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異世界不動産 ~事故物件専門の不動産屋で働くことになりました~  作者:


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第21話 異世界不動産営業再開

初めて小説を書くので至らない点多いと思いますが頑張ります。毎日更新を目指してゆるゆるとやります。

「帰ってきたぞ……」


王都の大通りを歩きながら、悠人はぽつりと呟いた。


地下都市から生還した達成感。


無事に地上へ戻れた安心感。


そういうものは確かにあった。


だが今は別の感情の方が大きい。


嫌な予感だ。


しかもかなり強いやつ。


「顔が死んでる」


隣を歩くノアが言う。


「原因分かってるだろ」


「百三十七件」


「百三十七件」


二人で同じ言葉を繰り返す。


レオンが吹き出した。


「まだ気にしてるのか」


「お前は気にしないのか」


「俺の店じゃないし」


それはそうだった。


だから腹が立つ。


王都へ入った途端、人通りは一気に増えた。


商人。


冒険者。


職人。


市場からは威勢のいい声が聞こえる。


平和な光景だった。


地下都市で世界の秘密に触れてきたとは思えないほど。


ガルが前方を見ながら言う。


「まずは店を確認する」


「賛成」


ミリアも頷く。


「書類関係が山積みになってる気がします」


「やめて」


現実を突き付けないでほしい。


一行は異世界不動産へ向かう。


見慣れた通りへ入る。


そして。


全員が足を止めた。


「……何だこれ」


レオンが呟く。


悠人も同意だった。


店の前に人だかりができていた。


十人や二十人ではない。


ざっと見ても五十人以上。


いや。


もっといる。


店の前から道路まで長い列が伸びている。


「おい」


ガルが振り返る。


「新人」


「俺も知らん」


本当に知らない。


何が起きているんだ。


列の最後尾には看板まで立っている。


【異世界不動産 受付待機列】


意味が分からなかった。


「営業してるのか?」


レオンが首を傾げる。


閉店中のはずだ。


店主は地下都市にいた。


ノアもいた。


誰も営業していない。


そのはずだった。


その時。


店の扉が勢いよく開く。


そして一人の少女が飛び出してきた。


茶色の髪。


十五歳くらい。


見覚えがある。


「あ」


悠人は思い出した。


店の雑用を頼んでいた孤児院出身の少女だ。


名前はリリ。


受付の手伝いなどをしてもらっていた。


そのリリがこちらを見る。


数秒固まる。


そして。


「店長ーーー!!」


王都中に響きそうな大声だった。


次の瞬間。


列に並んでいた全員が振り返る。


沈黙。


そして。


「いたぞ!」


誰かが叫んだ。


「店主だ!」


「帰ってきた!」


「捕まえろ!」


最後のは違う気がする。


だが遅かった。


人の波が押し寄せてくる。


悠人は本能で理解した。


これは怪物より危険だ。


「逃げるぞ」


「無理です」


ミリアが即答する。


「囲まれてます」


本当に囲まれていた。


完全包囲だった。


ガルですら苦笑している。


レオンは腹を抱えて笑っていた。


全く助ける気がない。


リリだけが泣きそうな顔で駆け寄ってくる。


「店長!」


「どうしたんだこれ!」


「私も分かりません!」


分かっていなかった。


だろうと思った。


「ただ!」


リリは息を整える。


「お客さんが増えました!」


「見れば分かる!」


増えすぎだ。


どう見ても異常だ。


その時。


列の最前列にいた男が前へ出る。


高級そうな服装。


商人らしい。


彼は悠人を見るなり頭を下げた。


「待っておりました」


「え?」


「物件を紹介してください」


それを皮切りに周囲が騒ぎ出す。


「俺もだ!」


「先に契約の話を!」


「店舗物件を探してる!」


「倉庫が欲しい!」


「屋敷を買いたい!」


収拾がつかない。


完全に。


地下都市の怪物より手強かった。


悠人は空を見上げる。


青空だった。


本当に平和な一日だ。


そう思いたかった。


「全員落ち着いてください!」


リリが必死に叫ぶ。


だが誰も落ち着かない。


四十三日も店主が行方不明だったのだ。


むしろ今までよく待っていた方だろう。


「順番!」


「順番にお願いします!」


「押さないでください!」


完全に修羅場だった。


悠人は頭を抱える。


地下都市で命懸けの戦いをしていた方が楽だったかもしれない。


「店長!」


リリが駆け寄ってくる。


「とりあえず中へ!」


「中に入れるのか?」


「今ならまだ!」


その言葉を信じて店へ飛び込む。


ガルたちも続いた。


扉が閉まる。


その瞬間。


店内が静まり返った。


全員が深く息を吐く。


「生きてる……」


レオンが椅子へ倒れ込む。


「お前何もしてないだろ」


「精神的に疲れた」


それは少し分かる。


店内は予想以上に綺麗だった。


机も棚も無事。


書類も整理されている。


思っていたほど悲惨ではない。


「リリ」


悠人が振り返る。


「これ全部お前が?」


少女は胸を張った。


「はい!」


だが次の瞬間。


笑顔が消える。


「途中までは」


嫌な予感がした。


ものすごく。


「途中から?」


「途中からは別の人です」


店内が静まる。


「誰?」


リリは少し迷う。


そして。


「知らない人です」


全員が固まった。


「待て」


ガルが口を開く。


「知らない人?」


「はい」


「それが店を管理していた?」


「はい」


「何で?」


「分かりません」


話が見えない。


ノアまで眉をひそめている。


「どんな人だった?」


ミリアが聞く。


リリは記憶を辿るように答えた。


「女の人です」


「若い?」


「たぶん」


「名前は?」


「教えてくれませんでした」


ますます怪しい。


だがリリは続ける。


「でも店長が帰ってきたら渡してほしいって」


そう言って一枚の封筒を取り出した。


真っ白な封筒だった。


宛名は一つだけ。


『悠人へ』


悠人は封筒を受け取る。


軽い。


中には紙が一枚だけ入っていた。


開く。


そして全員が覗き込む。


手紙には短くこう書かれていた。


『やっと見つけた』


その一文だけだった。


店内が沈黙する。


「怖いな」


レオンが真顔で言う。


「怖いですね」


ミリアも同意した。


ノアは手紙を見つめている。


何か考えているようだった。


その時。


店の外が騒がしくなる。


窓の向こうで誰かが叫んでいた。


「来たぞ!」


「来た!」


「本当に来た!」


また客かと思った。


だが違った。


様子がおかしい。


歓声に近い。


リリが窓を覗く。


そして。


「え?」


固まった。


「どうした」


悠人も窓へ近付く。


外を見る。


そこで言葉を失った。


店の前に一台の馬車が停まっていた。


普通の馬車ではない。


白銀の装飾。


王家の紋章。


王城直属の車両だった。


周囲の人々がざわついている。


そして馬車の扉が開く。


中から現れたのは。


銀色の髪を持つ少女だった。


年齢は十六、七歳ほど。


透き通るような白い肌。


青い瞳。


手には古びた地図。


その視線が真っ直ぐ店へ向く。


悠人と目が合う。


少女は一瞬だけ表情を緩めた。


まるで長い旅が終わったように。


そして。


店の扉へ向かって歩き出す。


「……誰だ?」


悠人が呟く。


ノアの目が細くなる。


ガルも警戒している。


少女は迷うことなく入口まで来た。


扉を開く。


静かな足取りで店内へ入る。


そして。


悠人を見て言った。


「ようやく会えた」


その声には確かな安堵があった。


「ずっと探してたんだから」


誰もその意味を理解できない。


ただ一人。


少女だけが確信していた。


自分は間違いなく目的の人物に辿り着いたのだと。

ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。


よろしくお願いいたします。

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