ミ☆ 手負いの少年 ☆ミ
血が、流れていた。
狭いビルとビルの隙間。その薄闇に無造作に置かれた幾つもの青いポリバケツ。林立するそれらの合間から、ゆっくりと地を舐めるように紅の血溜まりが広がりつつあった。地上をぼんやりと照らす月明かりがビル同士の僅かな隙間から差し込み、その光を反射して血溜まりが鈍く光っている。
よく見れば、ポリバケツの陰に隠れるように詰め襟の学生服を着た少年がうずくまっていた。どうやら彼は手負いの様子。足に刃物で切りつけられたような傷が見えた。血を止めようとしているのだろうか、傷口に近い場所を片手で強く抑えながら、もう片手で口元を抑えて極度の緊張と脳天を突くような痛みに乱れる息をひそめている。
(落ち着け落ち着けオレ、息を荒らげるな……!)
どうやら少年は自分に一太刀を浴びせた『何者か』から身を隠しているようだった。
しかし、辺りにはつんとする鉄臭いような血の臭いが充満している。片手で口元を抑えてはいたが、それでも呼吸を完全にコントロールするのは難しく、ふうふうという荒い呼吸音が漏れていた。
これではその『何者か』に見つかるのも時間の問題だろう。
(なんとか、しなくては――!)
だがその瞬間、少年は世界が回るような感覚を覚える。多量に血を失ったことで一時的に意識が朦朧としているのだろう。
(意識を失ってはダメだ! ダメ――なん……)
だが少年の意識は落ちていくように急激に薄れていく。自分で身体を支えることができずに、少年は寄り添っていたポリバケツを倒してしまった。
多分、大きな音がしたと思う。だがその音すら認識できずに、少年は自分の作った血だまりに倒れ込み、完全に意識を失った。




