13話
「・・・ふふっ・・・お腹空いてるんだ。こっちおいで。」
サナに言われるまま家の中へと足を踏み入れる。
先ほど外の覗き穴から見ていた景色と変わりなかったが、足を踏み入れてみて改めてサナたちの貧困具合が想像出来てしまった。
奥に目をやるとさっき見た『お母さん』が安らかに眠っている。
ルイが『お母さん』を見ていることに気がついたサナがそっと話し始める。
「ついおいでって言っちゃったけど急にごめんね。」
「・・・いや」
「うちはおかあさんと私と弟の3人で暮らしてるの。・・・少し前におかあさんが病気になっちゃってね・・・また元気になって楽しく暮らせるように頑張ってるところなの!・・・っごめんね、急にこんな暗い話を聞かせちゃって。」
「そんなことないっ・・・病気のお母さんのために頑張ってるなんて凄いじゃんっ!俺なんていつも怒られてばっかりだし、迷惑だってかけてるし、ってなに言ってんだ・・・お前っほんと凄いよ!頑張ってるんだなっ!」
「・・・ふふ、ありがとう」
先ほどまでの疲れた顔とは違う、サナの年相応の微笑みにルイは一瞬惚けてしまう。
「・・・っ」
「お腹空いてるよね。今はこのパンしかないんだけど、よければ食べて」
「・・・いいのかっ?」
「うん。みんなもう食べてお腹いっぱいだから。余ってるやつだから食べてほしいな」
「!ありがとうっ!いただきますっ!」
・・・モグモグ・・・モグモグ・・・うっ・・・
「この水飲んで!」
「・・・っゴクゴク・・・ぷはぁー・・・ありがと!」
「ゆっくり食べてね」
「コクコク・・・モグモグ・・・ありあとー!・・・モグモグ・・・めっひゃおなはすひてたんらよ!・・・モグモグ」
「ふふ、すごくお腹空いてたんだね。よかった」
「・・・ゴックン・・・ごちそうさまでしたー!ほんとありがとなっ!あ、俺はルイっていうんだ!よろしくなっ!」
「私はサナ。よろしくね、ルイ」
「おうっ!ところでここってどこなんだ?」
「・・・?変なこと聞くんだね。ここはスラムって呼ばれてるところだよ。うちはスラムの入り口あたりだからここから奥に行くとずっとスラムの街並みがあるよ・・・知らなかったの?」
「・・・それがさー、さっきここに来たばっかりなんだよなっ!」
「・・・え、じゃあルイはどこから来たの?」
「ストラタスだっ!」
「!!!っ・・・凄いっルイは"外"からきたのね!」
「外・・・?」
「森の奥にある壁の向こうから来たんでしょ?」
「そうだなっ、さっきまではストラタスにいたのに・・・悪いやつに捕まって壁からこっち側に捨てられたんだっ・・・」
「そうなの!?・・・大変だったんだね・・・ここのスラムではストラタスのことを"天国"って呼んでる人もいるよ。それで反対がここのスラムのことで"地獄"って呼ばれてるんだ・・・。」
「・・・地獄・・・(ここがバンが言ってた地獄ってことか・・・?)」
「私は生まれた時からここにいるから、あんまり分からないんだけどね。・・・でも"天国"が本当にあるなら、おかあさんとサンを連れて行ってあげたいな・・・って思ってるんだ」
「そっか!・・・じゃあ、俺が戻る時にはサナもサナの家族も一緒に連れてってやるよ!」
「・・・!ほんと?・・・ふふ、ありがとうルイ。・・・そろそろ寝る?狭いけど私のベッド使っていいよ」
「でも俺がサナのベッドを使ったら、サナはどうすんだ?」
「私はサンと一緒に寝るから大丈夫だよ」
ベッドに入りしばらくするとサナの寝息が聞こえてきた。
布団にはところどころシミがついていて、穴もチラホラ開いている。
それでも右も左も分からない場所でこうして雨風を凌いで寝れることが有り難かった。
今日一日で色々なことが起こりすぎて、ルイはずっとここが現実なのか夢なのか朧げな世界にいるような気分だった。
(・・・今日サナに助けてもらってよかった・・・今度は俺がサナに恩返ししないとな!・・・いっしゅく・・・なんだっけ?ジンが前に言ってたんだけど・・・何とかの恩?・・・てやつ!ダメだ!思い出せねーっ!)
前にジンに聞いたことがある『一宿一飯の恩』を思い出そうとしたが、結局出てこなかったところで諦める。
しかしサナへの恩を返すことを心に決め、次第に重くなっていく瞼に抗うことなく深い眠りについたのだった。
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