25話
沈みかけていた日は完全に沈み、森の中は真っ暗闇だ。
ヒュー
カサカサ
木々の隙間を通り抜ける風と、葉っぱが擦れあう音しか聞こえない。
暗闇に包まれた森の中の葉っぱの影に3人が隠れている。物音を立てないよう、相手に悟られないようにと気配の消し方をガリュウから学んでいる最中だ。
「気配を消すときは自分の存在感を極限まで無くすんだ。いまこの空間で感じる存在はなんだ?」
「・・・あ?俺たちだろ?」
「ルイはどう思う?」
ガリュウの問いかけに目を閉じ、辺りの気配を探してみる。
「・・・葉っぱが揺れてる・・・鳥の鳴き声・・・フクロウも鳴いてるな・・・あ!あっちの方で何か動いたぞ!」
閉じていた目を開き右方向を指差す。
「凄いな・・・初めてでそこまで感じられるとはな。気配を感じ取るのが上手いやつは、五感が鋭いか・・・それか死線を乗り越えるような経験をしたやつだ。・・・ルイ、お前は両方だろうな」
「両方ってなんだよ!死線を乗り越えるような経験って・・・ルイ、お前は急に俺の前に現れたな。あの日サナと一緒にいてサナが泣いてて・・・なんだコイツって思った。でも今では一緒に暮らして、ずっと一緒にいて、いいやつだって分かって・・・俺の大事な友達で・・・大事な家族だ。・・・でもお前がなんでスラムに来たのかなんて聞いたことなかった・・・おやじは知ってんのかよ?」
「ああ、ルイが外から来たことはすぐに分かった。外から来た者とスラムにいる者たちではやはり違いがあるからな・・・でもそれをルイに告げたことはなかった。俺もルイからなぜスラムに来ることになったのか、話を聞いたのは最近だ」
「リョウガ・・・ちゃんと話してなくてごめんなっ!俺はな・・・ボビーたちが探してる・・・侵入者なんだ。ガリュウさんはそれを分かってて、匿ってくれてたんだ。」
「っ!!!」
生まれてすぐ教会に捨てられていて、教会で育ったこと。ガイ、ジンという仲間といつも一緒にいたこと、ある日森で突然襲われたこと、仲間がいなくなったこと、そしてここ、壁の向こう側に捨てられてしまったこと。
ルイは今まであったことをリョウガにすべて話した。
「そうか・・・お前はそんな大変な思いをしてたんだな・・・俺はなにも知らねーのに、お前について行きたいなんて言って・・・」
「何言ってんだよ!リョウガが一緒に行きたいって言ってくれて・・・嬉しかったんだぞ。俺・・・大事な仲間も、大事な場所も・・・全部あいつらに奪われて・・・もう俺には何もないって思ってたんだよ。・・・でもサナに会って、父ちゃん、リョウガ、みんなと家族になれて・・・・・・ほんとに嬉しかったんだ・・・。だから一緒に向こう側に帰りたいってのは俺のワガママだ!俺はお前たちも一緒じゃなきゃ嫌だっ!」
「っ・・・しゃあーねーな。お前のワガママに付き合ってやるよ!・・・俺らは家族だからな」
「おうっ!・・・にひひっ」
「ルイ、お前は俺たちの大事な家族だ。お前のことは俺が守ってやる」
「っ・・・っうん・・・ずびっ」
「っ!静かに。・・・魔物が来たぞ・・・」
「「っ!!!」」
先ほど、ルイが気配を感じたところから何かが向かってきている。
ガサッ—
「「っっ!」」
右側の茂みから2つの影が出てきたので、隠れながらそっと様子を窺い何が出てきたのか確かめる。
緑色の肌に尖った耳、剥き出しになった歯、そして手には武器を持ったゴブリンと呼ばれる魔物が2体、キョロキョロと辺りを見回しながら歩いている。
ふとルイが隣のリョウガを見ると、微かに体が震えていることに気がついた。
そして、自分自身も震えていることに気がついたのだ。
(・・・ほんとに魔物だ・・・)
2足で歩いているが、明らかに人間とは違う存在であった。
初めてみる魔物にリョウガもルイも震える体を止められず、だが魔物からは目を離せないままじっと耐えていた。
「・・・あれはゴブリンだ。基本的に2.3体で行動している。どこかに集落を作ってそこで生活しているはずだ。人数が増えると厄介だが、2体ならなんの問題もない。・・・よく見ていろ」
そう言ってガリュウがそっとゴブリンへと近づいていく。
その手には武器などない。
そして足元に落ちている石を何個か拾ったあと、ゴブリン達がいる方へ投げたのだ。
ゴッ!ゴッ!
「ギャッ!」「ギャ!」
2つ投げた石は見事に2体のゴブリンの後頭部に命中し、石が当たったゴブリン達は地面に倒れ込んでいる。
そしてガリュウはゴブリン達が持っていた刀を素早く拾い、立ちあがろうとしていたゴブリンをその刀で切りつけた。
「すげー!なっ?リョウガ!」
「・・・っああ」
ガリュウはゴブリン2体を一瞬で倒してしまったのだ。
その凄さに、ルイもリョウガも釘付けだ。
ガリュウが倒したゴブリンは、倒れたまま体が少しずつ砂になって消えていっていた。
そうして消えたゴブリンの場所にコロンと小指の爪くらいの大きさの石ころのようなものが転がった。
その石ころをガリュウが拾いリョウガとルイの元へ戻ってくる。
「これがゴブリンを倒して出た『魔石』だ。」
「これっ!仕事の時に集めてる石に似てねーか?」
「いつも集めてる石ころと同じじゃねーか」
「そうだ、いつも集めているのも魔石だ。魔物を倒して出るこの魔石は売れるからな。ボビー達はそれを外に売って稼いでいるんだ。強い魔物の魔石だと高く売れるからな。ゴブリンの魔石は大体1つ5モネーだ、この魔石1つでさっき食べたパンが5つ買えるくらいだろう」
いつもゴミ山で集めている石は『魔石』だったのだ。ボビー達はスラムの者に魔石集めをさせ、現物を支給し、その魔石を売ることで稼いでいるのだ。
スラムの人間はこの石が魔石だなんて知らないしどんな価値があるものなのかも知らない。
ただ、その日一日を食いつなぐためだけに石を集めて食料を手に入れているのだから。
ボビー達はこの魔石が価値のあるものだと知られるわけにはいかないだろうし、知らせるつもりもないだろう。
その価値を知ってしまえば、その魔石で外に出られるかもしれないと思う者が続出するだろう。
その為に森の出入り口にはしっかりと魔物避けを置き、スラムの人間が魔物の存在を知ることがないようにしているのだ。
「俺たちは何も知らずに・・・バカみたいにゴミ山でせっせと魔石を集めてるってことかよっ・・・」
「・・・ここで食っていくためだ」
「・・・っでもおやじは知ってたんだろ?それなら魔石を集めて俺たちを連れて外に出られたんじゃないのか!?」
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