~お披露目 3~
女性三人が固まり、華やかに楽しんでいるのを横目に男所帯の貧しい事。
その上、一人が凹んでいるので、鬱陶しさは跳ね上がり中。
「そこの愚弟。いつまで凹んでいるつもりだい?」
まったく。あれほど身の程を弁えろと言ったのに。
今日会ってから、理乃にガン無視されている武田晴信。
ついでに葛西にも無視されてるよ。
気付いているか知らないけれど。
最低な初対面から、何とか結菜君の頑張りにより相手をされる様になったものを。
顔を合わせ、名前を名乗った時を思い出すね。
「土下座して改名して来い」
幼い理乃に言われてたなぁ。
良かったね。また言われないで。
あの子は歴史上の人物では武田信玄に一番興味があるからねぇ。
「うぅ…僕は二人の為を思って…」
「それが余計なお世話なんだよ。人様の人事にまで口を出すなんて何様のつもりだい?」
俺でも怒るよ?
昔のあの子なら、問答無用で電撃をお見舞いしていただろうね。
あの子が大事にしている子に口を出すだなんて。
知らないとは言え、よく許されたものだよ。
結菜君に一生頭上がらないんじゃないの?
女性に男の縦社会なんてものは通じない。
結菜君が理乃に気に入られた時点で優位。
男連中はみんな理乃に甘いしね。
結菜君と下心がないのもあって、彷徨いても何も言われなかったのを勘違いしたのかねぇ。
俺はプロポーズの件から、微妙に距離置かれてるしね。
「葛西、そこの愚弟をどうにかしてくれないかい?」
「自業自得でしょう。知りません」
やっぱりそう思うかい?
「まったく。何で気付かないかなぁ。ねぇ?葛西は気付いてるだろう?」
「露骨ですしね」
だよねぇ。普通は気付くよね。
自分がどれだけ相手にされていないか。なんてさ。
「え?どういう意味ですか?」
「「はぁ…」」
そりゃ溜め息も出るよね。
あ。立川。苦笑ついでにお代わりくれる?
ついでにこいつも裏に捨てて来ていいよ。
「お代わりはいいですけど、今日も泊まるんですか?」
「勿論。飲酒運転する趣味はないしね。あの子が泊めてくれる訳ないし」
あの子の父親も厳しく躾たなぁ。
厳し過ぎて方向おかしいけど。
方向音痴は遺伝したっけ?
異性不順交遊を厳しく育てられたからなぁ。
しかも、兄の同性愛はダメだけど、あの子は男に取られるくらいなら同性愛容認っておかしくないかい?
嫁に出したくないとかいう気持ちもわかるけどさぁ。
家を出られて疎遠状態なら一緒じゃない?
あ。男がいなきゃいいの。面倒だなぁ。
まぁ、あの子はそんな言い付け気にしてないだろうけれど。
根が真面目な上に環境が悪かったしねぇ。
ウチで男女別で育ったのもあるかな。
しかも高校から就職先まで女だらけの所だっけ?
ちょうど良い距離に良い男が居なかったんだろうなぁ。
俺達が傍にいたし。
ナンパだの合コンには縁がないタイプだろうし。
「いいですけどね。借りも沢山ありますし。でも、疲れてるならちゃんと寝た方が良いですよ?」
「自分の家の方が寝れる状態じゃないんだよ」
滅多に帰らないしね。
研究所に住んでるようなものだから。
研究所じゃ夜中だろうが呼び出しくるし。
「兄さん!!どういう意味ですか?!」
「・・・お前、気持ち悪い」
うん。本当に。
いい歳した男の涙目上目遣いとか気持ち悪い以外に何て言えばいいんだい?
あの子の母親と下手したら同類なんじゃないの?
うーん。失敗したかな。
これでもマシになった方なんだけれど。
一層の事、本当に名前変えておいで。
「葛西。任せた」
「嫌ですよ。面倒臭い」
「身の程に気付かせてやるのも友人の役目だろう?」
「俺はただの後輩なので。兄の役目じゃないですか?」
「コレと兄弟と言うのもねぇ」
「理乃に振られたデカイ理由かもしれませんね」
あ。あり得そう。
愚弟と親戚とか最悪だよね。
「そっちなら任されますけど?」
「言う前に警戒された人間が生意気言うものじゃないよ」
まったく。
遺産相続で泥沼人間関係を体験したせいか、恋人は本。という人間嫌いは何処へ行ったのやら。
「先輩が下手なタイミングで変な事言うからじゃないですか」
あれ?それって俺のせいなの?
あぁ。あのタイミングであの子のセンサーに引っ掛かったのか。
あの子の前で下手な事を考えるからだよ。
読まれるに決まってるじゃない。
「兄さん!!葛西!!!」
あー五月蝿い。
本当に五月蝿い。
あの子が嫌がる筈だよねぇ。
俺も嫌。
「だから、さ。簡単に分かるでしょ?」
「何がですか?!」
「あの子の中での扱い?」
「扱い?何か目印でもあるんですか?」
・・・お前、看板下げたら?
「あの子の呼び方で直ぐに分かるよ」
「呼び方?呼び方???」
本当に世話の焼ける弟だね。
「あの子は俺をなんて呼んでる?」
「名前ですね」
うん。そう。滅多に呼んでくれないけれどね。
大人数いる時でもないと名前を呼ぶ必要もないし。
「葛西は?結菜君は?」
「名前ですね」
ここまで来たら分からないかい?
「真知子君は?」
「名前の一部の愛称ですね」
「お前は?」
「・・・・・・呼ばれてない!?」
そっ。簡単だろう?
愚弟の事は狸だのジジイだのおっさんだの。
絶対に名前で呼ばないからね。
俺と苗字が一緒なのもあるけれど。
むしろ普通なら兄弟二人と知り合いなら、二人とも名前で呼ばれるだろうに。
あーあ。真っ白になっちゃったよ。
そんなにショックかい?
まぁ、俺ならそんな轍は踏まないから気持ちは分からないけれど。
「本当に何処かに捨てられないかなぁ」
「ですね」
しみじみと心の底から共感した二人だった。




