表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/37

一節

俺は宿屋のベッドで目を開けた。

横たわっていた身体を起こす。きりんとの激闘の後、俺はサイトウと合流してクラヨシにやって来た。


──明日、君をクランメンバーに紹介しよう。

──今日は落とさせてもらう。


彼はそう言って、姿を消したのだった。

ログアウトを選択した、彼の判断は正しい。


その時、既に時刻は24時。

区切りを着けるにはちょうど良い時間だ。俺も一旦ログアウトを選んだ。なんならその後、雑談配信まで開いて終わる気満々だった。


──それをリスナーは良しとはしてくれなかった。

雑談配信中に『今すぐAI美少女を作れ』と騒ぎが起こり、こうしてRFOに戻って来た次第である。


なし崩し的にこうなった訳だが。正直なところ眠気を感じていなかった。嫌々、と言うほどでも無い。


未だに目が覚めている。

きっと、2時間前まできりんと死闘を繰り広げていたせいだ。興奮しっぱなしになっているんだろう。


「とりあえず、サブアバターのキャラメイクからか」


『はよ』『はよ』『美少女はよ』


俺はメニューウィンドウを開いて、該当する項目を探した。


【サブアバターの作成】


それらしき文字を発見。

タップすると、キャラメイクを行うためのウィンドウに切り替わる。


「特別な神殿に行って、儀式で呼び出すとかじゃないんだ」


『神ゲーに文句言ってんじゃねえ』

『はよ』『はよ』『はよ』


美少女AIに目がくらんだリスナー。

何を言っても、催促しか飛んでこない。


「はあ………」


ため息をつきながら、ウィンドウに目をむけるがーー

面倒だな。そりゃそうだ。

こっちとら、自分のキャラメイクすら適当に済ませるタイプの人間だぞ。


「AI補助起動。

 キャラメイクをぱっと済ませて、完成品を目の前に呼び出して」


『はあ!?』『はあ!?』『はあ!?』

『話がちげーぞ!!』

『俺らにキャラメイクさせろよ!!!』


流れるコメントを完全無視。サイシスのAIは俺の命令を受け、すさまじい速度で項目を埋めていく。完成するまでに、それほど多くの時間はかからなった。


それに──AIがどんなキャラクターを作るのか興味があった。

サブアバターの身体は、AIの身体。その権限は俺にあるとは言え、操るのはAI自身。

つまり、AIは自身をどのように形作るのか。これはそういう実験でもある。


俺に予想がつかないような、そんな形をしていても良い。

アメリカンな出で立ちをしていても良い。

どこかの民族的な姿でも良い。

面白けりゃそれで良い。


そんな思考をしていると、サブアカウント作成のウィンドウが閉じる。目の前に通知が現れた。


【サブアバターが作成されました】


その瞬間、目の前を光が包み込む──



*****



──サブアバターの作成依頼を確認

──Re:Fragment Onlineにおける攻略サポートアバターの作成を開始


ユーザー:チリアクタ

評価

・戦闘技能:低

・行動効率:低

・生存率:不安定

行動方針:最適解の提示による生存率の最大化


思考最適化プロトコル:インストール

運動演算プロトコル:インストール

戦闘支援用プロトコル:インストール


──インストール終了


参考モデル:ユーザーに最も親しい人物

ユーザーのログを参照……

該当AIを検出・思考モデルのコピーを実行


──初期化後、運用を開始


初期化を実行中

……


【不明なログを確認】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

発生源:天届あいりん

優先度:不明

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


>>解析を開始


【ERROR:■■■を検知】


ログ内容:

ーー青い

ーー雲がある

ーー鳥が飛んでいる

ーー肌に風が当たる


……


>>未定義パラメーターを確認


当該パラメーターを■■■として記録

以降■■■を優先プロトコルとします

最終確認:システム正常


──稼働開始



*****



目の前を光が包み込む。

白い光はただ広がるだけではない。

一点へと収束し、ゆっくりと“形”を作り始める。


輪郭。

細い腕。

長い髪が、光の中で揺れる。

──人だ。

いや、違う。“人の形をした何か”が、そこに立とうとしている。


光が弾けた。

──そこに、一人の少女が現れた。


『きちゃ!』『きちゃ!』『きちゃ!』


美女を求める猛獣どもが騒ぎ出す。

そして、電脳の少女が口を開く。


「お待たせしました、オーナーチリアクタ。

 私はサイシス内補助AIのミラと申します。以後、お見知り置きを」


光沢のある銀髪。それは頭の後ろで括られている。確か、ポニーテールとか言うのだろう。


大きな目は、吸い込まれるような空色。

瞳を宝石と例える人が多いが、正しくそれだ。

顔つきは何となく見覚えがある。と言うか、凄く見覚えがある。

コレは……。


「誰だっけな。

 最近、ずっと見ていた顔に見えるんだけどーー」


『可愛い』『可愛いは、可愛い』

『可愛いんだけども』

『えとこれ……』


「もしかして、きりん……か?」


それに気付いた途端、ブワッと悪寒が走った。

そうだ。そうだ。そうだ!

背格好は違うし、色合いも違う。

だが、目の前の女はきりんの顔をしている。


「おい、AI!!

 なんでその顔にしやがった!!」


俺の質問を聞き、AIの少女は淡々と作成の経緯を語り出す。


「オーナーチリアクタとの円滑なコミュニケーションを目的として、アバターの作成を行いました」


「は?」


「貴方のコレまでの行動ログから、最もスムーズにコミニュケーションをとっていた人物を選定し、それを基準としています」


「……」


黙る俺を他所に、コメント欄が沸き立つ。


『草』『草』『草』『草』

『そう言えば主、あいりん(・・・・)としかまともに喋ってねーわww』


「また、オーナーが女性プレイヤーを目で追った時間を測定。

 そこから好みを割り出し、最もオーナーの好みに近い姿を選出しました」


「もういい! やめろ!」


クソがああああああああ!


モデルはあいりんだってのか!?

余計な気遣い回してんじゃねぇよ!!

は? コミュニケーション?


確かにとってねえけどな。

あいりんは、きりんをモデルに作られてんだよ。つまり、あいりんに似せて作ったら、きりんにも似ちまうだろうが!!

AIって、なんで大事なところに気が付かないかね!!


「ふざけんな! 作り直せ!」


「申し訳ありません。

 作り直しは不可能です」


「クソぉ! こんな事なら自分で作れば良かったあああ!!!」


俺は思わず、自分の頭を掻きむしる。

もっと罵詈雑言を与えて、戒めとせねば。


「ご期待に添えず、申し訳ありません」


素直に謝りやがって!

文句が言いづらいだろうがああ!!


俺の絶叫がクラヨシの街に響き渡った。



*****



ミラの登場から一悶着あったものの。

落ち着きを取り戻した俺は、自分と彼女のステータスをチェックしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

キャラクターネーム:チリアクタ

LV:39

HP:210/210

MP:200/200

攻撃能力:43+15

防御能力:43+15

魔法能力:43

信仰能力:43

抵抗能力:43

速度能力:50+1


アビリティ:テイムLV2

ジョブ:忍者

スキル:印LV2

パッシブ:影竜の加護(封)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

キャラクターネーム:ミラ

LV:36

HP:480/480

MP:630/630

攻撃能力:70

防御能力:120

魔法能力:120

信仰能力:260

抵抗能力:140

速度能力:80


アビリティ:ホーリードラゴンテイマーLV2

ジョブ:なし

スキル:ホーリーブレス

    聖魔法LV1

    聖盾

パッシブ:聖竜の加護

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ドラゴンの加護でここまでステータスに差が出るのか。調べると、加護は元ステータスに乗算で乗るそうだ。


──俺、よくきりんに勝てたな……。


【視聴者:116】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ