㉓ チカラ対チカラ
京子は右手を前に突き出した。
とたんに、アポピスの剣を握った右腕が、見る見る凍りついて行く。コレには、流石の彼も少しばかり戸惑ったようだった。
「なる程。水分を含んだモノなら、どんな対象物も凍らせる事が出来るのか……しかし甘いな。」
彼は左腕で、自分の右腕を引きちぎると、地面に放り投げた。
右腕は粉々に砕け散り、落ちている残った剣を、左手に持つ。そして次の瞬間、右肩から、新しい右腕が一瞬で生えた。まるでトカゲの尻尾だ……いや、むしろピッコロ大魔王か?
「凍らせるのなら、最初の狙いは、頭か心臓にしないとな?」
彼はニヤリと笑いながら、そう言った。
「どうせそこには、何かしらの防壁か結界が、張ってあるのでしょう?」
京子が言った。
「ほう。よく分かったな?」
「私も時々、爬虫類族と手合わせするのよ。でも私が知る中で、貴方ほど紳士的な、アラハバキは居ないわ。」
「キサマが今まで、どんなアラハバキ一派に出会って来たのかは知らんが、私こそが、それらの祖である事は確かだ。子孫が姑息なマネをしたと言うなら、謝罪しよう。」
「……ああ、こんなの勝ち目無いわ。誰か交代して。」
京子は潔く諦めた。
「じゃあ、私が。」
雪子が前に出て、剣を青眼に構えた。
「ほう、コレまた変わり種のニンゲンだな……並行世界の自分の同位体から、チカラを集めて強化したのか。その上、不老不死ときている。」
「あなたには……ソレが見えるのね?」
「キサマのように、チカラをダダ漏れにしておれば、嫌でも気がつくわ。その点、先程の者は、上手く隠しておったな。だから不意打ちを食らってしまったが……。」
「そう。じゃあ遠慮無く行くわよ!」
雪子はそう言うと、剣を上段に振りかぶり、素早く振り下ろした。
それと同時に、火の玉がアポピスに向かって飛んで行く。
アポピスは、剣を自らの顔の前に立てると、その火の玉を正面から受けた。
火の玉は左右に切り裂かれ、彼は当然のように、ノーダメージだった。
「まあ、想定内よ。でも、コレは如何かしら?」
雪子は続けて、次の一手を繰り出す。
彼女は剣を投げ捨て、いつの間にか、真っ黒な雲に覆い尽くされた空に向かって、両手を突き上げる。
そして、その手を振り下ろした!
次の瞬間、何百、何千という数の稲妻が、立て続けにアポピスに向かって降り注いだ。
しかし、彼は無キズだった。
「……つまらんな。コレでは、そこらのレーザービーム兵器と、大差ないではないか。」
「……本当にそうかしら?今の直撃を受けて、あなたの電磁防壁は、もう使い物にならないはずよ。」
「何だと?まあ、それも良かろう。いいハンデだ。それに元々そんなモノは、私には必要ないからな。」
アポピスは、そうウソぶいた。




