80話 後始末
ドラゴンは魔核を残して消えたが、スライムは10数匹ほど残った。
かなりの数減ってるからもしかしたら全滅もあり得たかもしれない。
「死んだか。ドラゴンは毒に弱いのだな」
「どんな生物も毒には弱いと思いますけど」
「いや、思ってたよりあっけなく終わってしまったと感じてな。炎を手足のように扱うことが特徴、と見えた割に口から火を出すことしかしなかった」
確かに5000万ポイントのドラゴンにしてはこちらはあんまりポイントをかけずに倒せたな。ポイントがかかるからといって、その分強いわけじゃないのか?
いや、モンスターと闘うことが想定されていなかっただけだろうか。
奈那さんの攻撃で羽にはダメージ入ってたけど、胴体にはあんまりダメージ入ってなかった。上級スキルであれならもっと上のスキルを持っている必要がある。
探索者が毒を用意するのも限界があるし、普通なら倒すのは相当難しい筈だ。
「毒瓶のおかげか途中から火を吐くのもしなくなりましたからね。もしかしたら自分で吐いた火は操れたのかもしれません」
「ふむ。確かにその可能性はあるか。実証してみたいがドラゴンがいるダンジョンはまだない。ドラゴンをいずれ出したいと言っていた京都のダンジョンに期待するしかないか。キミはダンジョンにドラゴンを出す予定あるか?」
「ないですね。ドラゴンを設置するのにも、ドラゴンが動ける空間を作るのにもポイントがかかりすぎます。それより、さっさとこの場を離れましょう。ドラゴンが消えたことで人が集まってきたら面倒です」
「確かにそうだな。寧音達と合流しよう」
「スライムは……相性悪いもの同士で組んで死ぬまで闘っといて。これで数匹まで絞れるので、最後にまとめてやっときます。あとは眠らせたダンジョンマスターどうします?」
「もちろん連れて行く。大切なダンジョンマスターだからな」
まぁ置いていく意味ないよな。
せめてドラゴンを出した事情は聞きたいし、もし置いて行ってまたドラゴンを出されたら面倒だ。
どうやってポイントを稼いだのかわからないからないとは言い切れない。
「わかりました。連れて行きましょう」
スライムは……5匹まで減ってる。あとはもうスキルで倒そう。
一列に並んでもらって……
「“天刃風”」
残ったスライム達は全部消えた。
なぜだか奈那さんが残念そうな声を出している。
スライムが撒き散らした毒は残ってるけど、一応消えるまで近寄らないでくださいって残しておいた方がいいだろうか?
しばらく経てば消えるけど、それまでに下手に触られて死なれても困る。
看板だと町田のダンマスの仕業だとバレるかな。メモだと気づかれないかもしれない。ノート……はメモと変わんないか。
もう面倒だ。バレてもいいから看板でいいや。一応いつもの木製のじゃなくて標識みたいな金属製のにしよう。
【瓦礫や地面についている色のある液体は全て毒です。消えるまで触らないでください】
これでいいだろう。
このまま蓮見を拾って立ち去りたいが、ヘリコプターのカメラに映るかもしれない。もし映ったら困る。
「奈那さん、目眩しできるスキル持ってませんか?」
「あぁ、確かに見られる訳にはいかないな。水魔法スキルで霧を発生させられる。準備はいいか?」
「大丈夫です」
「“濃霧”」
その言葉と共に、辺りは霧で包まれた。
霧が消えない内に、そこら辺に眠らせておいた蓮見を拾って、隠遁者スキルを全員にかける。
ドラゴンの魔核をマジックバッグに詰め、急いでその場を離れた。スライムの魔核は数が多すぎるので放置だ。
念の為遠回りをして来た道を戻る。その時、俺がかけたスキルは俺から離れても効力が続くと判明した。これもバグでは?
他にもバグがまだまだありそう。暇な時に探してみるのもいいかもしれない。
あ、自衛隊のモノらしきヘリが飛んでる。あのまま居たら捕まってただろうし、さっさと離れておいてよかったな。
にしてもこのタイミングで来るとか、ドラゴンが倒されたと聞いて来たのか?それともたまたま倒された後になってしまっただけだろうか。
国民から対応が遅すぎるって責められそう。
当然何故ドラゴンが出現したのかって追求されるだろうが、どう収集をつけるつもりだろう。ダンジョンマスターの所為にするとして、そもそも府中ダンジョンのマスターは繰上ということになっている。
繰上は死んでいるらしいが、そのことを伏せて全部死んだ奴の所為にするのだろうか?それとも真犯人である蓮見の所為にするのか、あるいはダンジョン全ての所為にするのか。
せっかく人権を得たのにやっぱりダンジョンは排除しようって流れになるのは嫌だな。年明けたらもう外でモンスター出せなくなるのに。
仕方がないから事情を説明する動画を出しておこう。
ちなみに蓮見の扱いは蓮見から詳しく話を聞いてから決めるつもりだ。手に余るようだったら国に渡すし、国に渡す方が面倒になりそうなら全然見逃す。
しばらくこのまま歩いていると、車を停めた場所まで戻ってきた。
ここが集合場所だと連絡していたけど、2人はまだ居ない。
とりあえず蓮見は車に乗せておく。特に拘束していないのは、敵対されても困るし、ダンジョンマスターなら手足が拘束されていたところでどうにでもなるからだ。それに、睡眠薬の効果的にまだ起きてこないしな。
2人がわかりやすいように隠遁者スキルを切って、俺と奈那さんは車の外で待った。けど、なかなか2人は戻って来ない。
「遅いですね。道に迷ってるんでしょうか」
「寧音がいるから道に迷うことはない。怪我人を助けるために気づいたら遠くまで行っていたとかだろう」
「もしかして前に妹が居たら攻略に便利、みたいなことを言っていたのって、マッピングが得意だからとかですか?」
「それもあるが、寧音はバフとデバフをかけられる魔法スキルを持っているんだ。今回は出番がなかったが、本来の何倍も動きやすくなるし、モンスターは本来の何倍も動けなくなる。詳しいことは本人から聞いてくれ」
「なるほど。ドラゴン討伐の時も居てくれたら助かったでしょうね」
「それはどうだろうな。拘束スキルと同じで力の差がありすぎるとデバフが効かない可能性は充分にある」
「あぁ、確かに。スキルもまだまだ謎なところが多いですよね。そういえば奈那さんって何個スキル持ってるんですか?」
「ふふ、何個だと思う?」
年齢聞かれて何歳だと思う?って面倒な返事する人みたいだな。
少なくとも10個や20個は余裕で持っているだろう。
上級の魔法を撃っていたから中級や初級は当然持っているだろうし、毒瓶投げた時にマイナーなスキルを使っていた。それに買えるスキルの書は大体買ったと言っていたから、日本で流通しているスキルは全て持っていると考えていいだろう。
スキルの書は確か富良野ダンジョンでよくドロップするんだよな。使えるものから使い所がわからないものまで。一球入魂とかいう物を投げる時しか使えないスキルも、たぶん富良野ダンジョンから出たスキルの書だと思う。
流石に100は超えてないだろうから、50前後 かな?
「51個と予想してみます。どうでしょう?」
「残念。ハズレだ。正解を知りたいならまずキミが持っているスキルを教えてくれ」
そういえばダンジョンの攻略で使うスキルしか教えてなかったか。ステータスは相変わらず改竄されたままだし。
「じゃあ知らなくていいです」
スキル構成とスキルの個数は釣り合わなさすぎる。
このまま雑談を続けていると、ようやく2人が戻ってきた。
「お待たせ!」
「待たせて悪いわね。怪我人を探してたらいつのまにか遠くまで行ってしまってたの」
奈那さんの予想だいたい当たってたな。
「謝る必要はない。ただ、誰かに捕まる前に速やかにこの場を離れよう」
「お姉ちゃん達ってドラゴン退治してたんでしょう?誰かに捕まるようなことでもしたの?」
「事情聴取で時間が潰れたら嫌だろう?ホテルでさっさと休みたい」
「ふぅん。休みたい、ねぇ?……お姉ちゃん、車に誰か居るような気がするんだけど私の気のせいかしら」
「……言い忘れていたがそいつが今回の元凶だ。今は寝てるから問題ない」
「はぁ!?嘘でしょ!?」
……確かに俺もダンジョンマスター連れてきたって連絡してなかったな。奈那さんも言っていなかったのか。




