!あなたには私より心惹かれる素敵なヒロインとの出会いが待っているのです……!」
身を乗り出し、ラスティに顔を近づけると、エンデが割って入り、二人を引き裂く。
「ラスティ様。お嬢様はお疲れのご様子。今日のところはお引き取り下さいませ」
エンデはラスティに鋭い眼光を向ける。
「……わ、わかった……今日のところは失礼する」
顔を引きつらせながらラスティはそそくさと部屋を出ていく。
「お嬢様、少しばかり不敬ですよ。婚約破棄を申し出るなど」
「別に婚約破棄したいとは言っておりません。ラスティ様も私も互いの愛のない婚約ならば、もういっそ……と思ったのです」
「互いに、愛のない……?」
「そうよ、本当はヒロインと愛をはぐくんでから婚約破棄のイベントに移りたかったのですが、背に腹は代えられません……だって、私……ラスティ様に、別に興味がないんですもの……!!!!!」
ローゼリアがそう叫ぶと、扉の向こう側で物音がした。
エンデはため息をつき「お嬢様、もう一度高らかにお願いいたします」と呟く。
ローゼリアは不思議に思いながらも、再び叫んだ。
「ラスティ様のことなんか、別に好きでも何でもありませんものーーーーー!!!!!」




