㉒ 剣撃
「さあキサマらの中の、最強の戦士と闘ってやる。我こそはと思う者は、剣を抜け!」
アポピスが、声高らかに宣言する。
アラハバキにしては、ずいぶん正々堂々とした振る舞いだな。その様子を見た伯爵は、意外に思った。
「では、僭越ながら私が。」
そう言いながら、剣を抜き一歩前に出て来たのは、ジャンヌ・ダルクだった。
「何だ?つまらん。ただのニンゲンではないか……まあ良い。チカラを使わずに、剣術だけで相手をしてやろう。」
アポピスは、フワリと地上に降りて来た。
「では、参るぞ!」
そのセリフと同時に、彼は一気にジャンヌとの距離を詰めた。しかし、からくも一太刀目は除けられた。
「おお、中々良い動きをするではないか?嬉しいぞ。」
彼は心底嬉しそうだ。
ジャンヌも負けじと、突く、薙ぎ払う、叩き斬るの、連続ワザを繰り出す。
しかしその全てを、彼にギリギリで躱されてしまう。剣筋を完全に見切られているようだった。
「どうした、ニンゲン?そんなモノか?」
アポピスは余裕だ。
「そんな、初期動作も殺気もだだ漏れな剣。ワシには当たらぬぞ。」
彼の言う通りだった。
彼女がムキになればなる程、剣は大振りになり、彼には届かない。無理も無い事だ。例え彼女が、人類最強クラスの女剣士だとしても、人外のモノを相手にするのは、初めての経験なのだ。
何度目かの攻防の後、やがてアポピスは、ジャンヌの後ろに回り込むと、剣のツカの端で、彼女の首の後ろ辺りを、軽くトン!と叩いた。
ジャンヌは気を失って、その場に崩れ落ちた。
アポピスはソレを左腕で受け止め、そのまま静かに、地面に横たえた。弱い者は、峰打ちで仕留めるつもりらしい……まるで紳士の振る舞いだ。
「このように、殺気のこもらない攻撃は、例え後ろからでも、電磁防壁をすり抜けるのだよ。」
彼は残りのメンバーに語り掛ける。
「さあ、次は?誰かな……。」
「……では、私が。」
前に進み出たのは村田京子だった。
「また、ニンゲンか。うん?……キサマはタダのニンゲンではないな?」
「よく分かったわね。だから私、剣術はあまり嗜まないのよ。専らチカラで勝負するタイプなの。それでもよろしいかしら?」
「良かろう。だが私は、剣を使うぞ?」
「どうぞご自由に……。」
言うが早いか、京子は予備動作無しで、いきなり空から、100本近い氷の槍を降らせた。
しかしアポピスは、右手に握った剣をクルクルと振り回すだけで、全ての槍を弾き返した。
「……氷を操るのか?面白い手品だな。」
「あら、そう?じゃあ、コレならどうかしら。」




