表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界不動産 ~事故物件専門の不動産屋で働くことになりました~  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/48

第14話 第六封印

初めて小説を書くので至らない点多いと思いますが頑張ります。毎日更新を目指してゆるゆるとやります。

ドクン――。


地下都市アーク全体が震えた。


今まで聞こえていた鼓動とは比べ物にならない。


大地そのものが脈打っているような衝撃だった。


崩壊した建物がさらに崩れる。


天井の岩盤に新たな亀裂が走る。


奈落の穴は広がり続けていた。


まるで地下都市そのものを飲み込もうとしているかのように。


「第六封印……」


ガルが低く呟く。


その表情は険しかった。


「そんな話は聞いたことがないぞ」


「私もです」


ミリアも首を振る。


レオンも同じだった。


三人ともこの世界でも最高峰の知識と実力を持つ存在だ。


そんな彼らですら知らない。


それだけで異常だった。


アリシアは震える手を握り締める。


「忘れてたんじゃない」


苦しそうに言う。


「消されたんだ」


その言葉に全員が黙る。


記録を消す。


歴史を隠す。


三千年前の文明なら不可能ではない。


問題は何を隠したのかだった。


「第六封印には何がいる」


ガルが尋ねる。


アリシアはすぐに答えられなかった。


記憶を探るように目を閉じる。


やがて小さく口を開いた。


「名前は知らない」


最悪の答えだった。


「でも……」


彼女の声が震える。


「封印した理由だけは覚えてる」


悠人は嫌な予感しかしなかった。


最近ずっとそうだ。


そして大体その予感は当たる。


「理由は?」


レオンが聞く。


アリシアはゆっくりと顔を上げた。


「殺せなかったから」


沈黙。


誰も言葉を発しない。


三千年前の文明。


封印の番人。


終焉の魔女。


そんな存在がいた時代ですら殺せなかった何か。


考えたくもなかった。


ドクン――。


再び鼓動が響く。


今度は奈落の巨人が反応した。


巨大な身体が震える。


黄金の瞳が奈落のさらに奥を見つめている。


まるで怯えているようだった。


その様子を見てノアの表情が変わる。


「嘘でしょ」


小さく呟く。


悠人は初めて見た。


終焉の魔女が本気で焦っている姿を。


「ノア」


ガルが呼ぶ。


「心当たりがあるのか」


しばらく沈黙が続く。


そしてノアは小さく頷いた。


「たぶん」


その声は重かった。


「聞いたことだけなら」


全員が耳を傾ける。


ノアは奈落を見下ろした。


どこまでも続く闇。


その最深部を見つめながら話し始める。


「昔ね」


静かな声だった。


「神を作ろうとした人たちがいた」


そこまでは知っている。


器の話だ。


奈落の巨人もその失敗作だった。


だがノアは首を振る。


「それより前」


その場の空気が変わる。


「神を作ろうとする前に、彼らは別のことをしていた」


悠人は嫌な予感しかしなかった。


本当に嫌な予感しかしない。


「何をしたんだ?」


ガルが聞く。


ノアは少しだけ躊躇した。


そして。


「神を呼ぼうとした」


静寂が落ちる。


誰も動かない。


風すら止まったようだった。


「呼ぶ?」


ミリアが呟く。


「作るんじゃなくて?」


「うん」


ノアは頷く。


「最初は呼ぼうとした」


奈落の奥で何かが動く。


黒い霧が吹き上がる。


地下都市が軋む。


まるで話を聞いているかのようだった。


「結果は失敗」


ノアは続ける。


「来たのは神じゃなかった」


その瞬間。


奈落の巨人が震えた。


恐怖しているようだった。


先ほどまで悠人へ執着していた存在が。


明らかに怯えている。


「おいおい」


レオンが苦笑する。


「今さら嫌な予感しかしないぞ」


「私も」


ミリアが即答した。


全員同じ気持ちだった。


ノアは小さく息を吐く。


「だから封印した」


「第六封印に?」


「たぶん」


ノアは言った。


「もし私の記憶が正しいなら」


そして。


初めて迷うような表情を見せる。


「絶対に起こしちゃいけないやつ」


その瞬間だった。


奈落の最深部から轟音が響く。


何かが砕ける音。


巨大な鎖が引きちぎられるような音。


地下都市全体が跳ね上がる。


悠人は咄嗟に地面へ手をついた。


立っていられない。


ガルでさえ足を踏ん張っている。


奈落の巨人が後退した。


封印の番人を超える怪物が。


明確に恐怖していた。


そして。


闇の奥から。


ゆっくりと何かが目を開く。


赤い瞳だった。


黄金ではない。


真紅の瞳。


それが闇の底で静かに輝く。


奈落の巨人が震える。


ノアの顔色が変わる。


アリシアは絶望したようにその場へ座り込んだ。


そして。


赤い瞳の主は、初めて口を開いた。


『うるさい』


その一言だけだった。


だが。


奈落の巨人の右腕が消し飛んだ。


何の前触れもなく。


何の攻撃も見えず。


ただ一言で。


地下都市に沈黙が落ちる。


『うるさい』


たった一言だった。


怒鳴ったわけでもない。


威圧したわけでもない。


まるで眠りを邪魔された人間が漏らす不機嫌な一言。


それだけだった。


だが。


奈落の巨人の右腕は消えていた。


吹き飛んだのではない。


切断されたのでもない。


最初から存在しなかったかのように消滅していた。


黒い霧となって散り、再生すら始まらない。


地下都市に沈黙が落ちる。


誰も理解できなかった。


何が起きたのか。


どうやって攻撃したのか。


何も見えなかった。


見えたのは結果だけ。


「……は?」


レオンが間の抜けた声を漏らす。


勇者らしくない反応だった。


だが誰も責められない。


悠人も同じ気持ちだった。


意味が分からない。


奈落の巨人は今まで誰の攻撃もまともに受け付けなかった。


その怪物の腕が、一瞬で消されたのだ。


ノアだけは違った。


彼女は赤い瞳を見つめたまま動かない。


表情は険しい。


だが恐怖だけではなかった。


何かを確信したような顔だった。


「やっぱり……」


小さく呟く。


「本当にいたんだ」


奈落の巨人が後退する。


巨大な身体が震えていた。


恐怖。


誰が見てもそう分かる。


悠人たちを追い詰めていた怪物が怯えている。


それほどの存在が奈落の底にいるということだった。


『嫌だ』


奈落の巨人が呟く。


初めて聞く感情だった。


執着でも狂気でもない。


純粋な恐怖。


『嫌だ』


黄金の瞳が揺れる。


『まだだ』


『まだ届いていない』


『器が必要だ』


その視線が再び悠人へ向けられる。


ぞっとした。


本能的に理解する。


この怪物は何があっても諦めない。


自分を手に入れるまで止まらない。


その時だった。


奈落の底からため息が聞こえた。


深く。


面倒そうなため息。


『やかましい』


赤い瞳が細められる。


次の瞬間。


奈落の巨人の胸が消えた。


轟音すらなかった。


ただ空間ごと削り取られたように。


巨大な穴が開く。


奈落の巨人が悲鳴を上げる。


初めてだった。


あの怪物が苦痛の声を漏らしたのは。


『あああああああああああっ!!』


地下都市が震える。


だが赤い瞳の主は興味なさそうだった。


『眠い』


一言。


本当にそれだけだった。


「……」


誰も何も言えない。


ガルも。


レオンも。


ミリアも。


アリシアも。


ただ呆然と奈落を見つめる。


悠人だけが違う意味で困っていた。


「なあ」


小声で聞く。


「これ本当に同じ世界の話?」


ガルが真顔で答えた。


「俺も聞きたい」


珍しく意見が一致した。


ノアは額を押さえる。


「最悪だ」


心底嫌そうだった。


「何が最悪なんだ?」


悠人が聞く。


ノアは奈落の底を指差した。


「起きた」


それだけだった。


しかし十分だった。


誰もが理解している。


第六封印は開いた。


そして中にいた存在も目を覚ました。


問題はその正体だ。


「結局何なんだ」


ガルが問う。


ノアは少しだけ迷った。


言うべきか悩んでいるようだった。


やがて諦めたように息を吐く。


「三千年前ですら伝説だった」


その言葉に全員が顔をしかめる。


嫌な予感しかしない。


「最初の災厄」


ノアは続けた。


「最初の失敗」


奈落の奥で赤い瞳が静かに輝く。


「そして」


そこで言葉を止める。


珍しく言い淀んでいた。


終焉の魔女が。


あのノアが。


「そして?」


レオンが促す。


ノアはゆっくりと答えた。


「世界で最初に生まれた魔王」


静寂。


誰も言葉を発しない。


ガルでさえ固まった。


数秒後。


魔王本人が口を開く。


「待て」


真顔だった。


「俺じゃないぞ?」


「知ってる」


ノアが即答する。


「君は六代目」


「六代目?」


悠人が聞き返す。


「初代がいる」


ノアは奈落の底を見る。


赤い瞳が静かにこちらを見ていた。


そして。


初代魔王は初めて笑った。


その瞬間。


悠人の胸の紋様が再び輝く。


赤い瞳が細められる。


まるで何かを見付けたように。


『なるほど』


静かな声が響く。


『面白い』


悠人の背筋を冷たいものが走る。


奈落の巨人とは違う。


執着も狂気も感じない。


だからこそ怖かった。


猛獣よりも。


嵐よりも。


ずっと。


『久しぶりだな』


赤い瞳は悠人を見ながら言った。


『原初の器』


その言葉と同時に。


悠人の頭の中で、封じられていた記憶の扉がゆっくりと開き始めた。

ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ