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#2-15.放火魔の末路

【前回までは】

恐怖の計画は阻止され、放火魔ファイアーティストは逮捕された。そして──



 ──翌日。


 パーシーが情報サロン『ロッホ・ネス』を訪ねると、得意満面のガラードと談笑するヴィヴィアンがいた。


「よう、パーシー! 読んでくれたかオレの記事? 飛ぶように売れているぜ!」


 と、自分の記事が載っている1面を見せた。そこには、


 ──薔薇の騎士と無貌の放火魔、船上の対決! その一部始終!


 と、大きな見出しが踊っていた。


「その場にいたかのような書きぶりだな」

「いたさ! 250メートルばかり離れていただけだ」


 パーシーの皮肉にガラードが胸を張る。それを見て、ヴィヴィアンはくすくすと笑った。


「お席にどうぞ」


 影のように控えていたモリーがティーセットを手に現れ、3人をボックス席へと案内した。


「それで、ファイアーティスト──バーナード・ブレイズは、あの大火と関係があったのですか?」


 席に着いてすぐヴィヴィアンが尋ねた。


「ブレイズは大火で大火傷を負ったが、火を点けてはいない。本人は〈目覚めた〉と言っていたが」

「なんだよ。無関係だったのかよ」

「大火の謎──犯人もその目的も謎のままと…いうわけですね」


 パーシーの報告に、ガラードとヴィヴィアンがつぶやいた。


「ブレイズには精神異常の傾向が認められるため、まずは刑事精神病院に送られるだろう。このブレイズにペトロポリタンが弁護士を付けた。さすがに放火されたチェスターではないが」

「ペトロポリタンが? なんで?」


 ガラードが驚きの声を上げる。


「改良型ジェミニの製法を聞き出すためでしょう」

「おそらくは」


 ヴィヴィアンの予想にパーシーはうなずいた。


「ブレイズは受け入れたのですか?」

「ええ」

「面白い裁判になりそうですわね」

「どういうことです?」


 意地の悪い笑みを浮かべたヴィヴィアンにガラードが尋ねた。


「ブレイズがペトロポリタンの弁護士を受け入れたのは、裁判でペトロポリタンを弾劾するつもりなのでしょう。この度のキャメロット炎上計画、その動機は、ペトロポリタンに自分の技術が奪われたことだ…と」

「公になれば、世間の非難はペトロポリタンだけでなく石炭メジャーにも飛び火するだろうな」

「あの野郎、まだ火を点けるつもりか」


 ヴィヴィアンに続いてパーシーが言い、ガラードが呆れた。


 話題が途切れ、3人はお茶を口にした。


「そうだ。レディ・ヴィヴィアン・ベンウィック」


 思い出したように、パーシーが居ずまいを正して言った。


「今回は捜査に協力いただき、ありがとうございます。感謝します」


 タブロイドでターゲットを決めていると思われた捜査で、ヴィヴィアンはロッホ・ネスのデータを効率よくまとめたのだ。


「いえ、どういたしまして」


 と、言ったところでヴィヴィアンは思った。


 これはチャンスではなくて?


 ヴィヴィアンの口に笑みが浮かんだ。


「感謝というなら、一つお願いがありますの。よろしいかしら?」

「はあ、オレにできることでしたら。レディ・ヴィヴィアン・ベンウィック」


 ヴィヴィアンは伯爵令嬢で、キャメロット屈指の富豪だ。

 そんな彼女がほしいものとはなんだ?


 パーシーは不安を感じた。


「それです。その堅苦しい言い方です」

「えっ?」

「私たちは共に事件を解決した仲間ではありませんか。ガラードさんのように、くだけた言い方で呼んでください」

「は、はあ……」


 ハンカチで汗をぬぐい、あちこちに目を走らせるパーシー。


 何故にこの程度のことで狼狽えるのか。緊張するのか。


 モリーとガラードは呆れつつも、これこそが見ものだと見つめる。


「それでは……」

「どうぞ」


 緊張し、眼をさ迷わせるパーシー。

 それをわくわくしてパーシーを見つめるヴィヴィアン。ところが──


 パーシーが何気なく視線を落とした先、そこにガラードが記事を書いている『ラウンド』の新聞があった。

 その最終面に載った記事を見たパーシーは、目を見開いた。


「申し訳ない、失礼する!」


 そして血相を変えてロッホ・ネスを飛び出して行った。


「ちょっと! どういうことですの!?」


 憤慨して立ち上がるヴィヴィアン。


「「あ~あ」」


 モリーとガラードが同時にため息を漏らした。


 テーブルに残された新聞。

 そこには小さな記事の見出しがあった。


 ──聖杯教会連続盗難事件



(第2話 炎の記憶 おわり)



【次回予告】


屋根から屋根、塔から塔へと飛び移る驚異の怪盗現る!


その名はモスマン!


次々と教会から奪われる聖杯。

怪盗のねらいは富か? それとも人々の絶望か?


神をも恐れぬ怪盗に、我らの刑事パーシーが挑む。

宙を舞う怪盗を薔薇の騎士のランサーが追う。


地上に、空に、繰り広げられる大追跡劇。

果たしてその結末やいかに?


次回、『スチームキャメロット第3話 聖杯をねらう者』にご期待下さい。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

次の3話は、生身のアクションあり派手なメカバトルありの内容となっております。

引き続きお付き合いいだけると嬉しいです。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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