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宣誓!人類の味方となるダンジョンにする事を誓います! 〜チュートリアルを装った攻略させないダンジョン作り〜  作者: 天沢与一


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府中ダンジョンマスター、蓮見朝陽の場合(三人称)④

 捕まえていた3人のうち1人が死んだところで蓮見の日常は変わらない。


 学校に行って、ダンジョン寄って帰って、居なくなった母の代わりに掃除や洗濯などの家事をこなす。父の機嫌を損ねないようになるべく息を殺して過ごし、たまにサンドバッグにもなる。


 金は預けてもらえないなら、料理だけは父親が担当だ。いつも惣菜かコンビニ弁当かご飯抜き。仕事で新卒の新入社員が入ってくるこの時期はいつも機嫌が悪くてご飯抜きの場合が多い。


 蓮見が成人してたら速攻でダンジョンにぶち込んでいたのに、未成年で保護者が必要な今はそれができない。せめて高校生になるまでは大人しくしていようと決めていた。


 幸いにして、学校生活の環境は前より良くなった。給食時に閉じ込められることもなければ、配膳された給食を目の前でダメにされる事ももうない。誰も暴力は振るわないし、暴言も吐かない。


 父親の許可が降りなかったから修学旅行にはいけなかったが、ダンジョンにいる2人の世話があるのでそっちの方が都合よかった。


 けれど、世間で大事件が起こった。


 ダンジョンが出現してから1年。


 日本にあるダンジョンの5箇所からモンスターが溢れ出したのだ。蓮見も声を聞いたのでそうなるダンジョンがあることは知っていた。けれど、まさかそれがきっかけでダンジョンが一般人に解放される動きが加速するとは思わなかった。


 一般人による大阪ダンジョンの攻略が行われた時からいつかはそうなるだろうと予想していたが、2月にはライセンスを取得した一般人はダンジョンに入れるよう調整しているという。


 これでは蓮見が計画を想定していた時期にはダンジョンに人が普通に入ってくるようになるかもしれない。


 それはかなり都合が悪かった。


 蓮見は計画を行うタイミングを早めることにした。


 夜。深酒をしてテレビをつけっぱなしでソファで寝ている父親の姿を確認する。そして起こさないように近づいて、ダンジョンであらかじめ配置して取ってきた睡眠薬をかけた。


 ダンジョン産の薬の効果を今更疑ってはいない。しかし、万が一のこともあるので、まず手足を靴紐で縛った。それから、家にあった大きなスーツケースに父親を詰め込む。


 蓮見の父親は小太りだったので、入れるのにすこし苦労した。スーツケースのチャックはギリギリ閉じられ、それをなんとか隣のダンジョンまで運ぶ。


 最初の部屋まで行ってしまえば後は簡単だ。


 いじめっ子の1人が死んだことによって無駄にポイントがあるので、1階層へ行く魔法陣くらい設置できる。それで1階層まで行ったら今度は罠部屋へ続く魔法陣に乗る。



「よかったねー、2人とも。今日から仲間が増えるよ」



 返事はない。

 すでにうめき声すら出せなくなっているから。


 蓮見は気にすることなくスーツケースを開けて、手足の拘束を解いて、代わりにドラヴァインに拘束をしてしまう。


 それからついでに家から持ってきていた包丁で父親の手を斬りつけ、擬態薬という薬の瓶に血を流し入れた。失血死されたら意味がないので傷はすぐに回復薬で治す。



「じゃあまた明日来るよ」



 家に帰った蓮見は擬態薬を飲んだ。


 擬態薬とは薬に血を混ぜた相手の姿になれる薬だ。変身している時間は1時間ほどだが、それで問題はない。


 父親の姿になった蓮見は父親のスマホを顔認証で開ける。そして顔認証からパスワード認識に切り替えた。パスワードは打っているところを何回も見たことがあるから蓮見は知っていた。

 これでいつでもスマホを開けるようになる。


 メッセージアプリを探って、会社の人らしき人物に辞めますと一言だけ送った。


 銀行や電子決済のアプリのパスワードは全部スマホのパスワードアプリで管理されていた。


 これもパスワード認証に切り替えた今なら見放題だ。


 流石に銀行口座の暗証番号まではわからなかったのでATMから現金は引き出せないが、ネットで買い物はできたし、決済画面を開けたので電子決済も問題なく使える。


 貯金は100万円弱。当面の生活費は問題ない。


 翌日学校帰りにダンジョンに行くと、父親が喚いていた。



「あ、朝陽!どうなってる!?説明しろ!!」


「父さんにはダンジョンの養分になってもらおうと思って、連れてきちゃった」


「連れてきた?どういうことだ!!早くここから出せ!!お前は俺が養ってやってるんだぞ!!」


「せっかく連れてきたのに出すわけなくない?どうしてみんなこう理解力低いんだろうね。それに、養ってやってるって言ってるけどさ、親が子供を育てるのは義務だろ。なんでそんな上から目線なわけ?そんなんだから母さんに出てかれるし、会社では窓際部署に追いやられるんだよ」


「なんだと……親に向かってそんな口聞いてもいいと思ってるのか!?この気持ち悪い化け物もお前の仕業か!?ごちゃごちゃ言ってないでさっさとここからだせ!!」


「愛があれば何しても許されるって言ってたの父さんじゃないか。親が子を殴るのが愛なら、これも愛だよ。大丈夫。先に入れてた2人はもうちょっとで1年経つけど、まだ生きてるから。これからも栄養剤と回復薬さえあればずっと生きていけるよ。たぶんね」



 ふざけるな、とさらに父親は怒り出す。全くもって立場をわかっていないようだった。これならすぐに謝ってきたいじめっ子3人の方がまだマシだ。


 仮に謝られたとしても許す気など到底無かったが、ずっと怒鳴られていると嫌な気分になる。



「“サイレント”」



 サイレントスキルはかけた相手が5分間話せなくなるスキルだ。魔法スキルを使う相手用に取ったスキルだったが、あまりにもうるさかったので父に使った。


 そして蓮見はしばらくはダンジョンに行くのを控えることにした。


 別に通い詰めなくても、空中に設置すれば自然落下した時の衝撃で瓶が割れて遠隔で栄養剤と回復薬を与えることはできるのだ。


 遠隔で“ご飯”をあげ始めて4日目。設置した高さが悪かったのか、瓶が当たった時の衝撃でいじめっ子の1人が死んだ。



『リザルト:31,796,782のダンジョンポイントを獲得しました。

 31,796,782の経験値を獲得しました。

 ダンジョンのレベルが38となりました。

 レベルアップ報酬として7万のダンジョンポイントが付与されます』



 ポイントと経験値は人類がダンジョンにいた時間で換算される。1人の人類が1秒滞在したら1ポイント貰え、24時間いたら86,400ポイントも貰える。たった今死んだやつは昨日でちょうど1年だったので、凄まじい量のポイントと経験値が入ってきた。


 ドラゴンは5000万ポイントからなのでまだモンスターは自在には置けないが、これだけのポイントがあればどんな構造のダンジョンにもできる。もはや暮らせるレベルだ。


 また、たった今出来た死体なのだが、ダンジョン産以外の物質は1kgあたり10ポイントの消費でダンジョンに吸収してもらえる。ただし、ダンジョンに存在してから1週間経っている物質が対象だ。生きているものは吸収できない。


 なので死体の処理を1週間後に行うようAIに頼んで、蓮見はあり余るポイントを使ってダンジョンを一般人向けに整えることにした。


 まず、設置していたモンスター部屋へ飛ばされる転移罠を解除する。代わりに同じ階層内に飛ぶタイプの転移罠を設置した。


 これは蓮見が魔法陣を使ってダンジョン内を移動するので、そのカモフラージュのためだ。普段は自分用の魔法陣は置いておくつまりは無いが、いざという時のために設置した。


 1階層のモンスターは弱い植物系のモンスターを置いた。


 ポイントを考えるともっと強いモンスターも置けるが、最初から強いと人が寄り付かなるかもしれない。だからあえて弱いモンスターにして、階層が下がるごとに少しずつ強くしていく。


 ドロップアイテムは人類が欲しがりそうな武器や回復薬、宝石が低確率で落ちるようにして、その中にアルリアという黄色い花も落ちるように設定した。


 この花は元々蓮見が父親に与えようと考えていた花だ。依存性があるならいっぱい与えれば言うことを聞くようにならないかな、と考えていたのだが、バレないよう与える方法が思いつかなくて諦めていた。


 ドロップするように設定したのは、せっかく良いアイテムを見つけたのだからという勿体無い精神からだ。それに花の依存性に釣られてダンジョンに通い詰める人が増えるかもしれない。そんな軽い気持ちだった。


 こんな感じにとりあえず蓮見は20階層まで一気に作った。


 夕飯の時間にリビングにいなくても、もう怒る人は居ない。時間は自由に使える。


 こうやってダンジョンのことにかかりっきりでも何も問題がない。


 2月になると、ちらほらと蓮見のダンジョンに入る探索者が出始めた。


 近くに特殊素材取扱店ができると、蓮見はそこで大量の魔核を売った。


 もちろん店の人には怪しまれるだろうが、それ以上に蓮見が気にしていたのは近所の人からの目だった。


 あれだけダンジョンに通い詰めていれば、蓮見がダンジョンに入っていく姿を見た者もいる。実際にダンジョンに入っていることを咎められたこともある。


 その時は“虐待の現場は見逃してきたのにこう言う時だけ口を出してくるんだな。今まで通り見てみぬふりしてろよ”みたいな事を言って煙に巻いたが、ダンジョンに何回も入っていると知られている事実は代わりない。


 モンスターを倒していなかったらなんのためにダンジョンに入っていたんだと邪推されかねないので、わざわざ用意した魔核を売りに行ったというわけだ。


 店の人からはいろいろ聞かれた。どうしてこんなに魔核を持っているのか、そもそもライセンスを取れる年齢なのかなど。


 蓮見はまだ侵入禁止だったダンジョンに入ってモンスターを倒していた事を伝え、素直に自分の年齢を告げた。


 店主は15歳と言う若過ぎる年齢に頭を抱えたが、こんなに大量の魔核が手に入るまで何回もダンジョンに入った背景に何か事情がある事を察した。


 蓮見は栄養が足りておらず15歳にしては小柄な体をしており、制服は明らかにボロボロだったから、見る人が見れば虐待やいじめを受けてきたとわかる。何より、目が子供とは思えないくらい荒んでいた。


 本来、探索者ライセンスや特殊素材取扱ライセンスを持っていない人からの買取は禁止されている。それでも店主は深く事情を聞かないまま優しさと同情で魔核を全て買い取った。


 店主が内心どう思っていたかは置いておいて、これで蓮見は貴重な現金を手に入れた。

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