28話
ルイとリョウガの初陣から2ヶ月が経った—
この2ヶ月のあいだ、ルイたちは毎日のルーティンをしっかりとこなしていた。
ガリュウとリョウガは仕事へ行き、ルイは森に入り壁のスイッチを探して、サナ達は家で留守番をしながら体力作りをする。
そして午後からはガリュウ、リョウガ、ルイの3人で特訓し夕方以降は魔物狩り。
これを2ヶ月間繰り返していたことでルイとリョウガの戦闘力は大幅にアップしていた。
魔物は初陣のゴブリンから始まり、ラーウスウルフ、アルブスラビット、ミノタウロス、リザードマン。
ルイとリョウガは生まれて初めて見る魔物ばかりで、戦闘になるたびガリュウに魔物のことを教えてもらいながら戦ってきた。
様々な魔物を倒して分かったことは、魔物の強さによって魔石の大きさが変わるということだ。
ゴブリンやアルブスラビットは個体としての強さはあまりなく魔石も小さかった。そのため弱い個体は群れで行動していることが多い。
アルブスラビットは少なくとも10頭前後で群れて行動しているため、群れに出くわした時には素早く討伐するのだ。
反対にミノタウロスやリザードマンは単体で行動していて、群れることはないそう。
1体の戦闘能力が高いため群れる必要がないのだろう。その分魔石の大きさも違った。ゴブリンやアルブスラビットの魔石が小指の爪ほどの大きさなのに対し、ルイの拳一つ分ほどの大きさの魔石が出たときには、ルイもリョウガもとてもびっくりしたのだ。
そのためミノタウロスやリザードマンと出くわした時は、いつもガリュウが助けに入っていた。
最近になってやっと、ルイとリョウガ2人がかりで相手をして倒せるようになったのだ。
「グゥオァッ」
ドォン—
「「はぁ・・・はぁ・・・」」
ルイとリョウガが息を切らして見つめる先に、1体のミノタウロスが倒れている。
そしてミノタウロスが砂になり消えたところにルイの拳ほどの魔石が転がっていた。
「よし!俺とリョウガ2人でなら倒せるようになってきたなっ!」
「ああ、でもまだまだだ!俺は1人で倒せるよーになりてー!」
「俺もだっ!もっといっぱい倒して、1人で戦えるようになるぞっ!勝負だっ、リョウガ!」
「ぜってー負けねー」
ミノタウロスの魔石を拾いながら、ルイとリョウガが張り合っていると少し離れたところで見守っていたガリュウが近づいてくる。
「ついこの間までは俺の助けなしじゃ倒せなかったのに、お前たちは凄いな。もうすぐ1人でも倒せるようになるだろう。何度も言うが油断は禁物だけどな」
「父ちゃんっ!次にミノタウロスかリザードマンがいたら俺1人で戦ってみたいっ!」
「ずりーぞルイ!俺もだ!俺も1人で戦う」
「分かったから落ち着けー。じゃあ次に大きいのに出会ったらルイ、そして次がリョウガな」
「やったー!!!」
「っし!」
(この2ヶ月でほんと、強くなったな。ルイとリョウガが2人で競い合ってるのがいい刺激になってるんだろう)
1人で戦う許可を得たことを喜び、どんな戦い方をしようかと2人で話し合っているルイとリョウガを、ガリュウは優しい目で見つめる。
(2人は強くなった。・・・もしボビー達と戦闘になったとしても2人なら戦えるだろう。あとは向こう側に繋がるスイッチを見つけるだけなんだが・・・)
この2ヶ月間、ルイは毎日捨てられた穴の近くでスイッチを探していた。
・・・しかし成果はない。
一向に、向こう側へ繋がるスイッチを見つけられないでいたのだ。
周辺の壁は全て調べ尽くした。
これ以上どこを探せばいいのか、闇雲に探して本当に見つかるのか・・・ルイたちは八方塞がりな状態に直面していたのだ。
「っ!!!なんかくるぞ!」
ルイの声に、すぐさまガリュウとリョウガが体勢を整える。
2ヶ月の特訓でルイの五感はさらに研ぎ澄まされ、ガリュウよりも気配の察知が上手くなっていたのだ。
ガサガサッ—
ビュン—
「うおっ」
茂みから何かが飛び出してきてルイのお腹にぶつかった。
警戒していたルイだがぶつかってきたものが速すぎて対応できなかった。
「トカゲ・・・?」
衝撃で少しヨロけたルイだが、すぐに立て直し自分とぶつかった後に床に転がっている物体を見る。
トカゲのようなツルツルした皮膚に背中から羽が生えている。
ルイの両手で収まりそうなその小さな体からは血が流れ、背中に付いているその羽もボロボロで折れ曲がっている。
「大丈夫かっ?」
『ギュゥ・・・』
「ルイっ!」
「おいっ!」
ルイは目の前で横たわる痛々しい姿に、とっさに両手で包み込み持ち上げた。
持ち上げる時に痛そうなうめき声を出し、チラリとルイの方を見たが抵抗することなく手のひらの上で横たわっている。
「そいつ魔物だろ!?なんで助けてんだよっ!」
「ルイ、危ないからソイツを戻すんだ。・・・小さいやつだが俺も見たことのない魔物だ・・・」
「・・・っでもこいつ、弱ってる!」
「他の魔物に攻撃されたのかもな・・・こんなに小さいんじゃな」
「・・・・・・父ちゃん・・・こいつ連れて帰りたい」
「なに言ってんだよ!バカルイ!」
「ルイ、それはムリだ。それに魔物はスラムには入れない。知ってるだろう」
ガリュウとリョウガが言っていることは最もだ。
しかし、ルイの手のひらにいる今にも消えてしまいそうな小さな命をルイは助けたいと思った。
なぜそう思ったのかはルイにも分からなかった。
諦めきれず、もう一度ガリュウを説得しようとしたそのとき—
「っ!やばいぞっ!!!デカい気配が・・・じゅうっ!?っ逃げねーとっ!」
「っ!なんだこの数は・・・!ルイ、ガリュウ!すぐに逃げるぞ!」
「っああ」
ガリュウを先頭に、リョウガ、ルイと続き、家の方向に向かって走り出す。
(この気配はリザードマン・・・リザードマンが群れで行動してるってことか?どうなってるんだ)
先頭を走りながら後ろの気配を探るガリュウ。
ルイが早く気付いたおかげで、リザードマンとの距離はかなり離れている。
とにかくスラムまで逃げ切ることだけを考える。
しばらく走ったところで森の端が見え、ガリュウたちの家も見えてきた。
ガリュウは最後までスピードを緩めることなく、家の裏まで走り切った。
スラムに入れば魔物は入ってこれない。
「ハァッ・・・ハァ・・・2人とも、大丈夫か?」
「・・・ハァッ・・・ッああ・・・」
「はぁ・・・はぁっ・・・大丈夫だっ!」
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