57話 2度目の東池袋ダンジョン
あの後ネットでダンジョンの封鎖について情報を集めたところ、どうやら高知県の浦戸にあるダンジョンでは、刀を持ったダンジョンマスターを名乗る男が1階層で待ち構えているらしい。深夜帯に行くと誰もおらず、けれど先に行く階段にはカウントダウンが表示されていて進めなかったそうだ。
東池袋ダンジョンと同じモノと見ていいだろう。
他のダンジョンでは似た様な情報が出てこなかったけど、浦戸ダンジョンも新ダンジョンだから、やっぱり新規のみ使えるアイテムがあったとみて間違いないな。
けど、たったの1週間で探索者から身を守れるほどのポイントが手に入るとは思えない。他にもサポートがあったりするのだろうか。例えば手に入るポイントが2倍になるとか、経験値が2倍になるみたいな。
まぁここら辺は新ダンジョンマスターしか知らないことだから、俺が考えても意味ないけどね。
そんなことより、今は木曜の朝7時。俺の予想だと今日の9時が封鎖が解除される。
解除される瞬間を見たいので、東池袋ダンジョンに来た。
ダンジョン入ってから封鎖されている場所まで辿り着くのは浦戸の方が簡単なんだろうけど流石に高知県は遠い。
前回と同じく人目を気にしながら東池袋ダンジョンに侵入して、すぐに隠遁者スキルを使う。
前来た時に使ったマッピングマップを見ながら先に進んだ。どうやら道順は変わってないみたいだ。
朝だから流石に探索者はあんまりおらず、人を避けることがあんまりなかったおかげでさくさく進めた。道中のゴーレムに苦戦することなく進み、封鎖されていたところまで来たのだが……
「数字が消えてる?」
前回カウントダウンの数字を見た時からどう考えても最低1時間はまだ猶予がありそうだったのに先に進めるようになっていた。
これはどういうことだろうか。
俺の予想が間違っていたのかそれとも俺の体内時計が大幅にズレていたのか。
……この場で考えても仕方がないので、とりあえず3階層に降りることにした。
どうせややこしい作りをしているだろうから、降りたその場でマッピングマップを新しく出す。
見渡した限り近くにモンスターはいないけど、ここも同じゴーレムが出るのかな。こういう時気配察知系のスキルを持っていたら便利なんだろうけど、あんまり今は新しくスキルを取る気が起きない。
慎重に進んでいると、角を曲がったところでバッタリとゴーレムに遭遇した。ただ、上の階層で見たゴーレムとは少し形が違う。というか明らかに大きい。
思わず後ろに下がったところ、俺の足音が響いた。
音に反応したゴーレムが大きく腕を振りかぶる。
「“天刃風”!!」
胴体が真っ二つになって上半身が地面に落ちた。けれど動きは止まらない。それどころか元の形に戻ろうとしている。
「“天刃風”“天刃風”“天刃風”」
追加で3回ほど魔法を打って、ようやく動きが止まった。ゴーレム動力源どこだったんだろ。それともそういうの無いタイプ?
さっきの形を思い出しながら自分のダンジョンの管理画面から該当するモンスターを探す。
あ、あった。
1、2階層はゴーレム(石タイプ)で、この階層のはゴーレム(岩タイプ)か。どちらもコアを壊されない限りは動き続けるモンスターと説明欄に書いてある。岩タイプのコアは頭部にあるらしい。
石タイプは1体500ポイントで岩タイプは1体1000ポイントか。これが3階層に配置されてんの?やっぱりポイントに余裕あるんだな。
普通の探索者は2mはゆうに超えている大きさのゴーレムの頭部にある、しかもめっちゃ硬い岩を破ってコアを壊すの大変だろう。
スキルで切れたから俺には問題ないけど。次からはちゃんと頭を狙おう。
残った魔核を拾い、消費した魔力を薬を出して回復させた。
上級スキルは威力が高い代わりに魔力の消費はやっぱり激しい。具体的に言うなら初級風魔法の風牙は消費が20。上級の天刃風は200だ。
魔力の消費量上げて技の威力を上げるみたいなことはできない。融通が効かない感じがゲームみたいだなぁと思う。
魔力を回復させ終わったら先に進む。
やっぱり複雑な道をしており、何回も道を行ったり来たりしていた。
そして数回目の行き止まりで岩ゴーレムを倒した後。魔核を拾って来た道を戻ろうとすると人がいた。俺と同い年くらいの短髪の男だ。
「やっと追いついたわ。姿見えねぇけどそこにいるよな?ダンジョンマスターさん」
なんでピンポイントでダンジョンマスターがここにいるってわかるんだよ。
……いや、俺の姿は見えなくても倒されているモンスターの姿はわかるか。同じダンジョンマスターなら。
つまり、目の前にいる男が東池袋のダンジョンマスターか。
わざわざ接触してこようとするとは。いったいなんの目的で?
「え、いるよな?ここのゴーレム今倒されたばかりだし。俺の予想だと町田のダンマスだと思うんだけどどう?あ、やっぱり今の聞かなかったことにして。外してたら恥ずい。とにかく、そっちが敵対意思ないなら俺も攻撃しねぇから姿表してくんね?」
予想当たってるから別に聞かなかったことにしなくていいと思うけど本当にどうしようかな。
逃げるにはこいつの横を通らないといけない。俺が見えてるわけじゃないなら通り抜けるのもできなくはないけど、それよりも新ダンジョンの情報を直接聞いた方がいいかな。
いつでも攻撃できる体制を取りながら隠遁者の効果を切る。
「初めまして。なんの用ですか?」
「えっと……町田のダンマスだよな?なにその面。ダンジョンの中でも顔隠してるのかよ」
なんかめっちゃ引かれた気がする。
幽影の雑面に対しても今顔隠してることについても。
今回つけてたのは顔を隠す目的じゃなくて雑面の効果を期待してだからほっといてほしい。
「そっちの方が都合がいいので」
「ふぅん。やっぱり変わってんな。てかなんの用って聞いて来たけどそれは俺が聞きたいんだけど。何しに来たんだよ、町田のダンマスさんは」
「新しいダンジョンの情報収集ですかね」
「日曜に来てたのもどうせあんただろ?2回もわざわざ来るなんて俺のダンジョンで何をそんなに知りたいわけ」
正直に言ったら教えてくれんのかね……ここまで来て別に隠す意味もないか。
「そうですね、前来たのも俺で合ってます。今回はその時見たカウントダウンの謎を解きに来ました」
「カウントダウン?……あー、あれか天護の護符。本当に効果あったのかあれ」
「天護の護符?」
「そうそう。俺のAIに強く設置を勧められてさぁ。ダンジョンコアに続く道を1週間封鎖してくれるんだとよ。くそ高かったけどAIの言うこと聞いておいて良かったわ」
「なるほど……あれはアイテムの効果でしたか」
つまりあの時点では2階層が最下層だから封鎖されてたけど今は3階より下が最下層だから通れたってわけね。
そしてコア部屋に行く道は未だに封鎖されているんだろう。
「そーそー。やっぱりダンジョン運営はAIのアドバイスに従っておいた方がうまく行くね。あんたにもそういうのあった?」
俺のAIは1回も俺にアドバイスなんてしたことないよ。俺の言うことは手伝ってくれるけどさ。
というかこいつは本当に何しに来たんだ。ダンジョンマスタートークしに来たのか?
「俺の目的はあなたが情報くれたので終わりました。用が無いならもう帰ってもいいですか?」
「話にはあんまり付き合いたく無いってわけね。せっかくなら帰る前にサインくれよ」
は?サイン?
もしかして俺のファンかなにかだったりする?




