~お披露目 2~
個性溢れる武田先生のお兄さんが仕切りながら、自己紹介が進む。
自分は何度名乗るのか、と心配したが、最初に名乗ったのをみなさん聞いていてくれていたのか杞憂に終わった。
良かった…。
演説みたいに名乗り、よろしくお願いします。を連呼したくはない。
「ホラ、葛西。あとは君だけだよ」
無言で近付いてくる男性。
ん?
「(ちょっと理乃)」
「ん?」
「(あの人、理乃のお兄さん?)」
「は?違うが」
「(似てるよ?他人とは思えないほど似てるよ?!)」
「そうか?色彩だけだろ」
確かに。雰囲気や色彩だけで、顔立ちは似ていない。
「(もしかして恋人とか?)」
恋人や夫婦は似ると言うし。
理乃から浮いた話は聞いた事がない。
噂だけなら溢れ返って洪水していたが。
「なんでそうなる」
はい。すみません。
そんな嫌そうな顔をしないでください。
だから助けて。
あの人、絶対会話続かない!
「葛西正吾。よろしく」
「よ、よろしくお願いします…」
やっぱりー!!!
「君、年頃の女性に対してそれだけかい?失礼だろう。だから顔は良いのにモテないんだよ?」
確かに美形ですが!!
お二人並んだら目の保養ですが!!
この方も年齢不詳ですよね!
美形は歳を取らないんですか?!
でも目の前でそういう応酬されると困るので辞めて頂けませんか?!
会話が続かないとか文句言ってすみません。
続かなくて良いです。
「・・・先輩に言われたくないんですが」
武田先生のお兄さんも顔は良いですもんね。
モテないんですか。
モテそうですけど。
遊ばれても良い!ってタイプが近寄りそうですけど。
「俺は独身主義だもの」
理乃にプロポーズした事がある人間が本人を目の前に良く言えるものだ。
最も、本人曰く「独身主義を撤回しても良いと思ったのが理乃だけ」と言う事らしいが。
真知子はそんな事は知らない。
他のメンバーは全員知っているし、その場にいたが突っ込まない。
面倒だから。
「俺もそうですけど」
この場での既婚者は武田夫妻のみ。
これだけの妙齢の人間が集まっている割に既婚率が低い。
いくら晩婚化と騒がれていても、これだけの比率は如何なものか。
「くだらん戯言遊びは他でやれ。マチが固まってる」
うん。ありがと。
思わず現実逃避してました。
美形が目の前に二人も揃うと、現実逃避ってし易いんだね。
初めて知ったよ。
とりあえず、ここにいるメンバーの中で一番上が武田先生のお兄さんっぽい。
個性の強さも含めて。
それに対応出来るのが理乃だけ、と。
理乃はどれだけ個性の強い人達に囲まれてるの?
類友なの?
それとも朱に交わったの?
理乃に追い払われ、同性三人という落ち着く最初のメンバーに戻った。
どうやら各々楽しむらしい。
集まった意味があるのかと思ったが、たまに席を変えたり、料理を取りがてら会話をしている。
「はぁ~。みなさん、何か強烈ですね」
「そうか?」
「理乃の感覚がおかしいの。結菜さんもそう思いません?」
「まぁ仕事柄…というか、性格の上に仕事柄?あら?どちらが先かしら?」
「性格あっての結果だろ。アレは」
理乃、絶対人の事言えないよね?!
「付き合いが長いんですか?」
かなり気心知れた雰囲気。
先輩とは言ってたけれど、遠慮はない感じだし。
「そうね~。私はそこまで長くないけど、大学の先輩後輩みたいだし、二十年以上かしらね?理乃ちゃんとも何人かそれくらいでしょう?」
そんなに?!
私とも長いけど、それ以上?!
「ん。正吾が一番長いな。その次は昌信か。保育園辺りからだから、まぁそれくらいにはなるな」
ほ、保育園って…。
一体どれだけ小さい頃から歳上に囲まれてるの?
というか、どうやって知り合うの?
「他は私と同じくらい?」
「だな」
「それって、いつ頃なの?」
「えーと…私が結婚して直ぐくらいだから…」
「はて?俺が小学生辺りか?」
「そんなだったかしらね。嫌ねぇ。歳を取る訳だわぁ~」
いえ。全然見えません。
結菜さんも童顔でいらっしゃいましたか…!
歳の離れた夫婦だと思ってました!!
というか、長っ!!
小学生の頃から、この濃い人達に囲まれていたの!?
そりゃ、中学で浮く訳だわ。
完全に違う世界の人達だもん。
「そういえば、何をしてるのかわからない方が数名」
立川さんは喫茶店の店長でしょ。
武田先生は病院の院長でしょ。
結菜さんは専業主婦。
あ。院長夫人。
こう言うとなんか敷居が高い。
「葛西君は幾つかのビルのオーナー兼古本屋の店長さんよ」
オーナー!しかも兼業で店長!?
それであの顔。
何故モテないのか。
絶対モテるよね、それ。
お買い得物件すぎるよね?!
世間の女性が放っておかないよね?!
「このビルも葛西君のだし」
何ですと?!
理乃の言ってた知人とはあの方でしたか。
ただの知り合いかと思ってたけど、付き合いの長い友人でしたか。
そりゃ、格安になる訳だわ…。
「えーと、じゃぁ、あのお兄さんは…?」
一番職業が謎な人だ。
「話していいのかしら?」
「別に隠してないだろ」
話すのに抵抗があるようなご職業ですか?
「お義兄さんは、医療研究所の所長さんよ」
「研究所の所長?!」
何でそんな人と保育園の頃に知り合うの?
類は友を呼ぶの?
しかも、皆さん”長”が付く方ばかりなんですけど!?
しかも、医療研究所!!
かなり頭良さそうじゃないと入れないような場所ですよね?
そんな場所にあの歳で所長って…。
あ、うん。あの人がヒラとかの方が変かも。
うわぁ。皆さん、高収入の高学歴ですか。
しかも顔面偏差値高いですよね。
失礼ですけど、一番低い武田先生だけが既婚者というのも不思議ですね。
美形には近寄り難いのでしょうか。
いや、あの人達の場合は性格?
理乃も一応は事務所所長。
あれ?ただの従業員って肩書き、私だけ?
セレブの集まりなの?
上社会は狭いって言うけど、本当なの?
顔面偏差値と個性の強さは比例するっていうのも本当なの?
場違い感が半端ないんですが。
良かった…。結菜さんが親しみやすい人で。
「昌信も仕事持って来るからな。今後も会うと思うぞ」
「あ。そこからも入って来るんだ」
「元々はそっちがメインだ。おっさんが便乗しただけで」
「ごめんなさいね。あの人、構って欲しくてしょうがないみたい」
「悪いと思うなら止めてくれ」
うわぁ。二人の会話聞いてると、武田先生のイメージが変わるなぁ。
「私に免じて許してあげてくれる?」
おぉ!人妻の上目遣い!!
「結菜…お前、タチ悪くなってないか?」
「ふふふっ。だって、理乃ちゃんにはコレが一番効果あるんだもの。私にしか使えないし」
「まったく…」
確かに自分より歳上の男性に可愛くおねだりされても気持ち悪いだけだもんね…。
理乃、面食いだしね。歳上好みだろうしね。
知らないけど。何となくそんな気がするってだけだけど。
今日、確信した。
絶対に面食いで歳上好きだ!!
今ですらあの顔面偏差値。
若い頃はもっと高かったに違いない。
そんな人達と子供の頃から傍にいて、この年齢差で友人関係。
同世代じゃ話にならないと思う。
しかも全員、トップの地位。
私達の世代じゃ、精々が課長か部長。
皆さん、言うなれば社長みたいなものでしょ?
理乃の贅沢慣れに納得の行く友人関係だわ…。




