㉖ 二人の仲
「さあ、アポピス。何時までもこんな三次元世界で、イタイケなニンゲンや頭足類を相手に、神様ゴッコなんかしてないで、早く我々の世界に帰ろう。迎えに来てやったぞ。」
セト神の成雪が、そんな事を言った。
「……私と勝負して勝ったらな。この地で千年も待っていたのだ。嫌でもヤッてもらうぞ!」
アポピスもそんな事を言う。
「またまた、そんな駄々をコネて……貴様はこれまで私に、一度として勝った事が無いではないか。」
「いいや、今日こそは勝ってみせるぞ!」
アポピスは初めて、余裕の無い表情を見せた。
そして彼の方から、セト神の成雪に飛びかかった。
アポピスからの、激しい剣撃の連続技。
ソレを全て、涼しい顔で受け流してしまうセト神。
その様子は、誰の眼にも、格の違いを感じさせるモノが有った。
直上からの攻撃は、両耳の先で白刃取り。
後ろから薙ぎ払うと、尻尾の先で剣を叩き落とす。
正面からの攻撃は、全て杖で受け流してしまう。
彼の防御には、全く死角が無かった。
やがてセト神は距離を詰めると、杖の先でアポピスの剣を引っ掛かけて、それをサッと奪い取ってしまった。
「くそっ!」
ムキになったアポピスは、セト神に素手で組み付いて行く。セト神も杖を投げ捨て、応戦する。
やはり、アポピスのどんな打撃も蹴りも、セト神に受け流されてしまう。何のダメージも与えられない……"暖簾に腕押し"とは、正にこの事である。
最終的に、二人の両手がガッチリと組まれた。レスラー同士が、チカラ比べをする、あの状態になったのだ。
「どうやら、ココまでのようですね?」
まだまだ余裕のセト神。
「捕まっちまったか、くそっ!」
対して、後が無くなった表情のアポピス。
その状態で、セト神の成雪が、眼を閉じて何やら念じているように見えた。
すると、アポピスの姿が、段々ドットの集合体のようになって行き……やがてそのドットが細かくなり…最後はすっかりチリのようになって、消えてしまったのだ。
それを見届けると、成雪はセト神の変身を解除して、元のニンゲンの姿に戻った。
「貴方、今ナニをしたの?」
雪子が皆を代表して、疑問を呈した。
「アポピスを、四次元世界に帰しました。しばらく帰って来られないように、念のため、三次元世界の物理的ボディは、消滅させておきましたよ。」
まるで何でも無い事のように、セト神の成雪は、そう答えたのである。




