100話 魔力
上級土魔法スキルには想創土という使用者の想像したモノを土で再現するスキルがある。他の魔法スキルはだいたいスキルの形が決まっているので、なかなか珍しいスキルだ。
それを使って石臼でも出そうかと思ったが、構造がわからない。なんか、下に台があって、上に円柱の石があって、ゴリゴリ回すイメージだけど……
想創土で作れるモノは本当に想像したモノだけだから、あやふやな想像だとあやふやな石臼しか作れないんだよな。
仕方がないので、一回ダンジョンの外に出て、『石臼 構造』で検索した。
なるほど。上の石にも下の石にも溝をつけないといけないのか。あとは上の石には穴を開けて魔核を入れられるようにして、石を回すための取手をつけよう。
調べた感じ蕎麦粉を挽くときに今でも使われているみたいだが、魔核って砕けるのか?
とりあえずやってみるしか無いか。
まずは石臼に入れられるくらい細かくする必要がある。
入れ物とかも用意しないとだよな。
今買いに行っちゃうか。
近くの100均に行って、使えそうなものを色々買って来た。
細かくした魔核を入れる用にタンブラー、床に敷く用にレジャーシート。魔核が飛び散るかもしれないので小さなホウキとちり取りセット。動画で蕎麦粉挽いてた人がふるいを使っていたので念の為それも買った。
買ったものを全部マジックバッグに詰めて、隠し部屋に帰ってきた。
ここじゃ狭いので隣の部屋に行って、まずはレジャーシートを床に敷く。
風魔法である程度まで魔核を細かくして、その後は岩の塊を上から落とすシンプルな土魔法スキルを使ってさらに小さくした。
大体5mm以下にはなっただろうか。
一度それらをタンブラーに入れて保管する。
さっき確認した石臼を思い浮かべながらスキル名を唱えた。
「“想創土 想創:石臼”」
石臼が目の前にできた。
想創土はこうしてモノを出現させている間は魔力を常に消費し続けるデメリットがある。
実際に使えるかわからないがさっさと工程を進めよう。
石臼の穴に少しずつ魔核をいれて、取手を回す。
ゴリゴリとそれっぽい音がするので成功してそうだ。
途中回復薬を飲んで魔力を回復させつつ、石を回す腕が疲れて来たら身体強化スキルを使ってひたすら魔核を引き続けた。
石臼の縁からじわじわと粉々に砕けた魔核が落ちていき、下の石に溜まっていく。
全部挽き終えたら500mlのタンブラーの9割くらいまで細かい魔核ができた。
1mmを目指してたけどそれより細かい。もはや核って言うより粉だな。挽き切れてなくて粗い粒も残ってるけど充分すぎる成果だ。
それから1週間かけて同じ作業をして、合計でタンブラーが6本分になる量の魔核を砕いた。途中オーク召喚して石臼で挽く作業を任せなかったらたぶん力尽きていたと思う。
オークのおかげで3本はゴブリンの魔核のみで作ったモノ、もう3本はいろんなモンスターの魔核を混ぜて作ったモノ、と2種類の魔核の粉が出来た。
一応奈那さんに見せる用にちっちゃいビニールのジップ袋にそれぞれ入れてとっておき、いよいよ魔核の粉で魔法陣を作っていこうと思う。
事前準備は済ませて来た。
1番図面が簡単な踏んだら1階層へ転移するだけの魔法陣を紙に描き写して、パソコンで綺麗に形を整え、倍率を計算して複数の紙に拡大印刷。1枚の紙になるようにセロハンテープでくっつければ実寸サイズの魔法陣が描かれた台紙の完成だ。
その台紙とのりをダンジョンに持ち込む。
のりはサッと塗れる液体のりを選んだ。
魔法陣の線に沿って液体のりを筆でつけ、上から魔核の粉をふりかける。
のりが乾くのを待って、最後に余分な粉を落とせば魔核の粉でできた魔法陣の出来上がりだ。
しかし、魔法陣の描かれた紙を床に置いて乗って見ても、何も起こらない。
台紙がくっついているのがよく無いのか?魔核の粉を固定させるために使ったのりもダメなのだろうか。
それとも大きさとか模様が間違ってたのだろうか?
まずは模様の確認のため、部屋に作った魔法陣と全く同じ魔法陣を設置した。その上から台紙を被せてみる。
魔法陣は僅かに光を帯びているので、紙が透けて作った魔法陣とちゃんとした魔法陣の違いが見比べられるんだけど……特に大きな違いがあるようには見えないんだよな。そこまで俺は器用じゃ無いから若干線に凹凸があるけどさ。中心線はズレていないはずだ。
見比べて大きな違いと言えば光ってるか光ってないかだ。
……もしかして光らせないとダメなのだろうか。
確か……東畳さん、ダンジョンで機械を使えるようにするには魔核できたバッテリーが必要って言ってたよな。
俺の作った魔核の粉は当然バッテリーじゃない。だから外部から何かしらのエネルギーを与える必要がある……みたいな?
先週分解したカメラのバッテリーを魔法陣の上に置いてみた。が、変化なし。まぁそうだろうなという結果だ。
電気を流しても魔法陣が発動する未来は見えない。ファンタジー的思考で考えるなら魔力を流してみたい。
やり方わからないけど。
でも、絶対に魔力はある。それは断言できる。スキルを使う際に使ってるんだからさ。
スキルを介さずにただ魔力を使う方法があれば……
「スキルを使わずに魔力を動かす方法ある?」
『回答。ございます』
えっ……答えてくれるんだ。いまヤケクソで聞いたのに。
「魔力について教えて?」
『回答。お答えできません』
でもこの質問はやっぱり答えてくれないんだ。前にも聞いたことあるけど、今ならって思ったのにな。
ただ、最初の質問にはあるって答えたんだから、魔力の質問がNGというわけでは無いはず。質問の仕方を変えればいけるか……?
「魔力とは人類の体内にのみあるものって認識はあってる?」
『回答。違います』
お、答えてくれてる。
少なくともダンジョンマスターも魔力があるんだから、違うって答えるよな。
「じゃあ、魔力とは生物の体内にのみあるものって認識であってる?」
『回答。違います』
これも違うのか。つまり……
「魔力は生物の体内、体外、つまり空気中のどちらにもあるという認識であってる?」
『回答。あっています』
「地球の生物で魔力を持っていない生物はいる?」
『回答。存在しています』
「人類、ダンジョンマスター以外の生物で魔力を持っている生物はいる?」
『回答。存在しています』
なるほど。
まとめると、空気中にも俺らにも魔力はあって、魔力を持っている持っていないは生物によるってことか。
「魔力を持っている生物と持っていない生物の違いは?」
『回答。魔力を使えるか否かです』
そりゃそうだけど、聞きたかった回答じゃ無いな。肉体的に何か違いがあるのかを知りたかった。




