99話 分解してみる
めちゃくちゃ重要な情報をくれたお礼として、東畳さんのために実験をすることにした。
ただ、その様子は見られたくなかったので、東畳さんには帰ってもらい、後で内容を共有することにする。
人がいないタイミングを見計らって扉をあけ、その場で別れ、東畳さんがダンジョンの外に出るのを確認してから始める。
まずゴブリンを1匹この隠し部屋に配置し、何をされても動かないように命令した。
今からやる実験はいったい魔核はどこから来るのか?という疑問を確かめるものだ。
東畳さん曰く、うちで捕まえたゴブリンを縛って動かないようにしてX線検査とCT検査をしてみたところ、骨や内臓のようなものは確認できたけど、魔核のようなものは写らなかったらしい。解剖しようにも腹を開いた時点で死んでしまうから、未だ魔核がどう身体の中に入っているのかわかっていないのだとか。
腹を開いたら死ぬのなら、回復薬をかけながら斬ればいい。蓮見が死にかけの父から回復薬をかけながら血を取ったと言っていたので、死亡するダメージを上回る回復力を与えれば、死なないんじゃないだろうか。
ゴブリンを地面に寝かせて、上級の回復薬をこの部屋に配置する。
ちょっと手順が面倒だ。手元にアイテムを出せるままだったら良かったのにと少しだけ思った。
無抵抗のゴブリンを人でいう鎖骨の下あたりからヘソくらいまでナイフで切って、即座に回復薬をかけた。
中を確認する前にゴブリンは死んだ。
その場には魔核だけが残っている。
……上級回復薬を使ったんだけどな。
もしかしてモンスターには回復薬が効かないのだろうか。
ゴブリンをもう一度配置して、死なない程度の傷を与えて、再度出した回復薬をかけてみた。人類やダンジョンマスターなら一瞬で治る傷の筈だが、やっぱり治らない。
そっか。回復薬やっぱり効かないのか。
ならこの方法は無理だな。
仕方ない。違う方法で試そう。
今のゴブリンは一旦倒して、小笠原ダンジョンのとこのように死体が残るように設定したゴブリンを改めて配置した。
先ほどもらったBタイプのカメラを起動させ、ゴブリンがおそらく映っているであろうところで待機させる。
ゴブリンは倒した瞬間、いつものように体が崩れるように消えていき、気づいたらゴブリンの死体と魔核が転がっていた。ここまでは想定内だ。小笠原でドロップする魚とかもこうなるって情報を前に見た。
このことから魔核はモンスターの体内にはなく、別の次元から魔核が現れているのではないかと言う予想が出てくるが、鑑定スキルで魔核を見た場合、ちゃんとゴブリンの魔核、とモンスターの名前が表示されるのだ。
わざわざ名前表記されるくらいなのだから、魔核とモンスターになにか関係がないとおかしい。
けれど、別の次元から魔核が現れている説も否定はできないので、こうしてカメラで撮ってみたわけだ。家に帰ったら動画をスロー再生にしてどう死体と魔核が現れたか確認しよう。
もっとカメラが小さかったら口の中に突っ込んでみたんだけどな。中から見ることで新しい発見があるかもしれないし。
オークならダンジョン産カメラを飲み込めるだろうか?
まぁ今回はわざわざそこまでしなくてもお礼としては今ので充分だろう。
向こうはもうすでに知っているかも知れないが、モンスターに回復薬が通じないというのは少なくとも表には出ていない情報だし、モンスターが倒されて死体と魔核が残る映像は今なら結構貴重だと思う。
うーん。結局魔核がどこから来るのかはわからなかったな。
今わかってる事からなんとなくで考えてみる。
ダンジョンのモンスターはゲームのアバターのような存在で、本体が魔核を通じてアバターを動かしている。倒されたら魔核が表に出てくるとかどうだろうか?ポイントを追加で支払ったら本体も表に出てくる、的な。
悪い線じゃないと思うが、現状裏付けはできない。どんな空間でどうやってアバターを操作してるんだよって自分でも思うし。
それに、これだと生物学とかあんまり関係なくなりそう。東畳さんにはこの予想言わなくていいや。
ゴブリンを使った実験は辞めにして、ここからは俺のやりたい事をやろう。
魔核で魔法陣を再現できないだろうかというやつだ。
今手元にちょうどよく3つの魔核があるからさ。
まずは魔核で魔核を砕くと必要がありそうなんだけど、どうやればいいのだろう。
魔核は当然のように硬いので、腕力でどうにかなる問題じゃない。
でも、身体能力強化スキルを使えば意外となんとかなったりするか……?
そう思って試しに魔核を手にギリギリ収まる2つ持ってスキルを使い、思いっきり力を入れてみたけどダメだった。
プレス機みたいなのがあれば手っ取り早かったけど、軽く見た感じショップにはなかったしなぁ。
そもそも何故魔核を魔核で砕いた場合、使える状態で小さくできるのだろうか。
たしか、魔核には魔力が含まれている、みたいなこと言ってたよな。あくまでも予想だったけど。
魔核≒魔力と考えた時に、魔核を魔核で砕いたら、魔核を小さくできる、とか?
魔力を帯びたモノで壊せばいい、だったとして魔力を帯びたモノってなんだろう。
ステータスに魔力値があるんだから、ステータスが反映されている状態なら魔力を持っている筈なんだよな。
いや、難しく考える必要はないか。
まずはシンプルに魔核を魔法スキルで壊してみよう。
魔核を1つ空中に投げ上級風魔法スキルを当てた。
すると魔核は真っ二つに割れた。
色は赤いままだ。
なんだかあっさり成功してしまった。
あとはこれをもっと細かくすればいいんだろうけど……かなり大変じゃないかこれ。
風魔法で小さくするのにも限界がある。
魔核、つまり硬い石を粉砕するには、もっと硬いものがないとな。
称号のために取って今まで1度も使ったことがなかった土魔法スキルの出番かも知れない。たしか岩を操る内容のスキルがあった筈。
試す前にどれくらいまで砕けばいいのか確認しておこう。
貰った物なので少し申し訳ない気もするが、どうせCタイプのカメラは使わなさそうだから、ショップで工具を出して本体を分解してみることにした。
どうにかしてカメラを分解すると、ダンジョン産カメラの中身は真っ赤な線が敷き詰められていた。何かの規則によって描かれているような気がしなくもないが、細かすぎて何かはわからない。
逆にドローンの方はわかりやすかった。よく見る基盤に1mmほどの赤い粒が点在している。それもかなりの量だ。
魔法陣の光る粒はもっと細かかったけど、そこまで粉々にできる自信はないのでとりあえず1mmを目指そう。




