㉚ 再び超時空犬猫会議
「猫王子ミケーネ、報告を!」
議長が発言を促した。
今日の議長は虎王ティガーだ。
ここは、とある亜空間の会議場。
ミケーネが話し始めた。
「先日、惑星ガイアの地下世界への、侵略行為が有りました。」
とたんに議場がザワザワしはじめる。
「私が秘密裏に訪れた時には、何も無かったぞ。」
「私だってそうだ。」
「何だって、突然そんな事に?」
「何か隠し事でもあるのか?」
「皆、静粛に!」
議長が戒める。
「……ミケーネ、続けて。」
「ハイ、全くの突然の事態でして…攻めて来た者の名は、アポピス。内実は古代エジプトの、神々同士の争いでした。そして、現場の混乱を収めたのも、その神々の一人でした。」
「ソレは誰かな?」
「最初は、複製ニンゲンの成雪という者の姿でしたが……途中から正体を現しまして、本人は"セト神"と名乗っていました。」
「ソレは例の謎の生き物だな。」
「ハイ。」
セト神は惑星ガイアにおいて、"正体不明の生き物"だという事は、この議会でも共通認識だった。
「……それにどうやら、地下世界に関係する、古代エジプトの神々は、単なる爬虫類族ではなくて、四次元の住人たちの憑依も有るようなのです。」
またざわめく議場。
「静粛に!」
再び声を掛ける議長。
「獅子王レオン君。そう言えばキミの妻も、元エジプトの神では無かったかな?」
議長に指名された形になって、獅子王は立ち上がる。
(虎王め、余計な事を……。)
内心穏やかではない獅子王。
「実は我が妻セクメトは、バツイチでして……前の結婚生活中までは、そうだったらしいのですが、どういう訳か、その頃の記憶は無いそうなのです。」
彼女が酒乱で、呑んでいる時の記憶を失いやすいという事は伏せておこう。獅子王はそう思った。
「……やはり憑依されていたという事か。他にこの件に関連する情報を、持つ者は居ないか?」
「そうそう、黒猫嬢や犬王も、古代エジプトで、神々の一角を担っていた時期が有ったのではないかな?」
ふと、狼王ウルフィが呟いた。
「狼王、不規則発言だぞ……まあ、良いか。では犬王よ、何か言っておくべき事は無いか?」
議長に言われて、アヌビスが立ち上がる。
「実は……この際白状しますが、セト神は、私の叔父にあたる者らしいのです。ただ今までは、"彼に見つかってはならない"という、無くなった母の遺言が有りましたので……音信不通にしておりました。」
「それはまた……穏やかでは無いな?」
「はあ……ですから、大した情報は持ち合わせません。バステト嬢も、地下世界に関わったのは、つい最近の事なので……多分何もご存じ無いかと。」
(本当は、アポピスと闘えなくて、悔しがっていたけど、それは黙っておこう。)
犬王はそう思った。この場に居ない者を、欠席裁判のように吊るし上げるのは、彼の本意では無かった。




