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異世界不動産 ~事故物件専門の不動産屋で働くことになりました~  作者:


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第19話 地上帰還

初めて小説を書くので至らない点多いと思いますが頑張ります。毎日更新を目指してゆるゆるとやります。

眩しい。


最初に感じたのはそれだった。


悠人は反射的に目を閉じる。


長い間地下にいたせいだろう。


瞼の上からでも分かるほど光が強い。


風が吹く。


土の匂いがする。


草の匂いも混じっていた。


地下都市には存在しなかったものだ。


「うわっ!」


レオンの声が聞こえた。


次の瞬間、何かが転がる音が続く。


ドサッ。


ドサドサッ。


誰かが地面へ倒れたらしい。


悠人も足元が不安定になり、その場へ膝をついた。


転移酔いだ。


頭がぐらぐらする。


「気持ち悪い……」


「同感です……」


近くでミリアがしゃがみ込んでいた。


普段は冷静な彼女も顔色が悪い。


転移装置が半壊状態だったのだから当然かもしれない。


しばらくしてようやく視界が落ち着く。


ゆっくりと目を開いた。


そして固まる。


青空だった。


どこまでも続く青。


白い雲。


太陽。


久しぶりに見る景色だった。


「地上だ……」


誰かが呟く。


それが誰だったのか分からない。


全員同じ気持ちだったからだ。


地下都市へ入ってからどれくらい経っただろう。


数日しか経っていないはずなのに、何ヶ月も閉じ込められていた気分だった。


ガルが立ち上がる。


周囲を警戒する癖は変わらない。


「ここはどこだ」


辺りを見回す。


そこは森だった。


背の高い木々が並び、草原が広がっている。


遠くには山脈も見える。


少なくとも地下都市の入口付近ではない。


レオンも周囲を見回す。


「知らんな」


「役に立たないな」


「俺も今それを言おうと思った」


相変わらずだった。


少しだけ安心する。


地下都市で色々ありすぎたせいか、こういうやり取りが妙に懐かしい。


ノアは空を見上げていた。


どこか不思議そうな顔をしている。


「どうした」


悠人が聞く。


ノアはゆっくり瞬きをした。


「久しぶり」


「空が?」


「うん」


その返事に少しだけ胸が痛む。


彼女は長い間封印されていた。


地下や遺跡の中で過ごした時間の方が長いのかもしれない。


その時だった。


アリシアが突然立ち上がる。


「静かに」


全員の表情が変わる。


次の瞬間。


森の奥から音が聞こえた。


ガサガサ。


何かが近付いてくる。


しかも一つではない。


複数。


かなりの数だ。


ガルが剣へ手を掛ける。


レオンも腰を落とした。


ミリアが魔法陣を展開する。


地下都市を脱出した直後に戦闘など冗談ではない。


だが状況は選べない。


音はどんどん近付いてくる。


そして。


森の奥から飛び出してきたのは――


人だった。


十人ほど。


革鎧を着た男たち。


武器を持っている。


冒険者だろうか。


いや違う。


統一された装備。


訓練された動き。


どちらかと言えば兵士だった。


彼らは悠人たちを発見すると一斉に立ち止まる。


そして。


全員が目を見開いた。


「いたぞ!」


隊長らしき男が叫ぶ。


「発見した!」


その声に周囲の兵士たちが歓声を上げる。


状況が分からない。


敵意は感じない。


むしろ安心しているように見える。


隊長の男が駆け寄ってきた。


息を切らしながら。


そして。


「ご無事でしたか!」


深々と頭を下げた。


今度は悠人たちが固まる番だった。


「……誰?」


レオンが率直な疑問を口にする。


全員同じ気持ちだった。


隊長の男は目を丸くする。


そして。


「捜索隊です!」


当たり前のように答えた。


「王都から派遣された!」


嫌な予感がした。


悠人は恐る恐る尋ねる。


「ちなみに」


「はい!」


「俺たちが行方不明になってから何日経った?」


隊長は不思議そうな顔をする。


そして。


「四十三日です」


その場に沈黙が落ちた。


風だけが吹き抜ける。


誰も動かない。


誰も喋らない。


四十三日。


悠人は頭の中でその数字を繰り返した。


四十三日。


地下都市へ入ってからの体感はせいぜい一週間程度だった。


それが。


四十三日。


「……は?」


レオンが呟いた。


全員を代表するように。

「四十三日?」


最初に聞き返したのはガルだった。


声が低い。


だが動揺は隠せていない。


「はい」


隊長は真面目な顔で頷く。


「地下都市へ向かわれてから四十三日です」


誰も言葉を発しなかった。


悠人は頭の中で必死に計算する。


無理だった。


どう考えても合わない。


地下都市での体感は長くても十日程度だ。


それが四十三日。


一ヶ月以上経っている。


「おい」


レオンが悠人へ顔を向ける。


「俺たち記憶飛んでるか?」


「飛んでたらむしろ安心する」


悠人は本気でそう思った。


だがノアは違った。


何かに気付いたような顔をしている。


「時間流」


ぽつりと呟く。


「何だそれ」


ミリアが聞く。


「地下都市と地上で時間の流れが違った可能性」


その言葉に全員が黙った。


あり得なくはない。


むしろ今までの出来事を考えると、その方が自然だった。


三千年前の文明。


封印。


奈落。


常識で説明できることの方が少ない。


「本当にあるんですか?」


隊長が困惑している。


当然だ。


いきなり時間の流れの話をされても理解できない。


ノアは肩をすくめた。


「昔はあった」


「昔?」


「かなり昔」


誰も深く聞かなかった。


聞いてもろくな答えが返ってこない気がしたからだ。


隊長は咳払いをする。


「と、とにかく」


話を戻したかったらしい。


気持ちは分かる。


「皆様の生存が確認できて本当に良かった」


その表情は心底安心していた。


「王都では死亡説まで流れていましたので」


「死亡説」


悠人は思わず復唱した。


「はい」


隊長が頷く。


「捜索隊も三度派遣されました」


「三度も?」


「全て失敗しています」


地下都市の入口すら見つからなかったのだろう。


実際、あの場所は普通ではなかった。


発見できた方がおかしい。


その時だった。


隊長の後ろにいた兵士の一人が悠人を見て固まる。


正確には胸元を見ていた。


「隊長」


「何だ」


「これ」


兵士が震える指で指差す。


悠人の胸。


そこには薄く光る紋様が残っていた。


完全には消えていない。


地下都市を出た今でも。


隊長の顔色が変わる。


「馬鹿な」


周囲の兵士たちもざわつき始めた。


「本当に」


「あり得ない」


「記録と同じだ」


嫌な予感しかしない。


悠人は思わず後退した。


「何だよ」


隊長は我に返る。


慌てて頭を下げた。


「申し訳ありません!」


「いや、だから何なんだ」


隊長は少し迷う。


だが隠し切れないと思ったのか、小さく息を吐いた。


「王都で噂になっています」


「何の?」


「地下都市へ向かった者たちの中に」


そこで言葉を止める。


そして。


「古代の王がいると」


全員が固まった。


悠人は即座に否定する。


「違う」


「ですよね」


隊長も即答した。


そこは疑わないらしい。


少し安心した。


だが次の言葉で安心は吹き飛ぶ。


「ただ噂は広がっています」


隊長は疲れた顔で続ける。


「王都だけではありません」


「貴族も」


「商人も」


「冒険者も」


嫌な予感がどんどん膨らむ。


「何て噂だ」


ガルが聞いた。


隊長は答える。


「地下都市で眠っていた古代王が目覚めた」


レオンが空を見上げた。


ミリアが頭を抱えた。


アリシアは顔を覆っている。


ノアだけが少し面白そうだった。


「ちなみに」


悠人は恐る恐る聞く。


「その古代王ってどんなやつなんだ」


隊長は真顔で答えた。


「世界を救った英雄です」


全員が悠人を見る。


悠人も全員を見る。


そして。


「違うからな?」


誰よりも先に否定した。


しかし兵士たちの反応は微妙だった。


信じていないわけではない。


だが信じ切れてもいない。


地下都市から現れた。


胸には謎の紋様。


四十三日行方不明。


さらに古代文明の遺跡崩壊。


状況だけ見ると最悪だった。


「帰るか」


ガルが言う。


誰も反対しない。


もう十分だった。


遺跡も。


封印も。


奈落も。


しばらく見たくない。


王都へ帰って寝たい。


それが全員の本音だった。


だが。


悠人の胸の紋様が微かに光る。


一瞬だけ。


誰にも気付かれないほど小さく。


そして頭の奥に声が響いた。


『英雄か』


聞き覚えのある声だった。


悠人の顔が引きつる。


『それは面白い』


初代だった。


間違いなく。


悠人は空を見上げる。


青空しか見えない。


それなのに。


どこか遠くで誰かが笑っている気がした。

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