㉘ いつものテレビ塔にて
「いやあ、今回は中々の強敵でしたね。」
アメリカンコーヒーを飲みながら、伯爵が言った。
「まさか、古代エジプトの神々が絡んでいるとはね?」
熱々のミルクティーをフーフーしながら、雪子が答える。
ここは事件から数日後の、名護屋テレビ塔の亜空間レストランである。
今日もたまたま、他のメンバーが来ていない。
サン・ジェルマンと真田雪子の、二人きりだ。
「前にシュメールの一件があったから、古代の神々は、てっきりみんな並行世界の、鳥族や爬虫類族、犬族、猫族のどれかだと思い込んでいたけど…。」
「……それらに、四次元の住人が介入している可能性も、出て来ましたね。」
「そして、四次元の住人たちも、決して一枚岩ではないのね。」
「セト神は、ある種の階級らしきモノを、仄めかしていましたからねえ。」
「多分、三次元世界で神を名乗る者は、四次元の世界でも、そこそこ偉いって事でしょうね。」
「……ああ、そう言えば、あのセト神の姿。今まで見たどの動物神とも、違う頭部でしたね?」
「そうね。尻尾もヘンな形だったし…アレは一体なんて言う動物なのかしら?」
「私もあれから色々調べてみましたが……結局"セトアニマル"としか、言いようが無いみたいですよ?」
「ええ〜、そんなあ。」
「誰も知らない、正体不明の架空の生物とか……地球外生命だったりして。」
「これ以上、世界観が広がったら、流石のアタシもついて行けないわ。」
「何を言ってるんですか。宇宙は広いんです。それに貴女は、"超時空の魔女"なんでしょ?」
「その二つ名、もうスッカリ返上したい気分よ。強いヤツが、まるで鳥山明先生の"ドラゴンボール"みたいに、どんどん増えて行くんだもの。」
「アハハ、確かに。それもそうですね。」
「……貴方だってアヤシイものだわ。」
「何が…ですか?」
「だって貴方、時々アタマが切れ過ぎる事があるもの。まるで"知恵の神トート"が乗り移ったみたいにね?」
「そりゃあ……買いかぶり過ぎと言うモノですよ。」
「本当に……そうかしら?」
そこで数秒間、二人は見つめ合う。
「……何てね。冗談よ、冗談!」
雪子は笑って見せる。
だが眼は笑っていなかった。
「……ですよねえ?」
伯爵も笑うが、緊張感は拭えない。
「でも一つだけ言える事は……。」
「……何ですか?」
「例え貴方が、何者であるにせよ……今までずっと、私の味方で居てくれたわ。」
「……。」
「だから私は、これからも貴方の事を信じるわ。私が自分の次に信じているのは…貴方よ。そこのところ、よろしくね?」
「……もちろんですとも!」
サン・ジェルマンは、力強く頷いたのだった。




