10話
「さて、お別れの時間だな〜」
バンが軽い調子でルイに話しかける。
"お別れ"・・・あの開いた穴から壁の向こう側に
"捨てられる"ということだ。
(・・・これが最後のチャンスだろっ
...ここで逃げなきゃ後がないっ...逃げねーとっ...)
いまメイは壁の横にいて少し離れたところにいる。
そしてバンは近くにいるが、もしかしたら振り切れる可能性があるかもしれない。
今しかないと思ったルイは手を縛られたまま、体制を低くしてそこから瞬時に駆け出す。
ダッ—
タタタタッッ——
なるべく足音を立てず、でも素早く、できうる限りの速さで一気に森の中へと走り出す。
(とりあえず森に入って隠れながら逃げるっ!これしかねー!)
走り出してからは無我夢中で、後ろも振り返らずにただ前だけを見て走る。
(もっと速くッ・・・ハァッ...ハァッ...もっとっっ!)
しばらく走ったところで左手に大きな木が見えた。
一旦隠れて様子を見ようと、そこの木の陰に身を隠す。
(・・・・・・ハァッ・・・ハァッ・・・)
いつもならこれくらい走ったとしても全然疲れないのに、今は無駄に力が入っているからなのか息切れしている。
息遣いさえも外に出さないように、必死に息を潜め周りに目を凝らす。
(・・・・・・来るなっ・・・!)
・・・・・・・・・・・・
しばらく木の陰に隠れていたが2人が追ってきている様子はない。
(っっやったー!逃げられたっ!...とりあえず森を抜けて教会にもどらねーとっ!)
捕まってからはずっと緊張状態が続いていたが、今になってやっと一息つけそうだ。
木の幹に背中を預けゆっくりと体の力を抜く。
「そんな簡単に逃げれるわけないだろ〜?」
「っっっ!!!!!」
「最後の希望は堪能できたか〜?俺ってば優しいよな〜!ちゃんと希望を持たせてやったんだから〜」
バンの声が聞こえるが、姿が見当たらない。
その場に立って辺りを見回してみても、バンの姿はどこにも見つけられなかった。
「っどこだっ!」
「ここだよ〜」
上から声が聞こえる...。
急いで上を見上げると木の枝の上に立っている男が見える。
ルイはずっと神経を尖らせていたし、音にも気を配っていた。
それなのに全く気づけなかった・・・。
ヒュッ—
スタッ——
高さなんてまるで気にしないように、10mほど上の木の枝からパッと飛び降り、ルイのすぐ近くに降り立った。
(・・・ほとんど音がしなかった・・・なんでだ・・・?)
「ハハッ。なに不思議そうな顔してんだよ〜。お前ごときに逃げられると思った〜?甘い、甘い〜」
「うっ...クソー!」
「ハハッ、残念だったな〜。
・・・夢を見る時間は終わりだ。」
ドカッ—
「うわっ・・・!」
ドンッ!!
木から降りてきたバンに容赦なく蹴り飛ばされ、後ろにある巨大な木の幹に背中ごと打ちつけてしまう。
背中を打ちつけた衝撃で息が止まる。
「かっ・・・はっ!」
一撃目を合図に次々に殴る、蹴るの攻撃が繰り出される。
最初の一撃目の衝撃で身動きが取れないまま、二撃目、三撃目が飛んでくるが受け身も取れないまま攻撃をモロに食らってしまう。
ドカッ—
「お前みたいな〜」
ボカッ—
「苦労も知らずに」
バキッ—
「ぬくぬくと育ったやつが〜」
ドゴッ—
「1番嫌いなんだよ〜っ」
・・・ドゴォッー
「・・・っうっ、げほっ・・・、ごほっ・・・くっ・・・」
最後に一際強い蹴りをお腹に受け、ついに立っていられなくなりその場に蹲る。
顔を殴られ、体を蹴られ、口と左目の横からは血が流れている。
バンの圧倒的な強さに、抗うこともできず傷だらけになってしまった。
「・・・あ〜あ。我慢してたのにお前が逃げたりするから〜。ついイラついて、手加減できなかったわ〜」
軽い口調で喋ってはいるが、目の奥が全く笑っていない。
ルイで鬱憤ばらしをしているのだ。
「・・・ぐっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・だりぃから、早くさっきのところまで歩けよ〜」
グッ—
その場に座り込み地面を見て息を整えていたが、休むひまを与えてはくれない。
首元を引っ張って無理やり立たされ背中を押される。
満身創痍の体を引き摺りながら、これ以上暴力を振るわれないように足を進める。
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