98話 カメラ
迷いに迷って、とりあえず話だけ聞くことにした。
5000万ポイントを節約できるのは大きいと感じたからだ。
だって、5000万ポイントもあったらドラゴンが出せる。いや、俺は配置する予定ないけど、それくらい強いモンスターが置けるし、広い階層も作れる。5000万ポイント使わないでいいなら節約したい。
それに、相手が嫌な奴だったり、嫌な内容の手伝いだったりしたら断ればいいからな。
ついでに場所はここ、町田ダンジョン。奈那さん同行の上、話し合いの様子は撮影してもいいんだったらという条件を出した。
万が一、脅しなどをされ、手伝いを強要されない為だ。
奈那さんに交渉を任せたので相手もこれで乗ってくるだろう。
今回の用件はこれだけだったので、あとは軽く雑談をして奈那さんを見送った。
さて、今日はもう1人会う人がいる。
奈那さんに話がしたいと言われていた時に、別の人からも近々お会いしませんかと言われたので、どうせならと会う日を同じにしていたのだ。
奈那さんと違って誰にも見られずにこの隠し部屋まで来るのに不安があるから、隠遁者スキルを使って一度外に出て、ダンジョンの入り口近くで待つ。
まだ待ち合わせ時間の15分前だ。
スマホを見ると5分ほど遅れますと連絡があった。
ゲームして時間を潰していると、時間を少し過ぎた頃にやってきた。
ダンジョンに入ったのを確認して、周りに人がいないのも確認して、その人の肩を触って隠遁者スキルをかけた。
その瞬間、相手の肩が上がる。
「び……びっくりした」
「すみません、東畳さん。でもそろそろ慣れてもいいのでは?」
「こっちは誰もいないと思ってますからね。そこから急に肩を叩かれたり、声をかけられるのは慣れる気がしません」
「そうですか……次からはなるべくそっと触りますね」
「むしろ思い切り叩いて存在感を出してください」
「わかりました」
隠遁者スキルは姿は隠せるけど声は普通に聞こえるから、いつまでもあの場でのんびりと話していられない。
その後は挨拶だけして、すぐに隠し部屋の中に入る。
カメラ貰ったお礼まだ直接言ってなかったから、本題に入る前に言ってこう。
「そういえばカメラありがとうございました。良い配信のネタになって助かってます」
「いえ、こちらこそ。配信や動画で宣伝してくださりありがとうございます。おかげで想定より売上は好調ですよ」
配信のネタに困った時はダンジョン内の写真見せれば時間を繋げられる。なんなら今は配信の最後に写真を紹介するコーナーがある。
色んな場所を撮ってリスナーに見せたけど、モンスターをドアップで撮った写真が人気だった。次いで探索者の隠し撮りが人気かな。流石に顔を隠して出すけど、装備とかでわかる人には誰かわかるみたいだ。
最近ではダンジョン専用の写真家なんて者も出てきた。
道中護衛をしてもらう代わりに、探索者が戦っている姿をカッコよく撮ったり、環境変化がかかって地球とは思えない景色になっているダンジョン内の様子を撮ったりして、SNSに上げている人達だ。
カメラの売上が良かったのは俺のおかげというよりは普通に性能が良かったからだろう。
「それで、今回のお話は……やっぱり勝手にモンスターのことを言っちゃったことに対する苦言とかですかね?」
「いえ……あ、無いとは言いませんが。社長に勝手に情報を言わない様念押して来いよと言われてるので。ただ、一度町田様には電話で伝えており、もう終わった事です。これ以上こちらから何かを言う事はありません。
確かにしばらくウチのメールや電話が荒れましたが、そもそもアレは国からちゃんと許可を得て行った実験です。その結果も報告をしているので、ダンジョンからモンスターを出す事が出来るという事実は知っていた筈なんですよね。
それなのに隠していたと言われても…… こちらとしては然るべきところには報告している、で終わりです。来た問い合わせには全部そう言って対応しているのでお気になさらず」
「ご迷惑をおかけしたみたいで……すみません」
特に悪いとは思っていないが、別に怒らせたい訳じゃ無いのでとりあえず謝っておく。
「町田様の権利なので何を話すかは制限いたしません。特に止めませんので、次からは荒れそうな事は事前に相談していただけると助かります」
「わかりました」
「それで、本題なのですが、今回はウチで開発したカメラの動作チェックにご協力いただきたく……」
「まさか、出来たんですか?飛ぶカメラが」
前聞いた時は確か動画は撮れるようになったけど、本体を飛ばすのに苦労していたはずだ。
そしてユーザーを驚かせたいから次商品として出すのはダンジョン産のカメラと同じく勝手に着いてきて動画が撮れるカメラだと言っていた。
ちなみにこの情報は絶対に言わないでくれと口止めされているので誰にも言っていない。もちろん動画や配信のネタにもしていない。
「えぇ、まぁ。とりあえずこちらを見てください」
そう言って東畳さんは腰につけていたマジックバッグから3つのモノを出した。
「まず、こちらがAタイプの試作機です」
コロンとした丸いフォルムをしている。と言うか見た目はダンジョン産のカメラとほぼ一緒だ。
「こちらは追尾式映像記録機を改造したモノです。記録した映像をSDカードに保存できるようにしました。持ち主に着いてくる動きはそのままなので使いやすい分、画質の問題は解決しませんでした」
……ダンジョン産のアイテムって改造できるんだ。
そういえばアイテムの分解とかした事なかったな。スキルの書って水に濡らしたり火で燃やそうとしたらどうなるんだろう。
「そしてこちらがBタイプの試作機です」
パッと見はよくあるドローンだ。
「カメラを浮遊させるのが難しかったので、まずダンジョン内で使えるドローンを開発しました。そこにダンジョンで使えるカメラを組み合わせました。映像が綺麗で動きも滑らかです。障害物は自動的に避けるよう設定されているのですが、探索者の激しい動きにはおそらくついていけないのと、自動追尾機能が不完全で手元のリモコンを操作する必要があります」
スタートがドローン開発……?
なんというか……流石特研だ。
ただ、リモコンの操作が必要なのは話にならないな。
俺の戦闘方法は基本的に魔法スキルのみだから使えなくも無いが、普通の探索者だったら武器を持っている。これを戦いながら使うのはまず無理だろう。
初めて踏み入れる階層の様子見に、とかなら役立つかもしれない。
「最後にこちらがCタイプの試作機です」
ダンジョン産のカメラとドローンを組み合わせたような見た目をしている。要するに丸いフォルムに羽が生えた姿だ。
ダンジョン産カメラの改造したAタイプとはまた違うんだよな?




