26話
「だからといって魔石を集めればここを出られる・・・なんて甘い話なわけがないだろ。・・・魔石ならとっくに集めた・・・外に出て換金すれば十分暮らしていける金になるだろう。だが、母さんとお前達を連れて抜け出す手段が見つからなかったんだ・・・っ・・・俺がモタモタしている間にハンナが死んじまって・・・そこからはこのスラムで、毎日食う為に生きていたんだ。外にでるなんて希望・・・とっくに忘れてたんだよ」
「・・・っ・・・俺たちのせいじゃねーかよ。俺とカンナがいなきゃ、おやじ1人ならとっくにこのスラムからっ、外に逃げられたんじゃねーのかよっ!」
「確かに1人なら逃げられたのかもしれない・・・でも・・・お前たちが一緒じゃないと意味がないだろ!」
「そんなの・・・俺たちはおやじの重荷でしかねーだろっ・・・っ」
「リョウガっ!!!」
「っ!!!」
ガリュウとリョウガのやり取りを見守っていたルイが突然声を上げた。
「ガリュウさんが何を大事にしてるのか・・・わかんねーのか?」
「・・・でも俺たちのせいで・・・」
「じゃあお前は、今までゴミ山で働いてたことを父ちゃんやカンナのせいだって思ってたんだな」
「なんだとっ!そんなこと思うわけねーだろ!?」
「・・・同じだろ!父ちゃんだってお前らのせいだなんて思ってないだろっ!お前が勝手にっ、父ちゃんの気持ちを決めんじゃねー!」
「・・・っ・・・!」
「リョウガ・・・俺はお前とカンナのことを重荷だなんて思ったこともないし、これから思うこともない。むしろ逆なんだよ・・・・・・お前たちが俺の生きる理由なんだ・・・2人がいなきゃ、俺はとっくにこの世に絶望して・・・死んでた」
「くっ・・・うぅ・・・」
トントン—
ガリュウがそっとリョウガを抱きしめる。
しばらくして、冷静になったリョウガはみっともなく泣いてしまったことに恥ずかしくなりガリュウから離れる。
「もう少し抱きしめさせてくれてもよかったのに」
「・・・っるっせー」
「ハハッ・・・ルイ、ありがとな。」
「おうっ!にひひっ・・・って父ちゃん、どうやってここを出るか分かんねーってことか?」
「・・・そうだ、ここを出ると決めて訓練までしているのにいい方法がなくてな。悪いな・・・」
「そうじゃねー!俺がここに捨てられたって話はしただろっ。ここを出るなら・・・そこからしかないだろっ!」
「・・・?正規のルートからではなくても・・・門から入ってきたんだろう?どういう経緯で門を潜り抜けられたのかは分からないが、ボビー達の家の中に門があるんだ・・・そこを見つからずに通るのは至難の業だ」
「っちげーよ!俺が来たのは別のとこからだ!開け方はまだ分かんねーけど、壁の何処かの・・・スイッチを押すと穴が開くんだっ!そこからなら出られるだろ!」
「なっ!?そんな方法が・・・?それなら確かに、上手くいくかもしれないな・・・」
「だろっ?だからそこの場所に行ってスイッチの場所を探すんだっ!」
「・・・その場所はルイしか知らないんだな?」
ルイが捨てられた日、ボギーとボミーが来たので咄嗟に隠れたことを思い出した。
「あー・・・でもあの日は、ボギーとボミーが見張りをしてて木の上に隠れたんだよなー」
「そうか・・・見張りがいることを考えたら、みんなで行ってスイッチの場所を探すのは危険だな・・・人数が増えれば、それだけ気配も多くなるからな」
「俺が探してくるよ!」
「・・・・・・それしかないか」
「な・・・ルイだけで行くなんてあぶねーだろ」
ルイが1人で行く、という流れになり咄嗟にリョウガが口を挟む。
「俺、足速いし大丈夫だぞ!」
「んな問題じゃねー」
「さっきの事もだが、ルイは五感が鋭い。見張りのやつから逃げられたこともそうだろう。なにより俺とリョウガじゃ、場所を教えてもらっても無闇に探すだけになる。穴が空いているところを見たのはルイだけだからな」
「そーだけどよ・・・」
「リョウガ!心配してくれてありがとな!俺は木の上に隠れながら行くから大丈夫だっ!」
「っ見つかんじゃねーぞ」
「おうっ!」
ガリュウはリョウガと話しているルイを見る。
ルイが来て、外に戻ると聞いて、みんなで着いていくと決めて・・・。
ルイがスラムに来てから、停滞していた時間が一気に動き始めているのを感じていた。
「それじゃあ、明日から仕事は俺とリョウガ、スイッチ探しはルイ、の二手に別れよう。そしてお昼になったらここで合流して訓練・・・それでどうだ?」
「おうっ!賛成だっ!」
「ああ」
「話がまとまったところで・・・左方向から・・・くるぞ」
「「!!!」」
ガリュウの言葉で2人とも左を向く。
ガサガサ—
そして先ほどと同じく2体のゴブリンが歩いてきていたのだ。
「・・・じゃ、お前らが戦ってみるか。ほらっ」
「わっ!」
「っぶねー」
ガリュウが先ほど倒したゴブリンから奪った刀を2人に投げる。
「お前たちの初陣だぞ」
リョウガとルイ。
この日2人は、生まれて初めて魔物と対峙するのであった—
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