㉗ 私の成雪
「……ああそれと、ご心配無く。成雪君のカラダはお返ししますよ。」
セト神はそんな事を言いながら、気を失って転がっている、ジャンヌ・ダルクを起こした。
「ホントに大丈夫なのよね?」
心配そうに尋ねるカグヤ。
「大丈夫ですとも。以前、雪村君やサン・ジェルマン伯爵のカラダを乗っ取りに来たのは、四次元世界の住人の中でも、ずっと下っぱの連中なんですよ。」
「えっ?」
コレは雪子の反応だった。
「実のところ、あなた方が多少自由に動きまわっても、我々の四次元の世界から見て、大した影響はないのです。」
「……そうなんですね?」
コレは伯爵の声。
「アレは縄張り意識の強い、雑魚のやる事なんです。でも、同じ世界の住人として、謝罪しておきますよ。申し訳ない。」
「いやいや……そうですか。」
急にそんな風に言われても、中々信じられないものだ。
「爬虫類族だって、元を正せば、それ程好戦的でもない……きっと歴史のどこかで、我々四次元人の誰かが、憑依したり、影響を与えたりしているはずです。」
成雪の話を聞きながら、ふと雪子が周りに目を遣ると、頭足類の円盤群は、すっかり退散していた。彼等とて、好きで戦争を仕掛けて来た訳ではないのだろう。
親玉のアポピスが居なくなった今、頑張る理由も無いのだ。
「じゃあ私はコレで……ああ、そうだ。色々と迷惑をかけたお詫びに、私のチカラが必要な時は、この成雪君を通して、いつでも呼んでくれたらいい……キミたちの世界では、"召喚する"と言うのかな?」
セト神は最後にそう言うと、成雪の中から、フッと抜けてしまったようだった。
「あれっ?僕、今までナニをしてたんだろう?」
そこに残ったのは元の成雪だった。
「お帰り。私の成雪。」
カグヤが彼を抱き締めた。
こうして、地底世界への侵略行為は、一つの終結を迎えた。チーム・サン・ジェルマンも、警備担当から目出度く解任となり、皆で元の時空に帰る事になった。
「色々と世話になったな、伯爵。」
ウアジェト女王が言った。
「いえいえ。また困ったら何時でも呼んで下さい。すぐに駆けつけますよ。」
サン・ジェルマンが、それに答える。
「まだ少し、虫たちの動向が気になるが……当面はモンダイ無かろう。」
「彼等もきっとどこかで、我々がアポピスを退けるところを、見て居ますよ。」
「……だとイイがな。」
「じゃあまた。縁が有ったら逢いましょう。お元気で。地下世界の平和を祈ってますよ。」
「ありがとう。他のメンバーにも、よろしく伝えてくれたまえ。」
そして伯爵と愉快な仲間たちは、無事に元の世界に帰って行ったのである。




