17話
「・・・すみません・・・いつもは薬1つとパンを買えるくらいしか点数を稼げていなくて・・・他に何があるのか分からないんです・・・」
「あぁ、まず薬が20点な。あとパンは何個買うんだ?」
「4つです」
「じゃあ5個買えよ、点数は同じだからな。これで24点だ。あと52点・・・食べ物がいいのか?」
「は、はい!食べ物でお願いします!あの・・・今の薬よりよく効く薬はありますか・・・?」
「ああ?よく効く薬だぁー?」
「この白いのが病気の薬で〜、赤いのが食べすぎたとき〜、黄色が飲みすぎたとき〜、青が眠れないとき〜、それでこの黒いのが〜重い病気のとき〜」
「・・・だそうだ。でもこの黒いの・・・高ぇぞ、えーと・・・60点だ」
「・・・!!!」
サナは目の前に紙があるのに見ようとしていない。
(・・・字が読めないのか・・・)
サナが困った顔をしていた理由に思い当たったルイ。
このスラムで文字を読み書きできる者がどれほどいるだろうか。
日中は生活のために、身を粉にして働いているのだ。
当然文字を学ぶ機会はない。
幸い、目の前にいる2人はサナが聞いたことにも親切に答えてくれている。
これが周りにいる他の下っ端ならそうはいかなかった。
間違いなく目をつけられ、数を誤魔化されて、搾取されていたことだろう。
今日ルイがいるこのタイミングでこの2人の下っ端に当たったことは幸運だったのだ。
「サナ・・・60点の薬にしろよ。そしたら16点余るんだから、それで他の食料も買えるだろ」
「・・・いいの?」
「ああっ!」
迷っていそうなサナに小さな声で助言する。
(・・・俺が字を読めることを、こいつらに知られちゃいけない気がする・・・)
「あの・・・60点の薬とパン5つと・・・残りの点数で日持ちする食べ物をお願いします」
「はいよ。この黒いのが薬な、そんでパンが5個、干し肉2個、スープ1個で76点。持ってけ。」
「あ、ありがとうございます」
男から受け取った薬と食料を大事に抱え、家への道を歩いて帰る。
帰りも来る時同様、喋らず黙々と歩いていく。
ようやくサナの家が見えてきて中に入ろうとした時に後ろから声がかかった。
「サナ!今日もお疲れさん。帰ってくるのがいつもより遅かったな・・・大丈夫だったのか?」
「ガリュウさん、お疲れ様です。それが・・・ルイが凄く頑張ってくれてっ!おかあさんにいいお薬を買ってあげられたんですっ!」
「そうか・・・よかったな!ルイもお疲れさん。
それじゃ、お祝いにうちで一緒に晩ご飯を食べないか?サンはまだうちにいるから、お前達を誘いにきたんだ」
「いいんですか?・・・ありがとうございます。おかあさんにご飯と薬をあげてから、お邪魔しますね」
「おう!待ってるなー」
そう言って、ガリュウが戻って行ったのはサナの家の前にある家だったのだ。
「ガリュウさんの家は目の前なのか!」
「そうなの。だからいつも、私とサンのことも気にかけてくれてて・・・お母さんが元気になって、私も大きくなったら恩返しがしたいんだ」
「そっか!・・・ガリュウさんていい人だなっ!」
「うんっ!」
「おかあさん、ただいまー」
・・・・・・
「おかあさん・・・?
・・・えっ・・・?」
いつも仕事を終えて家に帰ってくると弱々しく、でも「・・・おかえり」と温かく出迎えてくれる声が返ってこなかった。
「・・・な・・・なんで・・・っ?
おかあさん・・・?
今日はねっ、高い薬が手に入ったんだよっ・・・っ
これ飲んでっ・・・うっ・・・
元気になってよぉー
ヤダ・・・おかあさん・・・ヤダよ・・・
置いていかないで・・・っ」
穏やかな顔で、ベッドで眠る母親の横でサナが泣き崩れている。
少し離れたところでその様子を見ていたルイの頬にもいつの間にか、雫が流れてくる。
こんなちっぽけな自分では・・・何もできない。
その悔しさと、歯痒さにただ唇を噛み締めることしか出来なかった。
最後まで読んでくださってありがとうございます✨
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