㉑ 激戦前に
サン・ジェルマンが連れて来たメンバーは、真田雪子、村田京子、ジャンヌ・ダルクだった。女性ばかりだが、彼のチームの中では、今や誰もが戦闘に特化した少数精鋭だ。そしてそれぞれに、オリハルコンの剣を渡してある。
真田雪村は、敢えて呼ばなかった。戦闘にチカラを使うと、後でとてもイヤな気分になると言っていたし……それに、やり過ぎてしまう恐れが有ったからだ。
カグヤは、まだ色々と不安定な、成雪と一緒に待機させるべきだと思った。そしてその成雪にも、雪村と同じような危惧を感じたのも事実だ。
杉浦鷹志、真田由理子、真田香子、酒井弓子は、正直言って戦闘向きではないから、呼ばなかった。大規模な闘いにおいて、時には非情になる必要が有るからだ。彼等には、それを無理強いしたくない。伯爵はそう思った。
さて、今回の相手のアポピスの事である。サン・ジェルマンの、幅広い歴史の知識に照らせば、ソレは、あの太陽神ラーを脅かすと言われる、地下世界最強の戦士の名であるはずだ。
(確か、ソレに対抗しうる唯一の相手は……。)
伯爵が、そこまで考えた時である。
「何だ、つまらん。有象無象が集まっておるようだが、見渡したところ、ヤツが居ないではないか?」
アポピスがそんな事を呟いた。
「貴方が期待しているのは、セトの事ですか?それでしたら私も、残念ながらここ数百年逢っていませんね。」
ウアジェト女王が答える。
そうだ、そのセト神だ。
伯爵もようやく思い出した。
ソレは、ニンゲンの身体に、不思議な生き物の頭と尻尾を着けた、太陽神ラーの守護者にして、闇のアポピス神の好敵手だ。確かホルス神だけが、ソレに勝てるという……。彼がそこまで思い出した時、事態は動いた。
「まあ、良い。せめて暇つぶしになるくらいには、遊んでくれよ?総員、攻撃開始!」
アポピスが号令を出した。
敵の円盤群から一斉にレーザー光線が撃たれる。
しかし、味方の電磁防壁は万全だった。
やはり、この種の武器では、決着はつかない。
従って、好むと好まざるとに関わらず、物理的な実弾射撃か、剣を使っての闘いにならざるを得ない。
そしてどういう訳が、アラハバキたちは、実弾射撃を好まない。
まさか事ここに至って、エコな精神を発揮している、なんて事は無いだろうが…結局のところ、ヤツラは単純に、チャンバラが好きなんだろうな。そんな風に、サン・ジェルマンは思ったのだった。




