20話
「・・・上を目指す・・・?」
「ガイとジンと約束してたんだっ!18歳になったらインスペルス(入れ替え戦)に出て上を目指すって!今は1人になっちまったけど・・・それでも俺は、1人でも上を目指すんだっ!あいつらに会うために・・・!」
「・・・・・・生半可な覚悟じゃ、絶対に叶わないぞ・・・」
「おうっ!大丈夫だっ!」
(まずお前がいまいるところはスラムで・・・ここから出ることがどれだけ大変なことなのかわかっていないんだ・・・)
今のルイにその話をしても無駄だろう、と思いガリュウは口を出すのをやめた。
それでも何だか・・・ルイの話を聞いてワクワクしている自分がいるのだ。
ルイなら本当に・・・
このスラムから出て高みを目指していきそうな・・・
そんな予感めいたものを感じていた。
———
初めて魔法の存在を知った日のことを思い返しながら、次々にステーキを焼いていく。
1人1枚ずつ食べれるように6枚ステーキを交換した。
お皿にはすでに焼き上がったステーキが先に盛られている。
そうして最後のステーキが焼き上がり、しっかりと小さめにカットした後に盛り付けて完成だ。
机に並んだステーキは美味しそうな湯気が立っていて、匂いだけでヨダレが溢れてくる。
「みんな席についたな・・・ルイとリョウガのお陰でこんなご馳走が食べられるんだ。ルイ、リョウガ、ありがとう」
「ルイ兄、リョウ兄、ありがとー!」
「ありがとう〜!」
「・・・・・・」
「・・・ああ」
「いいってことよーっ!それじゃあ・・・みんなで食べようぜー!・・・いただきまーすっ!」
「「「「いただきます(まーす!)」」」」
まず一切れ、みんなが口に運ぶ・・・
・・・・・・!!!
「うっ・・・めぇー!」
「・・・ガブガブ・・・っゴクン・・・ガブガブ・・・」
「このステーキっていうの、美味しいー!」
「口の中でとほけるよ〜!」
「・・・っうまいな・・・リョウガ、もっとゆっくり食べろよ」
みんなが幸せそうに食べている。
1枚20点を払ってでも、今日はステーキにして良かった。
みんなで笑って、またステーキを食べられるように明日からまた頑張ろう・・・とルイは思ったのだった。
カリナとサンには1枚が大きかったのか、半分ほど食べたところでお腹がいっぱいになった。
その残りをルイとリョウガが食べたところで、2人ともやっとお腹が満たされたのだ。
サナもステーキを食べれば、何か反応があるかもしれない・・・
と思っていたルイだが、今日も特に何の反応もなく黙々とご飯を口に運んでいるだけだったのだ。
———
カタ—
みんなが寝静まった深夜・・・。
何か物音が聞こえたような気がして、目が覚めた。
(・・・ん?サナ・・・?)
サナのベッドが空になっていることに気づき、慌ててベッドから降りる。
(・・・こんな夜中にどこ行ったんだ?・・・トイレか・・・?)
トイレだとしたら後をついて行くのも悪いと思い、少し待っていようかと思ったが、なんだか胸騒ぎがする。
その胸騒ぎを信じて、サナが出ていった後を追いかけることにした。
家から出て反対側、森の方へと向かったようだ。
(・・・この方向はっ・・・)
サナが向かっていたのは・・・
サナのお母さんが眠っている場所だった。
お墓の前に座り込み、何か話している様子だった。
サナに悪いと思ったけれど胸騒ぎがどんどん大きくなるため、そっと背後から近づいて様子を窺う。
「・・・今日ね・・・生まれて初めてステーキ・・・っていうものを食べたの・・・
っ今まで食べた中で・・・1番美味しくてっ・・・
でもっ・・・こんなに美味しいものをっ・・・
おかあさんはっ・・・もう食べられないんだって・・・
思ったら・・・ツラくて・・・っふっ・・・」
サナの震える背中を見つめる。
サナのためにと思ってしたことが、こんな風に裏目に出るなんて。
・・・ショックだった。
少し後ろで立っているルイは、震える拳をギュッと握りしめたのだ・・・。
「・・・っやっぱり・・・
おかあさんのところに行ってもいい?・・・もう頑張れないよ・・・これからっどうしたらいいのか・・・全然分からないのっ!」
サナは近くにあった大きめの石を持ち上げ、頭の上に振り落とそうとしていた。
「・・・っやめろっ!」
すぐに気付いたルイが、その石を取り上げる。
「っ返してよっ!!!」
サナが振り返り、見たこともない形相でルイに飛びかかろうとしている。
「イヤだっ!返さないっ!」
「・・・っどうしてっ!?
・・・死なせてよ・・・
もう楽にさせてよぉ・・・っ」
ルイから石を取り返すことは不可能だと思ったのか、その場に泣き崩れてしまったサナ。
・・・ショックだった。
サナに死なせてと言われたことがルイの心に深く突き刺さった。
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