#2-0.無貌の放火魔
第2話(章)スタート!
今回2話(章)も1話完結スタイル。文字数は4万7千ほどです。
よろしくお付き合いのほどを。
「まったく、ツイてないぜ」
「ボヤくなよ。手当てが出るだろ」
深夜の通りを、二人の消防士が歩いていた。
街の見廻りである。
このところキャメロット市内では不審な火事が続いていた。
キャメロット消防署は、非番の消防士も動員して夜の見廻りを強化することとなった。この二人も本来は非番だったのである。
今夜は霧が深い。
深い霧にガス灯の灯りがぼんやりと浮かぶ通りを、二人の消防士は進む。
「知っているか? 放火犯の噂を」
「15年前の大火で死んだ者の霊が、火をつけて回っているっていうアレか?」
「仲間が欲しくて、霊が火をつけているんだと」
「バカらしい。じき20世紀だっていうのに幽霊なんかいるわけ──」
鼻で笑った消防士の言葉が、途中で途切れた。
夜霧を通して、異様な光が見えたのだ。
ぼんやりとした青紫色をした炎。
何十という火事で消火活動をした消防士たちだが、こんな炎は見たことがない。
しかもその炎は空中をふわふわと移動しているではないか。
「鬼火?」
「まさか…!」
二人の消防士の頭に、さっきの噂話がよぎった。
──大火の犠牲者、その霊が、仲間を求めて放火している。
そこに、ホムズ河からの風が吹きつけ、夜霧の帳が払われた。
消防たちは立ちすくんだ。
青紫色の炎は中に浮いていたわけではない。
フードの人物が手の平に炎を載せて歩いていたのだ。
こいつは何者だ? 人間か?
フード付きのローブを着たその姿は、邪悪な魔法使いのようであった。
ゆらめく炎を手の平に載せて、悠然と歩くフードの男。
その足取りは軽く、弾むように石畳の通りを歩いている。
「放火犯か!?」
「おい、お前! そこで何をしている!」
消防士たちが気力を振り絞って叫んだ。
その声にフードの人物が振り返った。
消防士たちは息を呑んだ。
──銀色ののっぺらぼう。
そいつの顔には目も鼻も口もなかった。その上、肌は銀色だった。つるりとした顔がガス灯の光ににぶい銀の輝きを放っている。
異様、なんてものではない。消防士たちは恐怖に立ちすくんだ。
「シャシャシャっ!」
のっぺらぼうが奇怪な笑い声を上げた。
大仰な仕草で手を振り、手にした炎を後ろにあった建物に投げつけた。
爆発的な炎が生じた。
消防士たちは我が目を疑った。
壁に貼り付くように燃え上がった炎、それは文字の形をしていたのだ。
──Guilty
有罪、と。
「シャシャシャシャぁっ! オレは炎の芸術家! 罪深きものを炎によって浄化する! 15年前のように!」
両手を上げ、銀ののっぺらぼう──ファイアーティストは宣言した。
奇っ怪な放火魔ファイアーティスト登場!
彼との戦いを通してメインキャラ、特にヴィヴィアンを掘り下げてゆく内容となっております。
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