吾輩は猫である。みられる。
さて、話を戻そう。
我輩はいまだにこの長靴の中である。
……うむ。
先ほどご主人に見つかった。
そして現在――
庭の隅に置かれている。
理由は簡単である。
人間がこう言ったからだ。
「ちょっと外で反省しようか」
我輩、今
庭に放置されている。
最悪である。
しかし。
ここで問題が一つある。
我輩の縄張りは――
中山田地区三丁目である。
つまり。
ここは
猫の通り道。
……。
……。
……。
ザッ。
足音。
我輩の耳が動く。
来た。
これは――
猫の足音。
現れたのは
三毛猫。
この辺りでハバを効かせる猫力団、
猫口組系指定猫力団肉球会の女ボス。
つむぎである。
つむぎは立ち止まり。
長靴を見る。
そして。
我輩の顔を見る。
沈黙。
我輩
「……」
つむぎ
「……」
天の声
「気まずいね」
黙れ。
つむぎ
「……何それ」
やめろ。
聞くな。
聞かないでくれ。
つむぎ
「新しい遊び?」
違う。
事故である。
完全なる事故である。
つむぎ
「……ぶふっ」
我慢、しなくていいんだよ? 余計にクルから。
つむぎ
「おはぎ呼んでくる」
我輩
「Noーー! ね? やめて? やめてあげて?」
また足音。
トトト。
現れたのは
白キジトラ。
肉球会のアイドル、おはぎ。
我輩、背筋が凍る。
おはぎ。
長靴を見る。
我輩を見る。
沈黙。
我輩
「……」
おはぎ
「……」
天の声
「好きな子だね」
やめろ。
今それ言うな。
おはぎ
「……ミケ、何してるにゃ?」
やめて。
名前呼ばないで。
今この姿で
名前呼ばないで。
つむぎ
「ミケ、ぶふっ。かっこいいな。新しいファッションか?」
違う。
これは違う。
これは
新しい戦術。
そう。
これは――
迷彩である。
おはぎ
「なんで、長靴にはいってるにゃ?」
うむ。
長靴である。
しかし鮮やかな黄色である。
つむぎ
「顔出てるけど」
やめろ。
そこを突くな。
おはぎ
「か、かっこいいのにゃ!」
……。
……。
……。
かっこいい?
天の声
「気を遣ってくれたみたいね」
やめろ。
まとめるな。
二匹の視線。
我輩。
みにょ〜んパコ。
抜けない。
沈黙。
つむぎ
「……ミケ、変わった趣味だな」
違う!!
それだけは違う!!
おはぎ
「頑張って生きるにゃ……」
やめろ。
励ますな。
その励まし
完全に負けた人へのやつ。
二匹は去っていった。
静寂。
天の声
「社会的に死んだね」
……。
……。
……。
我輩は猫である。
そして今――
縄張りで一番恥ずかしい猫である。
みにょ〜んパコ。
抜けない。
おわり。
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