あなたに絶対勝って見せますわ!
武闘大会当日。控室で深呼吸すると、ローゼリアは剣をじっと見つめる。
これはおそらく悪役令嬢ものアニメなら2話、もうすでにヒロインと王子は出会っている時期。ぶっちゃけもう手遅れ感はある。
しかし、いまならギリ間に合う。自分なら間に合わせる。そのためには今日必ず勝たねばならない。たとえどんな強敵であろうとも
「ローゼリア様、お腹空いてないですか?」
「だ、大丈夫よアイレリア。もう食べ物はいらないわ」
緊張するローゼリアをよそに、アイレリアは控室に入りきらないほどの食料を持ち込んで自分で食べていた。
(……どうやったらこの子とラスティ様を恋仲にさせることができるのかしら……)
アイレリアは色気より食い気といった様子で、ラスティ様どころか、クラスの男子にも興味を示す様子は見えなかった。
(まぁ、ヒロインが恋愛に興味なくとも、王子様が一方的にヒロインに思いを寄せる、なんてシチュエーションもありますからね)
深呼吸がため息に変わると、アイレリアは首を傾げる。
「お嬢様、お加減がお悪いのであれば、早めにご辞退なされてはいかがですか」
聞きなれた声に顔を上げる。
「……エンデ、あなた、なぜこんな所に」
エンデは制服ではなく、白い騎士服を着ていた。その装いは王子のように麗しく、ローゼリアは時が止まった思いがした。
「お嬢様?聞いているのですか」
「はっ……!エ、エンデ。あなた、何故そんな恰好をしているの」
「そんな恰好、って……お嬢様、あなたと同じ格好じゃありませんか。今日は目の調子がよろしくないようですね。参加辞退してはいかがですか」
ローゼリアもエンデと同じ、白い騎士服を着ていた。何度も見比べて現実を確認すると、猛烈な速度で後退りする。
「ままままさかあなたも武闘大会に!?」
「まさかも何も、私は最初から選手ですよ」
「あなた、ラスティ様に何用があって!?」
「何用、って……別に、二学年の代表になっただけですが」
「代表!?エンデが!?」
「でもまぁ、お嬢様を優勝させない、という目的が出来たので、今となっては選ばれてありがたかったですが」
エンデの実力はローゼリアが一番よく知っていた。使用人とはいえ、幼少期からローゼリアと共に同じ教育を受けており、剣術も魔術も全てエンデは優秀で、ローゼリアはエンデに勝てた例がなかった。
(けど……エンデを越えなければ、私の理想にはたどり着けない……!)
激しく歯ぎしりをするも、エンデはそれすらも愉快そうに笑う。
ローゼリアは絶望に打ちひしがれていた。
「ローゼリア様?」
持ってきた食料を食べつくしたアイレリアが間に割って入る。
その時、ローゼリアの脳裏を、この間の出来事がよぎる。
(そうだわ……この子の力を借りれば)
「アイレリア、あなたの力を貸して!」
ローゼリアはアイレリアの両手を掬い上げるように握った。




