112話 同行する
ノリの良さそうなパーティだ。これならいくつか質問しても答えてくれそうである。
「逆にあんた達はいつから探索者に?」
「1月末からだよ。冬休み中にノリで合宿いったんだ」
「おぉ、探索者になってから約3ヶ月でここまで戦えるなんてすごいな」
「いやぁ、それほどでも〜」
「バカ、けんちゃんのお陰だろ」
「俺らはスキルとけんちゃんに恵まれている」
「ホントは魔法スキル使いたかったんだけどね」
けんちゃんというのは1番最初にケンタロウと名乗って以来全く口を開いていないこのクロスボウ使いの男のことだろう。
遭遇するスライムやゴブリンを前衛3人が雑談している裏でサクサクと矢を当ててっていた。一回も外していない当たり、確かに腕がかなり良さそうだ。
ちなみに矢が当たって弱ったモンスターを前衛が交代交代にトドメを指している。いつもそんな感じなのだろう。モンスターが死んで肉体が消えたことによって、地面に残った矢を回収してクロスボウ使いに渡す流れが鮮やかだ。
俺は一切何もしてないので、完全にお荷物になってるな。本人たちは気にしてなさそうだけど。
「ダンジョンには良く潜ってんの?」
「最近はあんまり」
「え、なんで?」
魔法の習得に躍起になってたから、なんて言えないよなぁ。
「なんか気分乗らなくて」
ってことにしとこう。
「あー……じゃあしゃーないな」
「気分は大切だ」
「やっぱあれ?お国の炎上に巻き込まれて探索者への当たりが強くなったから?」
「まぁそんな感じ。今落ち着いたけど、一度下がったモチベが回復しなくて」
「わかるー。一回萎えると引き摺るよな」
「でも探索者ギルドができるのは楽しみ」
「それな!えっと……あれ、なんとか大臣のおかげだわ」
「せめて防衛大臣って言ったら?」
「うっせーな。別に伝わればいいだろ」
「わかるけども」
「あと八杉大臣な」
「名前とかどうでもいいー。早く探索者ギルド完成させてくれれば」
「探索者ギルドができたらやっぱり依頼とかあるんだよな?」
「知らんけどあるんじゃね」
「特殊素材取扱ライセンスを持っている人から主に素材集めの依頼を受け付けるらしいよ」
「お、蒼斗詳しいじゃん」
「ソロだから集められる情報は集めとかないとやってらんないので」
「偉いな」
「アツシも見習え」
「そういうのはヒロに任せた」
「俺はパス。リュウキふぁいと」
「なんでだよ。こういうのはリーダーの仕事じゃね」
「えー」
この中身があまりない会話の感じ、なんだか懐かしい気がする。
そういえば最後に4人で集まったのは瑛士がダンジョンマスターだとバレそうで、どうするか作戦会議したあのカラオケだ。3人で、とか2人で、とかならたまに会うんだけどな。
俺と瑛士は違う大学だし、遊太は専門学校で光介は就職したからなかなか時間を合わせるのが難しい。
所沢ダンジョンの時は4人で集まるはずが1人来なかったし。
今度のゴールデンウィークに久々に集まれないか聞いてみるか。
東池袋のダンジョンの探索を提案してみようかな。ダンジョンマスターが行っても気にしなさそうだしあそこ。
去年集まれたから特に先約がなければ今回もいけるだろ。たぶん。
雑談をしながら6階層は最短ルートで進み、7階層は罠の無い道を通る。
途中、スキルを見たいとせがまれたので、初級風魔法スキルを3回連続で撃って、ドレッドスパイダーを倒した。
やはり魔法系スキルには憧れるようで、スキルの書をわざわざ買うか迷っていた。他のスキルの書と違って魔法系の書は初級でも10万円超えるので、いくら探索者としてそこそこ稼いでるとはいえ、大学3年生にとっては大きい金額だからポンっと出さないのだろう。
10万円あったら、他の安い書はいくつか買えるし、魔法系のスキルを買っても剣を振りながら使えるのかという問題もある。
奈那さんはスキルの書を買い占めてたけど、普通はそんな事できないどころか、1つ買うのも悩むものだ。
「買うとしたらおすすめ何?やっぱ風?」
「風は攻撃することしかできないから、灯りにも火種にもなる火魔法がおすすめかな」
「火かぁ。火もいいよな」
「わかるわ。ファイヤーボール!……とか言ってみたい」
「極めたらやっぱ爆発させたりできんのかな」
火魔法スキルにファイヤーボールはない。あるのは火球だ。本人がそう認識してるならおそらくファイヤーボールでも発動するけどな。
あと上級になれば爆発させられるよ。
俺は主に初級風魔法スキルと気配察知スキルの2つを使えるって設定になってるからから教えないけどさ。
8階層になると俺は1人扉の前で待たされた。
左右の道を2人組で分かれて扉を開けるボタンを押しに行ったからだ。普段はじゃんけんで勝った人が残ってるらしい。
知り合ったばかりの人と仲間を2人っきりにさせるのは何かとリスクが高い。俺を1人にして置いていくのはパーティとして正解だろうな。
仲間から結構軽口を叩かれていたリーダーだったが、俺が口を挟む間もなくこの割り振りになったので、意外とできるリーダーなのかもしれない。
そのまま待ち続けていると、扉が開いた。
中に入ってボタンを押し、扉が閉まらないようにする。
左の道が若干複雑とはいえ、慣れれば距離自体は長く無い。ボタンに辿り着くまでにモンスターはある程度倒しきってるだろうし、2組ともすぐ戻ってくるだろう。
そして体感10分ほどで右側に行っていた2人、アツシとヒロが先に戻ってきた。
「お待たせー」
「お、無事に開いてる」
「お帰りなさい。早かったっすね」
「まぁ俺らの方が物理的に距離が短いからな」
「お互いにボタンを押したって認識できないと思うけど、どうやってタイミング合わせてるんだ?」
「どうって言われてもな」
「勘というか経験でなんとなくというか」
「何回もやってればどれくらい押し続けてればいいかわかるもんよ」
「へぇ」
8階層はソロじゃ突破できないことは良く文句言われるけど、離れた位置にボタンがあることにはあまり文句を言われたことがない。
そういうものだと受け入れて、どこのパーティもこんな感じに突破してるんだろうな。
逆にソロはいつもはどうしているのかと聞かれたので、入り口のところで開くまで待つか、今回みたいに他のパーティに混ぜてもらうと答える。
本当はダンジョンの管理画面を操作して開けたり魔法陣を作って飛ばしたりしているけどな。
「ソロって大変なんだな」
「ここは死角から急にモンスターが襲ってこないから慣れれば問題ないよ」
「もしかして他のダンジョンにも行ったことあんの?」
「あーいや、友達と何ヶ所か行ったけど、ソロはここだけだな」
「いいな!どこ行った?おすすめある?」
何ヶ所かって言ったけど、改めて思い返すとちゃんと探索者のしたのは所沢のとこと広島のところだけだわ。
ただ、広島ダンジョンのことは言わない方がよさそう。なんか正体バレそうだし。
あとは……梅田も含めていいか?まぁ入ったし行ったってことにしよ。内容聞かれても答えられるから問題ないだろ。
東池袋ダンジョンはソロでこっそり行ったけど、友達と行ったってことにしてしまおう。
「行ったのは所沢と東池袋と梅田ダンジョンで、おすすめは所沢ダンジョン」
「おぉ。梅田にも行ってんのか」
「所沢ダンジョンかぁ。理由ある?」
「一緒に行ったメンバーがクロスボウ使うヤツと盾持ちのヤツで、序盤は2人で充分だったんだよ。そんな深い所まで潜らなかったけど、このパーティなら相性が良いかなって」
「確かスケルトンがでるんだっけ」
「割と近場だし今度行ってみてもいいかもな」
「ぜひ。逆に東池袋ダンジョンはモンスターがゴーレムで矢がほぼ通用しないんでやめた方がいいと思う」
「矢が通じないのはやばいな。辞めとこう」
「あぁ。けんちゃんが活躍できないのは困る。辞めとこう」
「あ、でもモンスター触れ合いコーナーに行くだけなら大丈夫だと思うよ」
「あれ東池袋にあるんだっけ」
「東池袋だね。実は俺も行ってみたいけど、女性探索者が多いらしくてソロじゃ行きにくいんすよねぇ」
モンスターとの触れ合いじゃなくて、どう運営しているのかが気になってるんだけど。
SNS見る限り結構人気高くて人が集まってるっぽいけど、秩序をどうやって保たせているんだろうか。
真似できるなら練習場にも取り入れたい。
「まじで!?いいじゃん。行ってみようぜ。俺らのパーティにも花が必要だって」
「まさかの出会い目的。俺らにはけんちゃんがいるだろ」
「けんちゃんは確かに俺らのパーティに欠かせないけど性別が違うだろ。あいつは花じゃなくて職人だ。矢撃ち職人」
「女探索者って後衛が多いらしいじゃん?うちにはもう矢撃ち職人が居るからいらんくね?」
「いる!いたら俺が嬉しい!」
「華やかにはなるだろうけどさぁ……」
男女混合パーティはよくあるけど、揉め事が起きやすい。ヒロはそれを気にしているのだろう。
スキルやステータスで多少の差は埋まるとは言え、体力の違いがあるから女性に合わせて休憩を取らなきゃ行けないし、長時間ダンジョンに潜るならトイレ問題がある。あまり推奨されてないとは言え、最終的に男はその辺で済ませられるけど、女性だとそうは行かないだろう。
つまり、男女混合パーティで長時間かけてガチでダンジョンを探索をするのがかなりハードルが高いのである。
あ、待って、31階層にトイレ設置してないことに今気づいた。仮にも宿泊施設なんだから流石にないとまずいだろう。後で追加しておこう。全室は無理だから男女1個ずつでいいかな。
風呂場とシャワーの向かい側に……いや、ダンジョンのことを考えるのは後にしよう。




